横浜とカーセックス 2
「事故のこと心配しても意味なくね? バスだって百パー安全じゃないじゃん」とわたるが言った。
「いや、責任が違うでしょ」と結愛が静かに言う。
「まぁ、バス事故だと、会社に責任あるし、保険とか下りるだろうしね」と私が言う。
「心配だと思うかもしれないけど、大丈夫だと思うよ」と美和子が結愛の説得にかかる。
「いや、そうじゃなくてね。この中で私だけが成人してるんだよ? 何かあったら私の責任になっちゃうんだよ。実際そうじゃなくても社会的にはそうなっちゃうでしょ」一番近い美和子に説得された結愛が、急にはきはきと苛立ちを見せた。
「あ、そうか。この中で結愛だけ成人なのか」と美和子が平常心を装うように言った。
ただの女子高校生の私は、その言葉に胸を刺された。私には成人の、大人の責任など分からないし、大人であるということがどういう事なのかも分からない。何より成人である彼女のことについてよく考えていたつもりだった私は、全く想定していなかったことを言われて、彼女の立場などちっとも分かっていないじゃないかということにショックを受けていた。
結局何を言っても話が発展しないので、移動手段はとりあえず後で決めようということになり、横浜のどこに行きたいかという話に変わった。
それでも居酒屋を出た後、結愛はまだ微妙な顔をしていた。
みんなが先頭を歩いて雑談で盛り上がっている中、私たち二人が孤立したようにその後ろをついて歩いていた。
「ごめんね。結愛のこと分かってあげられなくて」
恋人である以上私だけでも結愛を庇うべきなのではないかとずっと思っていた。それでも私自身結愛に同意できなくて、苦し紛れに出た言葉がこれだった。
「いいよ。別に、うざがられてるのは分かるんだけど、大人になると何かあっても皆みたいに許されないから」
「ごめん。私、二十歳になったことないから、想像することしかできないや」
「そりゃそうでしょうね」
切り捨てるように言う結愛に胸が痛んだ。初めから期待なんてしてないよ、とはっきり言われたように感じた。
皆がわいわい嬉しそうに前を歩くのが、何故かミュージックビデオを画面越しに見ているみたいに、他人事のように見えた。
話は終わったとばかりに結愛は美和子の隣を並んで歩きはじめていて、悲しい顔をするわけにもいかなかった私は無理やり気持ちを切り替えた。




