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つれないね、恋の分からず屋  作者: 伊藤東京
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スターバックス 2

「結愛」

「ん?」

「実は、私もプレゼントあるんだ」

「そうなの? いいのに」

 結愛と二人きり、新宿サブナードの店で食事をした時、結愛が本当は天文学や数学を勉強したいと思っていると話してくれたことを私はまだ覚えていた。

 けれど厳しい親元で、将来役に立つ学問以外の学部に行ったら学費は出さないと言われたことも覚えていた。

 私は何でも、自分の直感的に思ったことを信じて突き進む性格なので、嫌いなことをこれからずっと続けていかなければいけなくなるかもしれないということに今も耐えている彼女がどれだけ辛い思いをしているのか想像もつかなかった。

 幸福なことに私の家族は皆好きなことをするのが一番だと、誰も私のやりたいことを止める人はいない。好きなことを自由にやれば、いつかその中でも特筆する日が来ると私は信じて疑わない。ただ、好きでないことをするストレスは人一倍受けやすく、私にはきっと忍耐が足りないのだと思う。

 結愛にとっては周りに抗って好きなことをするよりも、波風立てないよう生きていく方が楽なのかもしれない。

 ただ、少なくとも好きなことをやる楽しみを忘れないで欲しい、そう思った。だから私は、結愛への誕生日にネックレスを買った。アルバイトもしていない学生の身なので、高いものは買えなかったが、彼女の誕生星座のネックレスには、天文学が好きだという彼女の気持ちを忘れないで欲しいという思いを込めた。

「もうすぐ点灯だよ」そう言って美和子がスマホで動画を撮り始めた。点灯の瞬間を収めたいらしい。それを見て結愛とまさも真似し始めたが、私は裸眼でその瞬間を記憶に焼き付けようと一人道の向こうを眺めていた。

 まるで嵐の前の静けさのように、皆が息を潜めて、その瞬間を待っていた。

 すべては一瞬だった。

 突然目の前が明るくなったかと思うと、全てが真っ青になっていて、人々のおぉという感嘆の声が、静かだった湖水に波紋が広がるように響いた。

 皆の顔が青色にはっきり見えるようになって、一気に笑顔になった。私もその美しさにすっかり気分がよくなった。

 私は、イルミネーションが点灯した瞬間に渡したいと思っていたプレゼントを取り出した。

「結愛。渡したいものがあるんだけど」

「プレゼント?」

「これ。今開けてみて」

 そう言って私は結愛にラッピングされた小さな箱を手渡した。

 結愛はパッケージからネックレスの入ったケースを取り出し、それをパカッと開けた。その中には店員の手によってケースに入れられた時と同じままの状態で、綺麗にネックレスが置かれている。結愛はそれを見て値踏みするように指で星座をつまんだ後「ありがとう」と一言言ってケースを閉じた。


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