スターバックス 7
私と美和子とまさ、私たちの中で、結愛の一番繊細なところに触れているのは私だと思っていた。
結愛のことは、私が一番理解していると思っていた。
彼女に頼りにされるくら私たちは親密な関係だと思っていた。
けれど、実際結愛が泣いて、咄嗟に助けを求めたのはまさと美和子で、それどころかずっと一緒にいて、背中をさすって、たくさん話をした私には目もくれなかった。
私は期待していた。
恋愛感情がないせいで起きるすれ違いが時々起きてしまうだけで、一番心を開いているのは私だと思っていた。
彼女の嬉しいことや辛いことを共有する相手は私だと思っていた。
私は勘違いしていた。
彼女が一番辛い時に、一番傍にいて欲しいと思われているのは私じゃなかった。
だとしたら、この恋愛には一体なんの意味があるんだろう?
何の意味もない、ただの言葉の綾じゃないか。
友人関係を、ただ恋人関係と言い換えただけで、何も変わらない。
初めから分かっていたことだったのに、その友人関係の中でも全く頼りにされないほど私たちの関係が軽薄なものだとは思っていなかった。
それを突き付けられたのが辛かった。
恋愛感情を築けなくても、家族に向けるような愛情がある。だから、私たちは私たちの関係を築けばいい。そう思っていた。
けれど、結局私はこの痛みにずっと慣れない。
彼女の中にあると勘違いしていた私の存在意義が、端からなかったという事実を知って、私にはもう彼女と恋人関係を続けていける気がしなかった。いくら続けても、不毛なだけだ。
酷い喪失感がする中で、携帯が鳴った。
美和子からだった。
「どこにいるの?」
「ごめん。迷子になっちゃって。今行く」
「はーい。待ってるね」
私はトイレの個室から出て、鏡を見た。
ハンカチで目を抑えていただけだったので、腫れはひどくなかった。目を洗って、ハンカチで拭いてから、冷静を装って外に出る。エレベーターに乗って、スターバックスの中庭に戻ると、結愛はすっかり元の様子に戻っていた。
それどころか、迷惑そうな険悪な表情を私に向けた。
美和子が「大丈夫? どこ行ってたの?」と心配してくれた。
「え、普通にトイレだけど」
「スタバのすぐそこにトイレあるの知らないの?」
「混んでたから別のトイレ使った」
「ああ」
「そんなに時間かかることあった? どれだけ待ったと思ってるの?」と結愛が嘲笑するような、呆れたような笑みで聞いてきた。
「ごめん」
「三十分は待たされたよ? 人に迷惑かけたの分かってる?」
「ごめん」




