バンド(再)結成 その1
バンドが再結成して、数ヶ月。まだライブの予定も決まっていなければ、今後ずっと続けるのかも分からない状態であった。
あれから高校を卒業した俺たちは、それなりの大学に行き、それなりに学び、それなりに遊んでいた。ただ週に一、二回集まりジャムセッションをする仲にはなっていた。そんな折、管理人がケンちゃんの所を訪ねてきた。
どうやらまたライブハウスに来てほしいとのことだった。私たちは「暴徒がいなければOK」とだけ伝えた。その後、管理人から出番やルール(どうやら私たちが大暴れした後ルールなるものが設けられたらしい)を知らされ、なんとなく目に通したような通してないような記憶の中演奏練習を続けていた。
あっという間に本番当日を迎えていた。大学生に入ると特に時の流れが早く感じる。大学に行って、バイトして、遊んでいたらもう夜だ、寝よう、いつの間に起きたのか。こんな生活を続けていたものだからケンちゃんに連絡をもらうまで今日ライブがあったことをすっかりと忘れていた。
「久しぶりのライブなんだから頼むよ……」
電話越しに呆れていたが、少し髪をセットすると気分はロックンローラーな俺はギター担いでライブハウスに向かった。他のメンバーはどうやら着いているとの話を聞いたが、俺には興味がなかった。俺に興味があるのは電車広告でなぜビキニが許されるのか、そして目の前のおばさんはなぜつま先を踏んでいるのか。そして子供がギターケースのチャックを開けようとした時、とうとう俺は狂いそうになった。今この電車の中で大暴れしてやろうか。
ただでさえボサボサであるこの髪の毛をより掻きむしりながら、俺はライブハウスに着いた。
「おや、主役のおでましか」
「悪いな、今日はピアノを引っ込めてるってさ」
「馬鹿、俺はギター担当だ」
なんてジョークを舞台裏で男たちは話していた。そんな時にミッキーと飯田はかなりキツめのメイクをしていた。何故にそんなキツイメイクをするんだ、だれか分からなくなるだろう、と言うと
「バカねぇ、こんなにキツくしないと、舞台では映えないのよ」
と飯田に叱られた。どうせ何やっても君は映えない。そんなことを言ったら本番前に命がなくなるので黙っていたが、女の勘は鋭いもので、
「今、何やっても映えない、って言おうとしたでしょ」
と言われてしまった。顔に書いていたのか?と思い顔を洗いに行こうと歩き出したら、支配人とすれ違った。
「おお、深夜営業が揃っているじゃないか、さあさあこっちだこっち。写真を撮らせてくれ」
いきなり現れて写真を撮りそのまま去っていく。どこぞのゲームの『てんさいしゃしんか』ではないか。
「ちょっと待ってください、支度もできてないし、僕の顔に何か書いてるかもしれないじゃないですか」
「……君は何を言ってるんだ。何も書いてないし、女の子たちも準備万端だ。では撮るぞ……、伊達巻き、ハチマキ、汗っかき!」
訳の分からない掛け声ではあったが、とにかく数枚撮ってもらった。フラッシュの有無やモノクロ、カラー、様々な撮り方で撮っていた。願わくば、スマートフォンではなくフィルムカメラで撮ってほしかったが、高望みはしないでおこう。もうすぐライブが始まるのだから。




