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夢見る蛇の都 その27

 いよいよ始まった師弟対決を見守る、ラピータ宮殿の周辺にいる人々の中で、最も重要な人物といえば、やはり先祖代々の仇敵同士である二人の王でした。


ペルセウス王は、ラピータ宮殿を支える高い土台の周りに広がる深い堀の中で、部下たちに囲まれながら陣取り、堀の中にひしめく大勢の兵士たちと共に、宮殿を足元から支える土台を、ぐるりと包囲していました。

馬上の彼は、はるか高所の高い土台の上に建つ、ラピータ宮殿前で展開する戦いの様子を、周りの部下たちと共に見上げ、その行方を注視しています。

シュナン少年が倒れた仲間たちをかばうように、魔神兵の前に歩み出たのを見た、馬上のペルセウス王は、その目を考え込むように細めます。


「ついに、腹を決めたか、シュナンドリック。だが師であるレプカールが操る、あの巨大なロボットに、果たして勝てるかな?」



一方、もう一人の王であるラーナ・メデューサは、先ほどまでシュナンたちと立っていた場所から、さらに安全な、ラピータ宮殿の一階部分にあたる、多くの柱に支えられた、大広間のような空間が広がる地点にまで撤退し、柱の陰から、真正面の宮殿前で始まった、戦いの様子を見つめています。


「シュナン、負けないでー。負けちゃいや」


彼女は、吟遊詩人デイスと共に、柱の陰に身を隠しており、そこから宮殿前に広がるスペースを見つめ、そこで魔神兵と戦っている、シュナン少年の、無事を祈っています。


そして、そんな二人の王を始めとする、ラピータ宮殿の周辺にいる全ての人々の注目を集めながら、宮殿前の石造りのスペースで、巨大な魔神兵と対峙するシュナン少年は、手にした杖を頭上にかざして、相手の出方を慎重にうかがっています。

そんな彼と正面から対峙し、頭部のモニターを通して、その毅然として立つ姿を見下ろす、魔神兵を操縦する魔術師レプカールは、操縦席の座椅子に身体を委ねながら、悔しげに声を発します。


「くそっ、それにしても、言の葉の杖を、自立型にしたのが悔やまれる。その杖が、余計な事を喋らなければ、お前を騙しおおせたものをー」


しかしその声が、魔神兵の発声装置を通じて、眼下に立つシュナン少年の耳に届くと、彼が持つ師匠の杖が声を発します。


「それは違うぞ、レプカール。我が本体よ。お前が犯した過ちは、わしを作ってシュナンに渡した事ではない。お前の過ちは別にある。そしてそれは、もうすぐ、お前を滅ぼすだろう。だって、あんな簡単な事にも、気づいていないのだからー」


自らが作り出した杖の、その言葉を、魔神兵の内部で聞いたレプカールは、首をひねって、疑惑の表情を顔に浮かべます。


「何だ、それは?一体どういう意味だ」


シュナンの手に握られた師匠の杖は、その先端の円板についた大きな目を光らせながら、自分の本体が発した疑問の声に答えます。


「レプカールよ。お前は、自分自身が、シュナンと一緒に、旅に出るべきだったのだ。わしを代役に立てて、シュナンに渡すのではなくー。そうすれば、あんな単純な勘違いを、する事も無かったー」


魔神兵の内部で、操縦席に身体をうずめる魔術師レプカールは、眉間にしわを寄せて、自分の分身が放った言葉について考えましたが、結局、彼には、その言葉の意味は解りませんでした。


「ふん、わけの分からん事をー。今から、シュナンともども、そのへらず口が、きけないようにしてくれるー」


レプカールは、手元にある操縦桿を握って、魔神兵を稼働させ、その巨大なボディを、眼下の石造りの地面に立つ、シュナン少年の方へ正対させます。

そして、その巨腕を、大きく頭上に振り上げると、相手を威嚇するポーズをとって、足元近くに立つ少年を見下ろします。


「勝負だ、シュナン。弟子が師匠を、けっして超えられない事を、教えてやろう」


シュナン少年は、威嚇するポーズをとって目の前にそびえ立つ、魔神兵の巨体に対し、手に持つ師匠の杖を、挑戦的に突き出します。

ラピータ宮殿を支える、石造りの土台の上で向かい合う、シュナン少年と、魔術師レプカールが操る魔神兵。


「あなたの邪な野望を、この手で食い止める事が、せめてもの僕の恩返しです。覚悟して下さい、師匠」


邪悪な魔術師レプカールの野望を食い止めるために、師である彼と戦う決心をした、シュナン少年の発した決別の言葉が、ラピータ宮殿の門前に静かに響きます。

幼少時の虐待や、度重なる迫害にも、ついに滅びなかった、シュナン少年の持つ慈愛と正義の心が、彼の掲げる、師匠の杖の先端の目を、明るく輝かせていました。


[続く]


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