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夢見る蛇の都 その44

 「おぉーっ、レプカールよ、死んでしまうとは何事だー」


高い土台の上に建つラピータ宮殿を、その周囲に広がる堀の中にひしめく、麾下の兵士たちと共にぐるりと包囲する馬上のペルセウス王は、自分たちが足元から取り囲んでいる、宮殿を支える高い塔みたいな土台のてっぺん部分の石造りのスペースの上で、メデューサと向かい合っていた魔神兵の巨体が、まるで砂の城のように崩れ去り、飛散したのを目撃して思わず声を上げます。

彼は、シュナン少年の死後に、レプカールの手によってメデューサを捕らえさせ、それから、ゆっくりと自軍を動かして、眼前にそびえる、高い塔のような土台の上に建つ、ラピータ宮殿を制圧し、その宮殿内に眠る財宝を全て手に入れ、我が物とするつもりでした。

しかし、肝心のレプカール操る魔神兵が、メデューサによって倒されたからには、悠長なことは言っていられません。

ペルセウス王は自分と共に、ラピータ宮殿を支える高い土台の足元をぐるりと包囲する、周りにいる堀の中にひしめく麾下の兵士たちを鷹のような鋭い目で一べつすると、彼らに対して命令を下します。


幻影騎士団(ミラージュ・ナイト)出撃せよ。正面の高い塔のような土台についた階段を昇り、そのてっぺんに建っている、ラピータ宮殿の前にいるメデューサを確保するのだ。多少手荒な事をしてもかまわん」


ペルセウス王の、その言葉を受けて、ラピータ宮殿の周りに広がる堀の中にひしめいていた、兵士たちの列が二つに割れ、その間に出来た道を通って、一群の兵士たちが、軍の前面へと躍り出ます。

彼らは一見してすぐ判る、他の兵士たちとは違う、奇妙な特徴を備えていました。

それは全身を、銀のフルアーマーで覆った重騎士である彼らが、更に一人一人、大きな盾を持っている事でした。

その大きな盾は、全体が鏡張りになっており、その盾をかざした方向の対象物を、盾の面に映し出す事が出来るようになっていました。

これは、初代のペルセウス王が、メデューサの先祖の一人と一騎打ちした時に、魔眼を見ずに戦うために、鏡のように磨いた盾を使用した故事にならって、ペルセウス13世が組織した秘密部隊であり、対メデューサ用の切り札ともいえる精鋭たちでした。

彼らは、この日のために、鏡の盾を使い、メデューサの魔眼を直接見ずに戦う訓練を積み重ねており、自信満々の様子で隊列を組んで、ラピータ宮殿を支える高い土台についた長い階段のとば口に二列に居並ぶと、見上げるようなその長い階段を、歩調を合わせて昇り始めます。

その重騎士たちは、今までいた堀の底から、高い土台のてっぺんにそびえ立つラピータ宮殿の門前を目指し、その土台の側面についた縦方向に伸びる長い階段を、大きな鏡張りの盾を前方に構えながら、二列縦隊を組んで、足早に駆け上っていきます。

彼らの目指す、高い土台のてっぺんに建つ、ラピータ宮殿の門前に広がる石造りのスペースの上で、シュナン少年の横臥した石像に寄り添うように立ち、そこから眼下の堀の中にひしめくペルセウス軍の方を、怒りに満ちた目で見下ろす、ラーナ・メデューサ、その人を捕らえるためにー。

しかしー。

メデューサがいるラピータ宮殿の門前を目指し、その宮殿が建つ高い土台のてっぺんへと続く、土台の側面についた長い階段を、二列縦隊となって昇る件の騎士たちに、突然、異変が生じます。

なんと、二列縦隊となって長い階段を昇り、高い塔のような土台のてっぺんに建つ、ラピータ宮殿へ向かおうとしていた重騎士たちが、前面に掲げていた鏡張りの盾の全ての表面に、メデューサの顔が一瞬映ったかと思うと、次の瞬間には、彼らの持っていたその鏡張りの盾が、一枚残らず、音を立てて砕け散ったのです。

そればかりではありません。

手に持つ鏡の盾が一斉に砕け散り、驚きのあまり、宮殿を支える高い土台のてっぺんへと続く、長い階段の途中で立ち往生した、その騎士たちは、自分たちが目指している、上方から押し寄せる謎の圧力に押されて、身体のバランスを崩し、次々と階段から転げ落ちてしまいます。

一方、高い土台に支えられた、ラピータ宮殿の周囲に広がる、堀の中にひしめく包囲軍の他の兵士たちは、自軍の精鋭部隊である「幻影騎士団」が、メデューサを捕らえる為に出撃し、目の前にそびえる高い塔のような形状の土台についた、縦方向に伸びる長い階段の前に整列して並び、メデューサがいるはずの頂上部に向かって、二列縦隊で、その階段を昇り始めたのを見ると、最初は大きな歓声を上げました。

しかし、二列縦隊を組んで、堀の底から、ラピータ宮殿が建つてっぺん部分へとつながる、塔のような土台についている長い縦階段を昇る、その騎士たちが、階段を昇っている際中に、謎の圧力によって身体を押し戻され、次々と階段から転げ落ち、元々いた堀の中へと落下していく、その姿を目の当たりにすると、周りの兵士たちの放つ声は、歓声から一転して、悲鳴へと変わります。

彼ら全軍を指揮する、馬上のペルセウス王もまた、宮殿の周りに広がる堀の底から部下たちと共に、その塔のような土台の横腹についた階段を昇っていく、騎士団の姿を、期待を込めて見守っていました。

けれど、メデューサがそこにいるはずの、ラピータ宮殿が屹立する、土台のてっぺん部分へと向かう長い階段の途中で、彼の虎の子の騎士たちが謎の圧力を受け、次々とそこから転がり落ちる無様な光景を見て、思わず顔を歪めます。

彼が馬上から、ラピータ宮殿がその上に建つ、目の前にそびえ立つ高い土台の頂上をふと見上げると、そこには、ラピータ宮殿の門前で仰向けになったシュナン少年の石像と、その傍らに寄り添って立つメデューサの、豆粒みたいな大きさの影の様な姿が垣間見えます。

もちろん、ペルセウス王がいる堀の底からは、高い土台のてっぺん部分に建つ、ラピータ宮殿の前にいるメデューサが、蛇の髪の下で、どんな表情を浮かべているのかを、うかがい知る事は出来ません。

しかし、堀の底から高い土台のてっぺんを見上げるペルセウス王には、そのてっぺん部分に建つラピータ宮殿の側で、シュナン少年の横臥した石像と共に佇むメデューサが、何故かこちらを文字通り見下し、あざ笑っているように見えました。


(ううぬ、こしゃくな。小娘がー)


王としてのプライドを傷つけられたペルセウス王は、ついに全軍を投入して、たとえ多くの犠牲者が出たとしても、メデューサを捕らえる決意をします。

馬上で黄金の手甲に包まれた片腕を高々と上げ、自分の周りにいる堀の中にひしめく麾下の兵士たちに対して、全軍出動の命令を出すペルセウス王。

彼は腕を突き上げたまま早口で声を発すると、ラピータ宮殿を足元から支える高い土台についている、堀の底から宮殿が建つてっぺん部分へとつながる、長い縦階段の昇り口の方に兵士たちを向かわせます。


「全軍、突撃せよ。目の前にそびえる高い土台についた階段を全力で駆け上がって、てっぺんに建つラピータ宮殿を一気に制圧し、その前にいるメデューサを捕らえるのだ。数にものを言わせてな。魔眼の力で多少の犠牲が出るかも知れんが仕方がない。高い土台の上に建つラピータ宮殿に一番乗りした者には、爵位と領地を与えるぞ」


ペルセウス王に従う、ラピータ宮殿を取り囲む広く深い堀の中にひしめくペルセウス軍の兵士たちは、その堀の中央付近にそびえ立つ、宮殿本体を支える長い階段がついた高い塔みたいな土台の足元を、陣列を組みながら、ぐるりと包囲していました。

しかし、整然と陣列を組んでラピータ宮殿を支えるその高い土台を包囲していた大勢の兵士たちは、王の命を受けて、まるで雪崩を打ったように一斉に動き出します。

それは、身分の上下に関係なくメデューサを捕らえた者に、栄誉と領地を与えるという王のその言葉が、兵士たちの欲望をいたく刺激したからでした。

彼らはもはや陣形も秩序もなく、宮殿を支える塔のような土台の側面に設けられた、自分たちが今いる堀の底から宮殿が建っている頂上部へと続く、長い階段のとば口へと目を血走らせながら殺到して、我先にと、その縦方向に伸びた長い階段を昇り始めます。

その長い階段の先にある高い土台のてっぺんに建つ、ラピータ宮殿の門前に広がる石造りのスペースの上で、仰向けになったシュナン少年の石像と共に佇む少女ラーナ・メデューサを捕らえる為に。

そしてその、彼らが目指すラピータ宮殿を支える高い土台のてっぺんで、シュナン少年の横臥した石像の傍らに立つメデューサはといえば、近くに寝転ぶレダとボボンゴが恐怖の表情で震える中、階段を駆け上って来るその血眼になった兵士たちを、凄まじい怒りの形相で見下ろしていました。

その小さな身体に憎しみのオーラをまとい、逆立った蛇の髪の下で、真紅の魔眼を発光するように輝かせ、目元から、いく筋もの血の涙を流しながらー。


[続く]

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