スターバックス 6
十分ほど経ってから結愛がまた席に戻ってきたが、それでも結愛はまだ話していた。
すると、彼女の目から涙が零れた。
話しながらポロポロと涙が零れ、顎を伝って、テーブルに沁みを作る。
私は隣に座って、結愛の背中を撫でた。
それを見ている美和子とまさは、心配そうにしていたが、本人を気遣わせないために二人で話をしていた。
結愛は泣きながら平静を装って電話の向こう側と会話をしていて、ポケットからハンカチを取り出して顔を拭いていた。
十分ほど背中をさすっていると、電話が終わったらしく、結愛は携帯をポケットにしまった。
「大丈夫?」とまさが言った。
すると、結愛は泣きながら「まさぁ~」と言って両腕を広げ彼にハグをした。その後、順番に美和子にもハグをした。
「まさ可愛い」そう言いながら、結愛はまた両腕を広げる。「え?」と笑って戸惑っているまさは、それでも結愛にハグをし返してあげた。また交互に美和子とハグをする。私はその様子を見ている。
「ありがとう」と言って結愛はハンカチを顔に当てた。
え? 私は?
結愛はそのまま自分のコーヒーカップを持って、ぬるそうなコーヒーの残りを飲んだ。
美和子が「わたしの奴抹茶ラテなんだけど、美味しいよ。飲んでみる?」と自分の大きなコーヒーカップを渡す。結愛は大人しくそれを飲んで美味しいと言っている。
私はただ一人、空間から切り離されて取り残されたような衝撃を受けていた。
結愛から返された自分の抹茶ラテを、美和子は「飲む?」と今度は私に差し出す。私は「ありがとう」と言ってそれを飲むことができたが、頭の中は真っ白で、心は空白だった。なのに、胸のあたりが本当に痛くて、内側から捻られているような感じがした。
二人が結愛の隣に座る。結愛は「母親にちょっと色々言われて。でも大丈夫。慣れてるから」という。
私は耐えられなくて「トイレ行ってくる」と言って席を立った。
スターバックスのトイレが運悪く混雑していて、急を要する私は店員に別のトイレの場所を聞いた。エスカレーターに乗って、既に店が閉店している下の階のトイレに入った。誰もいなく、静かなトイレで、私はハンカチに顔を押し当てて泣いた。
自分の胸蔵を掴む。胸が痛くて仕方がなかった。




