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つれないね、恋の分からず屋  作者: 伊藤東京
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横浜とカーセックス 1

 居酒屋に行くたびに「みんなで旅行したいね」と言うのがいつからか当たり前になっていた。大学生のように、みんなで車に乗ってドライブなんて素敵だと私は夢見心地で想像を膨らませていた。そんな中、わたるが車を運転できると知った私たちは、本格的に旅行に行く計画を立てようとしていた。

「今週末三連休なの知ってる?」美和子が焼き鳥の串をテーブルに置かれた竹筒に入れながら言う。

「え、そうなの?」

「学校の創立記念日らしいよ」

「まじか、やったー! 俺課題溜まってたから助かったわ」とわたるが仰ぐ。

「あー、それじゃあ旅行とかしてる暇ない? 旅行したいなと思ってたんだけど」と美和子がいう。

「え! 行きたい!」美和子にそう言われて私は、運転手がわたる以外にいないことを考慮するより前に、口が勝手に言っていた。

「あ、ごめん。でもわたる厳しいならいいよ」と慌てて付け加える。

「いや俺も旅行したい。俺ドライブ好きだし。どっかで本気出せば課題何とかなるでしょ」

「いや、それじゃあ終わらないんじゃない? 別にうちらに無理して付き合わなくてもいいんだよ?」と美和子が心配する。

「いや、大丈夫大丈夫」

「そう? ええ、じゃあみんなどこ行きたい?」美和子がみんなに向かって聞く。

「やっぱ定番は横浜じゃない?」とまさが言う。

「ああ良いね!」

「じゃあ電車でもいいんじゃない?」温かい目でみんなを眺めていた結愛がそう言った。

「いや、車レンタルする方が安いよ」と美和子がスマホを操作しながら返す。

 美和子がスマホの画面を、向かい合わせに座っている私と結愛に見せた。レンタカーのアプリが開かれていて、そこに値段と現在借りられる車種が並んでいる。

「いや、そういう問題じゃなくてね、わたるが高速に乗って運転するんでしょ? 運転手一人なんだよ? 疲れても交代できないし危ないよ」

 それを聞いて、まるで説教されたみたいに急に皆黙り込んでしまった。確かに何も言い返せない。

「いや、大丈夫だよ。俺事故起こしたことないもん」

「だからってこれからも事故を起こさないって意味じゃないでしょ」

 また沈黙。店内の騒がしさに今更ながら驚く。

「じゃあ電車で横浜行く?」と美和子が気を取り直したように言った。

 けれど、美和子が電車代を検索すると家から横浜までみんな往復で約一人三千円以上もかかると気づいて、また気まずい空気が流れた。

 何より、結愛の言っていることも一理あるので、文句も出ない。

「じゃあ、バスとかないの?」と私が提案する。

 それも検索してみたが、バスの時間帯が朝早くか昼しかない上に、帰りのバスの時間も夕飯前しかなく、話が膠着してしまった。

「車でも大丈夫だと思うよ。夜帰る前に、どこか駐車場で仮眠とか取れば」

 すると、結愛は何も言わなかったけれど、あのねぇ、とでも言いたげな呆れ笑いをした。


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