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つれないね、恋の分からず屋  作者: 伊藤東京
70/103

写真 6

 コンドームを買うことが恥ずかしいことだなんて、今もこれからも分からない彼女が、純真に店員にお金を払っているのかと思うと、なんだか体がひんやりと冷たくなったような、心のうちに隙間風が吹いたような、そんな複雑な気持ちになった。

 店員に、これからセックスをするんだなと思われてもへっちゃらでいられる彼女。

 コンドームを買うことがなぜ一般的に恥ずかしいことなのか理解できない彼女。

 他人に卑猥な想像をされても、それをちっとも嫌悪しない彼女。

 どんなに卑猥なことでも、公共の場で言うことも、やることも、やられることも平気なのだろう彼女。

 その彼女の心情を理解するのは難しくても、知識として理解してあげようとすることはできる。そう思い付き合ってきたけれど、周りは彼女のことを理解できないし、周りは大衆の価値観に当てはめて彼女と接する。

 それが私は気に食わない。

 その価値観に抗おうとも思わない彼女のことも私では、どうすることもできない。

 苦しい。

 結愛が黒い袋を手に出てきた。

「お待たせ」

「ありがとう」と美和子とまさが言う。美和子が手を伸ばすと「これくらい大丈夫だよ」と結愛はビニール袋を持つ気でいるようだ。美和子は「じゃあこれだけ先に貰うね」とコンドームの箱を取り出し、素早く彼女のハンドバックの中に入れた。

 私たちはそのままラブホテルに向かった。徒歩五分ほどで、いつも泊る古いラブホテルに到着し、受付は結愛が代表して名前と住所を差し出された紙に記載した。私たちは、カップル同士別々に部屋を借りようと二部屋借りることにした。一人四千円程払った後、鍵を二本受け取り、一本を美和子に渡して私たちは廊下で別れた。

 鍵を開け部屋に入ると、結愛はすぐにベッドの上に横になった。

「シャワー入る?」

「ううん。私入らないから、シャワー入ってきなよ」

「え、シャワー入らないの?」

「んー、面倒くさい。別にいいよー」

「汚いよ? 浴びるだけでもしてきたら?」

「いいから入ってきなよ」

「そう。おっけー」

 できるだけ気にしていない風に返事をしたつもりだったけれど、上手くできていただろうか?


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