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夢見る蛇の都 その20

「ペルセウス王と、その腹心である魔術師レプカールは、優秀な魔術師としての資質を持つ、お前を手に入れるために、お前の両親を殺して、天涯孤独の身にしたのだ。更に視覚を奪った上で、手元に引き取り、魔術師として鍛え上げたのだ。自分たちの思い通りになる、手駒としてな。やがて、メデューサ族の秘宝を手に入れる計画が立てられ、お前が適任者として、メデューサのいる魔の山に、派遣される事になったのだ」


ペルセウス王と魔術師レプカールによって実行された、シュナン少年に対する、恐るべき所業について、とつとつと語る師匠の杖。

今もシュナン少年の手に握られている、その言葉を話す不思議な杖は、正式な名称を「言の葉の杖」といい、魔法の力で、魔術師レプカールの魂のコピーを、そっくりそのまま杖の先端部に移し替え、レプカール本人とまったく同じ、知識と思考力を持っていました。

そして、その先端の円板についた大きな目に映った視覚情報は、盲目のシュナンの頭脳に送られると共に、遠隔地にいるレプカール本人にも、中継用の機械を通じて送られており、遠く離れた場所から、いつでもシュナン一行の旅の様子を、確認できる仕様になっていました。

師匠の杖には、魔術師レプカールの性格が、そのまま移し替えられており、元々はレプカール本人と、まったく同じ思考をするように、調整されていました。

しかし弟子であるシュナンや、メデューサ、そして他の仲間たちと旅を続けるうちに、徐々にその移植された性格に変化が生じ、今ではシュナンを騙し利用し続けてきた自分の本体と、黒幕であるペルセウス王に対して、心からの怒りを感じるようになっていました。

つまり今では、魔術師レプカールと師匠の杖は、正反対の立場をとる、まったくの別人格と、化していたのです。


さて、ラピータ宮殿の前に立つ、シュナンと旅の仲間たちは、シュナン少年の手に持つ杖の告白によって明らかになった、ペルセウス王たちの策謀の恐ろしい内容を知って、全員が強い怒りと驚きを覚えて、その身を震わせます。

一方その頃、当のペルセウス王は、直下の深い堀の中で、ラピータ宮殿を下から支える土台を配下の兵たちと共に包囲しながら、これからどうするかについて、考えを巡らしていました。

馬上の彼は、宮殿の周囲に広がる深い堀の真ん中にそびえ立つ、ラピータ宮殿を下支えする高い土台を、真下から見上げながら、深いため息をつくと、シュナン少年を説得するのをあきらめたのか、ついに決断を下します。


「全軍、ラピータ宮殿に、突入せよ。メデューサは絶対に傷つけるなよ。他の者は、殺してもかまわん」


周囲にひしめく兵たちに向かって、指示を飛ばす、ペルセウス王。

彼は、ラピータ宮殿を足元から支える、堀の中に屹立する高い土台についた階段を、兵士たちに一斉に登らせ、その土台の上に建つ、宮殿の前にいるシュナン一行を、一網打尽にするつもりだったのです。

しかし、ラピータ宮殿を支える高い土台を包囲する兵士たちが、王命により、その土台についた長い階段を登ろうと、動き始めたその時でした。


「お待ち下さい、陛下。ここはわしに、お任せを」


なんとペルセウス王の傍らで、宮殿を支える高い土台を包囲する兵士たちの間に屹立する、魔術師レプカールが操縦するロボットが、王の命に待ったをかけたのです。

馬上のペルセウス王は、レプカールの乗った魔神兵のくぐもった声を聞くと、再び手で合図を送り、動き始めていた兵士たちを、その場で待機させます。


「任せる?我らの過去の所業がバレたからには、もはやシュナンドリックを、言葉で操るのは無理だぞ。力ずくで、メデューサを奪うしかあるまい」


魔神兵の内部で、その巨体を操縦するレプカールは、操縦席についた発声装置を使って、王に返事をします。


「上にいるあの連中は、メデューサと正体の分からぬ変な吟遊詩人は別として、弟子のシュナンを始め、一騎当千の強者ぞろいです。いくら、陛下の兵士たちが精強でも、押し返されてしまうかも知れません。それに地形的にも、高所にいる奴らの方が、絶対に有利ー。ここは、このレプカールが乗る魔神兵に、お任せ下さい」


馬上のペルセウス王は、魔神兵の発声装置から聞こえる、魔術師のその言葉を聞くと、口元に皮肉な笑みを浮かべます。


「なるほど、弟子の命を奪うのも、師匠の役目というわけか。わかった。ここは任せた。手はいっさい出さぬから、お前の手で、シュナンドリックを、あの世に送ってやるがいい。それが、せめてもの、情けというものー」


すると、レプカールが乗り込んだ巨大な機械人形である魔神兵は、その三角帽子をかむった、のっぺりとした頭を、王に向かって下げると、くぐもった声でお礼の言葉を発します。


「御意ー」


そしてレプカールは、自らが操縦する魔神兵の巨体を、シュナンたちがその上にいる、ラピータ宮殿を足元から支える高い土台の方に、振り向かせます。


「シュナン、残念ながら、お前は破門だ。わしの良き後継者になれるはずだったのに、馬鹿な奴よ。あんな小娘のために、全てを棒に振るとはー。せめて、わしの手で、苦しまぬよう殺してやろう。・・・そうだ。弟子でなくなったからには、奴にかけたあの術も、解いておかねばー。フフッ、わしからの、せめてもの手向けだ。感謝しろよ、シュナン」


レプカールは操縦席に座りながら、そう呟くと、魔神兵を動かし、シュナンたちが門前に立つ、ラピータ宮殿を足元で支える、堀の中に屹立した高い土台の方に向けて、その巨体をゆっくりと移動させます。

ペルセウス王や他の兵士たちが、固唾を呑んで見守る中、魔神兵の巨体は、堀の底の地面を、ずしずしと音を立てて踏みしめながら、ゆっくりと歩いて行きます。

兵士たちの人波をかき分ける様に移動した、その巨大な機械人形は、やがて堀の中に屹立する、ラピータ宮殿を支える高い土台の前へと、たどり着きます。

そして、その細長い足を動かすと、シュナンたちがいるラピータ宮殿の門前へとつながる、高い土台についた長い階段を、ゆっくりと昇り始めました。

ギシギシという、耳ざわりな機械音を立てながらー。


[続く]

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