バンド(再)結成
本番前の舞台裏。口数少なく、各々集中している。昔みたいに罵声を浴びせられるかもしれない。今日はオリジナル曲はなく、全てカバーだ。マサはブルースハープを吹いてほしい、とケンちゃんに頼まれたので二曲ほどギターを手放す時が来るが、それ以外は全身全霊で演奏するつもりだった。
「さぁみんな、出てくるんだ!」
管理人に呼ばれ、舞台袖から出て行った。視線が一気に集まる。みんなが息ひとつ漏らさずにこっちを見ているような気がして、かなり舞い上がってしまった。飯田がマイクを持ち簡易的なMCをしている間にバンドはセッティングをする。何度もスタジオに入って練習しているからか、一つも手順を間違えずにスムーズにできた。前回もたついてヤジを飛ばされたミッキーは一番乗りでセッティングを終え、指の運動をする暇があるくらいだ。
「ワン、ツー!」
クロの威勢のいいカウントから、俺たちのロックンロールは幕を開けた。観客は即座に雄叫びをあげ、喉が引きちぎれるのではないかと心配になる程叫んでいた。まるで世界的バンドのスタジアム公演のような狂喜乱舞に、バンドも気が狂ったかのように演奏した。アンプはうなり、ベースは心臓を揺らす。シンバルが耳をふき飛ばし、ボーカルはその荒んだ心にひとつのオアシスと言ったところか。とにかく18分の持ち場は大盛況に終わった。
「いやー、素晴らしかったよ」
管理人はあいかわらず酔って俺たちに絡んでくる。メンバー全員苦笑いしながらライブハウスを出ようとしたその時だった。
扉から人が雪崩れ込んできた。男は男に群がり、女は女に群がり、さながら昔のプロ野球の乱闘のようだった。殴られているのか撫でられているのは分からないが多方面から賛辞の声とアンコールと、おそらくアルコールのような飲み物が手渡されてきた。その飲み物は口から呑むのは難しく、大半は頭ないし胸で受け止めていた。
「いいぞ深夜営業!」
「最高!私を抱いて!」
「アンコール!アンコール!」
「毎日演奏してくれ!」
これ以外はあまり聞き取れなかったが、とにかくウケが良かったらしい。一通り満足した上で、私たちはなんとか帰ろうとしたが、しっかりと帰れたのは、それから実に四時間後であった。




