グランピング 10
「何?」
「もう寝ちゃうの?」
「ん? うん。眠い」
「えー、もう寝ちゃうの?」
「もうって、今十二時すぎだよ?」
「えー。何かお話しようよ」
「えー」
「私眠れない」
「目瞑ってればそのうち寝れるよ」
そう言った時、わたるが寝ている布団の方から衣擦れの音がした。目を開けると、わたるは体を捻って枕を抱きかかえるようにしてうつ伏せになっていた。
「わかる。俺も眠れない」
「ね。だよね。なんか恋バナしようよ」
「いいね」
わたるも結愛も修学旅行気分を味わいたいのか一向に寝る様子がなかった。二人がうつ伏せになって顔を向けて話しているので、私もうつ伏せになる。
「あれ? 寝ないの?」
「二人が話してるからね」
「いいよ寝てなよ。眠いって言ってたじゃん」と結愛は言ったけれど、わたるは「いいね。そう来なくっちゃ」と乗り気になった。
そこでここぞとばかりに、わたるは結愛に質問し始めた。
「あのさ、さっきのやつ、なんだっけ、のことなんだけど」
「アセクシャル」
「アセクシャル? 結愛さんはアセクシャルでしょ? アセクシャルってどういうこと?」
「恋愛感情と性欲がないの。だから皆の言う恋するとか、ムラムラするとかが分からないの」
「えー!」
「だからキスとかしても何も思わないんだよね」
「言ってたね。え、じゃあ俺ともできるってこと?」
「うん。出来るよ」
「えー、じゃあ結愛さん俺としちゃう? 初めて同士で?」そう言って自分のことを指さすわたるは明らかにその先も期待している。
「あ、そうじゃんね」と結愛は笑って自分とわたるのことを交互に指さした。
「あ、でも燈佳さんのことは良いの?」とさっきまで積極的だったわたるがいきなり私のことを気にする。
「あ、そっか」と初めて気が付いたというような様子で結愛が振り向いた。すると結愛が名案を思い付いたというように表情を明るくさせて「じゃあ燈佳とわたるがすればいいんじゃない?」と言った。




