65.特殊クエスト
零七組のクランホームを辞去し、私達四人と一匹は、機械職人さんの工房へクエストの納品。
「こんにちわ!」
「はーい!」
カエデを先頭に、工房へ。
元気よく飛び出して来たのはここの女の子。
この子を助ける為に高濃縮魔力の実を集めるクエストだったんだけど、病気とかそういう風には全然みえないなぁ。
「おじいちゃん、居る?」
「はーい。呼んできます!」
ビシッと手を上げトテトテと走っていく女の子。
「来たか」
それとほぼ入れ違いでお爺さんが顔を出すと同時に私の前に仮想ウインドウが開く。
――――
【続・高濃縮魔力の実、求む】
セレーネを助けるためには高濃縮魔力の実が千個必要だ
報酬:-
【納品】【キャンセル】
――――
「依頼の品、高濃縮魔力の実千個、納品します」
ウインドウの納品に触れる。
「早かったな。礼を言う」
「これで、あの子は助かるか?」
そう問いかけるカエデに、お爺さんは俯いて首を横に振る。
「……これだけでは、まだ無理なのだ」
だか、なんとしても助けねばならぬ……」
カエデの問いかけに俯くお爺さん。
「……まだ何か足りないのか?」
「……そうじゃの……」
電子音と共に私の前に仮想ウインドウが現れる。
――――
【セレーネの帰還】時間指定クエスト/特殊クエスト
セレーネを助けるために森の奥の泉へ行く必要がある
道中の護衛を頼みたい
報酬:-
【依頼を受ける】【キャンセル】
※このクエストは開始時間の指定があります。
【開始時間: 7月31日 0時30分】
※このクエストは他プレイヤーより妨害を受ける可能性があります。
――――
……ん?
新たなクエスト。
それは良い。
気になるのは、一番下の注意書き。
横目でレンナさんの様子を伺うが、彼女にはウインドウは見えていない。
カエデが私を振り返る。
取り敢えず、請けてしまおう。
無言で頷くと、カエデが代表してそのクエストを受理。
「何にせよ、アタシ達が手伝うよ」
「すまぬ……」
お爺さんが深々とこうべを垂れる。
開始時間、7月31日 0時30分……明日じゃん。
しかも、深夜だよね。これ。
今、現実は19時過ぎだから23時までこのままログインして、少し休憩を挟んで……朝まで?
みんな大丈夫かな?
いや、それよりこの後次の街へ零七組と向かってそのままトンボ帰りか。
◆
「あー、なんか勢いで請けてしまったけど、良かったか?」
機械工房を後にして、通りでカエデが少し気まずそうに問いかける。
「ま、乗りかかった舟だし」
「装備も新しくなったのです。大丈夫でしょう」
「急に忙しくなったわね」
「ん。そだね。
キノトミまで零七組と行って、そのままトンボ返りかな」
まともに行けば三時間程度で向こうへ着くらしいし。
「怪しまれないかしら?」
「それは、もっともらしい理由があれば大丈夫でしょ」
「もっともらしい理由?」
「そ。幸いその理由に私は心当たりがある」
「……まさか」
「懸賞首No88、ナインテイル。今日、狩りに行くよ!」
「行きましょう!」
真っ先に同意する市松。
少し思案顔のクロちゃんと、早々に作戦会議から離脱しシロと屋台の方へと歩き出そうとするカエデ。
懸賞首No88、ナインテイル。懸賞額、九千万G。
それは、今現在カノエトラまで来ているプレイヤーにとっては半ば周知の存在。
既に何人ものプレイヤー達が挑み、そして返り討ちにされている。
曰く「見えてる地雷」。
どうやら、理不尽なまでに強いらしい。
高濃縮魔力の実クエストでそれどころでなかったけれど、装備も新調できたので挑んでみよう。
「と言う訳で、賛成三の多数決により、ナインテイル討伐は決定です」
「え?」
断言した私に困り顔を向けるクロちゃん。
わかってない様なので丁寧に説明。
「いち」
私。
「に」
市松。
「さん」
カエデの足元で舌を出しているワンコを指差す。
「ずるいわよ?」
「仲間外れいくない」
戦いは数なの。
なので、そろそろ次の召喚獣が欲しいな。
召喚術のレベルが上がってもう一匹持てる様になったし。
でも、魔石は無いし、召喚しちゃうと私とシロの経験値効率が更に悪くなる。
痛し痒し。
「ま、良いわ。
私の魔剣の前では、全ては塵芥と変わり朽ち果てるのだから」
やだ。
この人、性格変わってる。
魔剣怖るべし。




