表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/73

58.カエデが見つけた依頼

 方針は後で話し合う。

 そう言うことにして、私達はギルドの依頼を冷やかしに。


「依頼が偏ってますわね」

「納品物ばっかりだな」


 壁に貼られた依頼を見ながら市松とカエデ感想を言う。

 シロ、君、見上げてもわからないでしょ?

 なんで二人の間に自然に納まってるの?


「討伐依頼は時間効率が良いから余程のレアモンスターか低報酬でない限り、優先的に売れていくわ。

 次は採取系依頼。

 時間効率が落ちるけれど、必要スキルを持っているパーティなら確実にこなせる。

 護衛とお使いは時間効率が更に下がるけれど必要スキルは多くない。

 断トツで不人気なのがドロップアイテムの納品ね」


 私の向かいで仮想ウインドウを開き、依頼リストをスクロールさせるクロちゃんの解説。


「そもそも、採取と納品はそのアイテム自体に利用価値があるもの。

 生産職にとっては特に」


 余計不人気に拍車がかかるか。


「それに、今までの街に比べて依頼自体も少ない様ね」

「ふーん。

 そういえばみんなギルドランクって上がった?」

「上がってねーなあ」

「わたくしもCのままですわ」

「私、Bよ」

「おお。流石はクロちゃん。

 何か変わるの? 報酬とか」

「何も変わらなかったわ」


 そうなのか。


「請けれそうなのないかな」


 リストをひとしきり眺め、ウインドウを閉じる。


「なあ、さっきの猿、木の実ドロップしただろ?」

「魔力の実ね」

「そうそう。それの納品依頼があるぞ」

「え?」


 カエデが一枚の紙を壁から剥がし、私に渡す。

 仮想ウインドウを閉じながら、その紙を受け取り目を落とす。


 ――――

 【高濃縮魔力の実、求む】ランクC

 森に出没するタイガーエイプは魔力の実がなる木を知っているようだ。

 奴等が持っている魔力の実の中でも上等な【高濃縮魔力の実】を持ってきて欲しい。

 報酬:8,000G

 ――――


「高濃縮魔力の実じゃん。

 レアドロップだよ」


 タイガーエイプのドロップ品は未鑑定で魔物の骨と魔物の皮。ごく稀に魔物の肉。それと木の実。

 鑑定すれば、タイガーエイプの大腿骨、タイガーエイプの毛皮、猿の生肝、猿脳、魔力の実、高濃縮魔力の実となる。

 さっきタイガーエイプを三十体くらい倒したけど私のアイテムボックスには高濃縮魔力の実は無い。市松が一つ持ってたかな。


「そんなの、リストにないわよ?」


 仮想ウインドウをスクロールさせながらクロちゃんが言った。


「市松、これ直ぐに請けて」

「は、はい」


 突然立ち上がった私に少し驚く彼女の背を押し受付へ。


「あの、この依頼を請けようと思いますの」

「はい。

 それでは……職人街の外れの店へ行ってください」


 受付嬢から地図を受け取った市松の肩越しに質問。


「何の職人ですか?」

「機械職人ですね」


 へー。

 なら、看板は歯車かな。


 ◆


「さて、作戦会議といこう」


 点心を食べれるレストランの個室で作戦会議。

 一旦ログアウトしてロビー機能を利用しても良いのだけれど、それだとシロが居ないのでカエデが寂しがる。

 なので、ここで食べながら。他人の目は遮断できるし。


「まずは、クランね」

「一旦保留で良いかな?

 共有金庫に私の持ち金を入れてしまいたいところではあるけど」

「正直、それ以外のメリットが希薄よね」

「だよね」

「わたくしは、どちらかというと一つのところへ帰るほうが落ち着くのですが……」

「それはわかる。

 一番安いとこ、借りてみる?」

「……いえ、もう少し待ちましょう。

 家賃だけでなく、クラン登録50万。決して安くはないわ。特に四人だと。

 これは、すなわち目立つってこと。

 もう少し下調べをして、慎重な姿勢を見せたほうがいいわ」


 ふむ。周りの視線も意識してここは待ち、か?


「トーファにお願いしてクランホーム見せてもらおうか」


 そうすれば、少し雰囲気もつかめるだろうし。


「反対いたします」

「アタシもやだなぁ。アイツ」


 はいはい。

 無理強いはしません。


「ひょっとしたら、レンナもクランホームを借りているかもしないわね」

「へー。

 じゃ、連絡しよう。明日にでも」

「ええ!?」

「そんなに驚くこと?」


 そして、そんなに嫌そうな顔しなくても。


「クランホーム借りてるかわからないし、借りていたとしても、いきなりクランホームの中を見せてもらえるとは思えないわ」

「ま、ダメ元で聞くだけでも」

「……わかった。

 後でメッセージ送るから……手伝って」

「ん? うん」


 うん?

 メッセ送るのに、何を手伝えって?


「それより、さっきの依頼。

 なんなの?」

「それは私も気になりました」

「グアンナの遺跡に繋がる洞窟。

 あそこを見つけたのも実は仮想ウインドウのリストに無い依頼からだったんだ」


 説明を求める二人に、私は依頼を請けた理由を口にする。


「そんな怪しい依頼があったの?」

「受付嬢曰く、住人が勝手に貼った依頼なんだって」

「それで、反射的に請けた訳ですわね?」

「うん」

「そんな依頼が存在してたなんて……」

「気付かないですわよね……」

「前回はそこから追加で依頼が発生したの」


 まあ、グアンナに直接つながるものではないけど、少しおまけは貰えたし。


「偶然かもしれないけど、まあ、行ってみようよ。

 渡すだけで終わるんだから」


 幸い、納品するアイテムは既に持っているから。


「何かあると良いですわね」

「二体目の賞金首……!」


 盛り上がる二人と対象的にのほほんと点心を食べるカエデとシロ。

 あ、テーブルの上で食べさせてる!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ