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つれないね、恋の分からず屋  作者: 伊藤東京
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スターバックス 4

「ちょっと飲んでみる? 美味しいよ」

「いいの? ありがとう」

 ドリンクを受け取り少し飲んでみると、甘い紅茶に黒糖蜜の味がした。

「んー。美味しい」

 でしょ? と結愛は笑って飲んだ。

 こういう優しさが、私を更に狂わせる。私のことが嫌いなら、はっきり嫌いだと切り捨ててほしい。中途半端に優しくされると、中途半端な気持ちのままでズルズルと痛みを引きずり続けなくちゃいけなくなる。

 二人が飲み終わった後、外に出ると空は真っ暗だったけど、街はキラキラと輝いていた。新宿とは違って、白や黄色などの健全な色をした様々な照明が煌々と光っている。これからどうしようかと、まだ別れを惜しんでいた私たちは、美和子の提案で渋谷のスターバックスに行くことにした。

 そのスターバックスへは電車で行くことになり、私たちは元より駅まで歩くことになった。その歩道が狭く、美和子とまさが手を繋いで歩いているのを見て、私は隣にいる結愛の手を取った。けど、結愛はその手を払いのけた。強く払いのけるというより、単純に手があたったと勘違いしてよけたようだった。

 私はもう一度彼女の手を取ろうと結愛の手を掴む。

 結愛は私の顔を見て、「手繋ぎたいの?」と言った。

「手繋ぎたい」

「ふーん」

 そう言って結愛は私の手を握り返してくれた。そのまま上機嫌なのか、繋いだ手をぶんぶん振る。まるで恋人というより遠足に出かけている幼稚園児のようで、私は手を恋人握りに握りなおした。すると結愛は、手を普通に繋ぎなおす。どうしてわざわざ握りなおしたのか、それが気に障って、私はまた頑固に恋人握りにしなおした。

 結愛は諦めたように手を握られていたけれど、二分ほどたって私の手を離した。

 手を握りなおそうとすると、よけられてしまって、手を握りたくないんだという事実に落ち込んで、私も諦めた。

 駅について、電車に乗る。蛍光灯の眩しい光に照らされた車両内が、昼と全く同じ佇まいを保っていて、侵されない不変の空間に、何て潔白なんだろうと可笑しなことを思った。

 電車を降りてスターバックスに向かうと、モール内の最上階にあるらしく、美和子にならってエスカレーターに乗った。国内で唯一中庭があるスターバックス店として知られているらしい。

 インスタグラムでよく見た鏡張りのアート作品のようなトンネルをエスカレーターで登っていく。遅い時間のせいで、モール内の店は全て営業を終えていて静かだった。

 途中階まで登ったところで、次へのエスカレーターが閉ざされており、そこから上の階へはモール内のエレベーターでしか行けないようになっていた。

 閑静としたモール内を横切ってエレベーターに乗り最上階につくと、すぐ目の前にスターバックス店内への扉があった。


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