グランピング 7
「ううん。知らない」
「あのね、恋愛感情や性欲を感じない人のことで、私もその一人なの」
「えー! そうなんだ。じゃあ、結愛さん何も感じないんだ?」
「そう」
「わお」
デリカシーのない物言いと反応に私は内心、わたるのことを突っ込んでいたけれど、何より結愛がわたるに打ち明けたことで不機嫌だった。勿論私はそれを隠したけれど。
その後も結愛が「だから他人にキスしろって言われたらできるよ」と説明すると、わたるが「マジ? じゃあ俺とキスしよ」とおどける。
それが本気なのかおどけているだけなのか正直分からない。
結愛がアセクシャルなのを良いことに、彼女にセクハラするんじゃないかと内心落ち着かない。その通りに話が進み始めて、私は更に不安になった。
結愛がふざけて「あ、じゃあする?」と言う。
私が突っ込むのを、この場の雰囲気が待っていると感じた。
「いやいや、ダメでしょ」と笑いながら突っ込むけれど、諦めたような疲れた声が出た。
すると、スマホを見た美和子が「え、もう九時になるよ」と言った。
「え、本当? もう?」と身を乗り出して美和子のスマホを見ると、確かにそうだった。
「やば、早く温泉行かなきゃ」と美和子が言ったのを合図に、皆で食器を片付け始めた。
私も温泉に行きたいということを伝えると、美和子が「良いよ。一緒に行こ行こ」と言ってくれた。すると、結愛が私の後ろから「私も行きたい」と言った。
「え、結愛も来るの?」と驚いて美和子が聞き返す。
いつも一緒にホテルに泊まる時は、シャワーにすら入らないので無理もない。
私も驚いて結愛の方を見ると、結愛は二人がなぜ疑問に思うのか分からないと言ったような顔で呆けていた。
「え、何?」と問う結愛に美和子が「いや、だって結愛いつも風呂入らないから。」と目をしばたたかせる。
結愛は納得したように「あー、そうね。いつもはね」と言って会話が途切れてしまった。
美和子が「まぁいっか。早く支度してきな」と結愛を促す。
私も、私の着替えとタオルを持って、コートを羽織って玄関前に向かった。
美和子が丁度靴を履こうとしていた所で、私と結愛も順番に靴を履いて外に出た。
温泉に行ってみると、脱衣所には誰もいなかった。どうやら貸し切り状態らしい。貸し切りだねと喜びながら、棚に並んでいる籠に脱いだコートを入れる。
私と美和子が服を脱ぎ始めると、結愛も服を脱ぎ始めて驚いた。
私が風呂場に行くまで脱ぐのを躊躇うのではないかと思っていたので、不意打ちだった。
美和子も同じことを思ったようで、驚きに見開いた彼女と視線を交わした。その様子に結愛が違和感を抱いたようで「え、何?」と首を傾げて聞いてきたが、私たちは「何でもない」と平静を装った。
初めて見る結愛の裸に、驚きと見てみたいという気持ちがあった。横目でつい見てしまう。頭では、なぜ彼女が風呂に入る気になったのか、その理由を考えるので一杯だった。
私とではなく美和子と入りたいからだと思うと、結愛がつくづく美和子に懐いていて、私はそれが虚しい。
美和子が私の様子を伺うように見てくるので、結愛に対するやましい気持ちは一切起こっていませんと証明せんばかりに素早く服を脱いで、一足先に風呂場に入った。




