66.銃とは
「おまたせしました」
零七組のクランホームへ戻ると、零七組のクランメンバー全員が揃っていた。
レンナさん、ユウさんをはじめとした総勢十一名。
「えっと、まあ見たことの無いメンバーもいるかもしれないけど取り敢えず全員でキノトミへ。
護衛、よろしくね」
「護衛、本当に必要なの?」
クロちゃんがレンナさんへジト目で問いかける。
「あら。どうして?」
「全員、それなりのレベルよね?」
「より安全に。私達の一時間は貴重なのよ」
「それと、自分達の作った武器の様子も見たいしな」
クロちゃんは他に狙いがあると睨んでいるのだろう。
でも、多分それは考えすぎ。
本当に武器の様子を見たいのだろう。
主に、クロちゃんの。
それと、あるとすれば私達の品定め、かな。
「なんなら、一緒にナインテイル討伐に行きません?」
毒を食らわば皿まで。
どうせなら、こっちにメリットがあっても良い。
だから思い切ってそう提案。
「いやよ。絶対勝てないもの」
「やってみなきゃわからないじゃないですか」
「やってみたからわかるのよ。
あれを倒すのは何年先かしらね」
「そんなに?」
「計画が横道へ逸れる前に出発しましょう」
予想通り、レンナさんは乗ってこなかった。
◆
竹林を通る街道を進む一団。
先頭をカエデとシロ。
その後ろへ零七組がひとかたまりになり、左右を市松とクロちゃんが守る。
私は最後尾からついていく。
そんな私に話しかける人が一人。
「マスケットは無い」
ガンスミス志望だと言う武器職人。
プレイヤーネーム、ミス・アンドゥ。
本名、安藤さん……ではないらしい。
スミスアンドウエッソンの捩り。レンナさんがバラしていた。
中折れ帽を目深に被り、煙草を常に口に咥えている。憧れのスタイル。だけれど、流石に性別まで寄せれなかった……らしい。
そんな彼女は単銃をメインの武器にしている。
私の魔導小銃との一番の違いは、チャージほぼ不要な事。6連射まで可能で打ち切った後のチャージは三秒強。その分、射程と威力は私の魔導小銃に軍配が上がる。命中率はプレイヤー次第。
「いや、別にマスケットにそこまでこだわりは無いですよ?」
何故かそのアンドゥに絡まれる私。
「大体、先詰めて言ういかにも前時代的で雑な構造。
本来はとっくに淘汰されてしかる物なのだよ。
それが! 巴マミのお陰で一気に市民権を得やがって。
どうせ、あれだろ?
ティロりたいんだろ?
フィナりたいんだろ?」
「いや、私、その人知りませんし」
誰ですか?
知りませんよ?
私は。
なので、この先、そのティロ的な光景になったとしても、それは偶然の産物なのです。
「やはり銃は、リボルバー。
これに限る。
そもそも銃と言うのは、工業製品であり量産品。だけれどそこに何故か扱う者の個性が色濃く反映される。S&W M19 コンバット・マグナムしかり、ワルサーP38しかり、コルト・パイソン357しかりだ。
それは持ち主を引き立てる小道具なんかでは決して無い。
恋人であり、分身なのだ」
そっすか。
別に私はこだわりがあるわけではないので腹は立たぬ。
めんどくさいなぁとは思うけれど。
そんなに言うなら私に銃の一つも作ってくれれば良いと思うのだけれど、このゲームの銃の作成は特別なスキルが必要らしい。
次のクラスチェンジでそれが出来るかどうか、らしい。アンドゥ曰く、だけれど。
「百歩譲って、譲ってだぞ?
別に譲る必要はないが、それでも譲って、次点は狙撃銃だろが?
なんでマスケット?
コルトM16とか、L96とか……アイビスでも良いわ。
こちらは、恋人と言うより相棒と言う風に見えるのが面白いところだな」
そっすか。
「どっちも使ってみたいんで、さっさと作って売って下さい」
「その言い方には、愛が感じられ無い!」
あ、変な地雷踏んだな。今。
ヒートアップしていくアンドゥの話を聞き流しつつ、前方へ目を向け誰かに助けを求めようとするが、市松はマールさんとファッション談義に花を咲かせているし、カエデは先頭で刀を振り回している。
クロちゃんはレンナさんに捕まっている……。
仕方なく私はシロの尻尾の揺れる様を眺めながら適当に相槌を打つのであった。




