グランピング 11
「あ、いいね。それ。どう? 燈佳さん」とわたるは何の問題も感じていないようだ。
「え、嫌だよ。わたるとなんて」
結愛にとっては、私の性欲を別の人とセックスすることによって解消できるし、わたるも童貞を捨てることが出来て一石二鳥だと思ったのだろうけれど、私はそんなこと求めていなかった。
そもそもわたるは私にとって魅力的な男性ではなかったし、好きでもない人との初めてのセックスなんてしたくない。
「なんで? いいじゃんお互い初めて同士」と結愛はまだ勧めてくる。
「そうだよ。しようしよう」とわたるは乗り気で、それが逆に気持ち悪かった。
「嫌だよ。初めては大切な人としたいから」
「えー、やろうよ、燈佳さん」
「嫌だよ」
「何で? いいじゃん」
わたるは、セックスできればそれだけでいいのだろうけれど、結愛が良いじゃんと勧めるのが、私を余計に嫌な気持ちにさせた。
結愛は、どうせこれからもずっと私だけ性欲を持て余すことになるのだから、代わりにそれを発散できる人を作ってやればいいのにと思っているんだと思うと切なかった。
「ほら、燈佳さん」と言ってわたるは布団の上に仰向けになった。結愛はまるで、アナウンサーがどこかの店を紹介するときのように両手を広げて促し「ほら」と進める。
「だから嫌だって」
「何で? 恥ずかしがることないよ。私何も感じないし」
「いや、そういう問題じゃなくて」
「俺、目瞑るよ?」とわたるが言う。
「もういい。私寝る」そう言って私は布団に横になった。わたるが「何だぁ、残念」と悪気もなさそうに言う。それでお開きになったのか「俺も寝るわ」とわたるが言った。わたるが寝てしまうとどうしようもないと見て、結愛も私の横に寝た。
一生結愛をエッチなことはできないし、結愛にこの切なくて苦しい気持ちの理由も理解してもらえないのかと思うと心が苦しくて仕方がなかった。
私が悪いんだろうか?
勿論結愛のセクシャリティーを責めることはできない。
彼女は別に、選んでアセクシャルになった訳じゃない。
彼女のせいじゃないと分かっているから、余計に苦しくなる。
彼女と付き合うということが、こんなに大変で、苦しくて、辛くて、切ないものだったなんて、覚悟していたはずなのに。覚悟が足りていなかったということが更に罪悪感を増幅させて、自分のことを責めなくちゃいけなくなる。
「あのさ、結愛」
「ん?」
横を見ると、結愛はうつ伏せになって私のことを見ていた。私もうつ伏せになって続ける。
「結愛前にさ、恋愛感情があれば良かったって思ったことがあるって言ってたでしょ」
「うん」
「私、そんなことないよ。恋愛感情がないのも受け入れるよって言ったけど、やっぱり結愛に恋愛感情があれば良かったって思うかも」
結愛は何も言わなかった。暫くして「そっか」と簡素な返事が返ってきた。
あぁ、やっちゃったな。と思った。
それきり結愛は仰向けになった。私は結愛に背を向けるようにして寝た。




