57.クランについて
【クランについて】
・クランの結成にはクランホーム及び、一名のクランリーダー、最低三名のクランメンバーが必要である。
・クランの結成には設立手数料として500,000のGもしくはポイントを冒険者ギルドへ納付する必要がある。
なお、納付金は解散しても返還されることはない。
・クランには最大で100名のプレイヤーが所属出来る。
・クランメンバーは専用のボイスチャットが無制限で利用可能である。
・クランの活動目的、方針、所属メンバーなどの公開非公開を設定することが出来る。
・クランメンバーは、他のメンバーが達成したギルド依頼の貢献度を獲得できる。
・クランホームへは原則としてクランメンバー以外は出入りが出来ない。
・クランホームへは、共有金庫、共有倉庫の機能がありクランホーム内でのみ出し入れが可能である。
以上がクランの主なシステム。
今、冒険者ギルドの個室で提示された内容である。
「……どうしよう?」
私は他のメンバーに意見を求める。
「なんとも言えないわね。
この中で明確なメリットと言えば、他者を遮断できるクランホームと共有倉庫。
パーティを組んでなくても会話できるボイスチャットくらいかしら」
「その為に五十万か」
「決して安くは無いわよね」
安くはない。
だけれど、払える額だ。
でも、それだけのメリットがあるかと言われれば確かに微妙なライン。
「先々、クラン同士で交流イベントなども計画はしております」
ビジネススマイルを浮かべながらギルドの職員さんが補足する。
昨日、街の前で門番をやってた人だ。
「それと、クランホームには様々な機能を持つものもございまして」
そう言いながら仮想ウインドウを展開する職員さん。
「例えばこちらですと、専用の作業場がついております。高度な生産をなさるために必要な設備が一通り揃っております。
こちらは倉庫の容量が多めになっているタイプですね。
その両方を兼ね備えたお部屋も。
こちらは、専用のトレーニングルームがついております。
経験値、素材などを得ることは出来ませんが敵モンスターを呼び出して戦うことも出来ますよ。
このお部屋は、広々としたキッチンが魅力ですね。
また、窓からカノエトラを一望できる眺望も人気です」
と、仮想ウインドウが次々に開かれそこに室内写真が表示される。
なるほど。
様々な機能をもった専用スペースが使える、と。
だけど……。
「この、契約料とその下の金額は?」
「契約料はお使いいただく際にお支払いいただく一回制の金額となります。
現実でいうところの敷金礼金のようなものです。
その下は日割りの家賃となります」
「日割り!?」
「はい。毎日零時に共有金庫より自動でお引き落としさせていただきます。
万が一お引き落としが出来ない場合は共有倉庫のアイテムを徴収いたします。
それ自体も不可能な状況が三日間継続されますと、クランは強制解散となってしまいますのでご注意ください」
言葉も出ず、クロちゃん、カエデと顔を見合わせる。
いくつか並んだ室内の画像。
室内の装備によって値段は変わるが、何の装備もない共有倉庫と共有金庫だけで初期費用180,000、日額6,000。
一番上は……30,000。……え? ひとつき九十万円!? 確かに高級ホテルのスイートルームみたいな内装だけど……。
「ここ、良いですわね。バルコニーからの眺めもすばらしいですわ」
市松だけが声を弾ませる。
よりにもよって、一番高い部屋。
その部屋で暮らすと日がな家賃を稼ぐ暮らしになるんだけど。
「これって、全部カノエトラにある建物なの?」
そう言えば、全部窓からの景色がこの街のものだ。
「はい。そうです」
「まさか、クランホームへ行くためにそこまで移動しないといけないのかしら?」
クロちゃんが、眉を潜めながら尋ねる。
そう言えば、このゲーム、移動は基本徒歩だ。
高層階の部屋。まさか、歩いて階段登る?
あれ? ひょっとして、クランホームって……私達にとってはあんまり価値ない?
「いいえ。
カノエトラに入ればどこに居てもメニューから移動可能です」
「……カノエトラに、居れば?
じゃ、キノエネに居たら?」
「キノエネでもギルドハウスを借りて居ればそちらへ移動可能です」
「じゃ、フィールド上は?」
「利用不可です」
「使い勝手、悪くないかしら?」
「そうですか?
共有金庫と共有倉庫はどちらにからでも利用できますよ?」
それでも使い勝手は悪いと思う。
「うんと、昨日火事があったじゃないですか」
「はい」
「そう言う場合どうなるの?」
「ギルドハウスの入っている建物自体が被害を受けた場合は利用不可となります。
ですが、大抵の場合は翌日にはリセットされます。利用料金の返金はございませんが、修繕費用もいただきません。
なお、場合によっては倉庫の内部にまで被害が及ぶケースがございますが、その場合の補填はいたしません。
金庫はいかなる場合においても損傷しませんのでご安心ください」
「あれ? そしたらキノエネとここで二箇所借りてた場合、ここが火事になったらキノエネからも倉庫使えないの?」
「その場合は、こちらのホームで預け入れたアイテムのみが被害を受ける形になります」
うーん。
完全にクランホームは壊される事が前提になってるシステムに感じる。
そんな物に払うには少し高いよね。この金額。
四人で宿を借りたら一人二千円で、合計八千円だから、最低ランクの部屋で六千円は安い。
でも、そのために初期費用が七十万近くかかるとか……。
そもそも四人ていう前提があるから割高なのよね。きっと。
「ちょっと、今日はやめよう」
私の言葉にクロちゃんとカエデは頷く。
市松は少し残念そうだけど、反論するつもりはなさそう。
「お止めになるのですか?」
「ええ。
ちょっと、家賃が」
「家賃が気になるのでしたら、分譲もございます!」
「は?」
目の前の仮想ウインドウがパタパタと切り替わっていく。
「憧れの庭付き一戸建て。
間取りは完全オーダーメイド。
設備も最初から一式揃っております!
しかも、賃貸と違ってお好きな様にアップデート可能!
まさにプレイヤー様達だけの城!
今ならなんと、お値段三千九百九十万!
土地代は、別にいただきます!」
「買わないよ」
指を三本立てドヤ顔のギルド職員さんを、クロちゃんが間髪入れず切り捨てる。
まあ、買わないよね。




