56.取り敢えず、武器屋
「全く。
酷い目にあった」
言葉とは裏腹にやり切った表情のカエデ。
「ごめんごめん!
あんまりにも狙い通りに猿が落ちていくから楽しくなっちゃって」
これは、半分本当。
木の枝の上なんて不安定な場所に居るモンスターはその足場を撃って崩す。
一夜漬けのテクニックだけど、今回の敵には思った以上に嵌った。
「……不味いわ」
「ん?」
一方でクロちゃんはとても深刻そうな顔を見せる。
「高DPSのアタッカーと、敏捷性を武器にヘイトを散らす撹乱役に加えて前線まで飛び出してくるヒーラー。
更には、的確な遠距離からのサポート」
「……ん?」
それ、私達の事? 不味くないよね?
「このままでは、私の居る意味がなくなるわ」
「そんな事、ないですわよ?」
「あるわよ! こんな中途半端はタンク!」
何故いきなり自虐!?
「クロちゃんには、クロちゃんにしか出来ない役割があるよ!」
「何!?」
「突っ込み!」
「そう言うのじゃないの!!」
「それ!」
「やらせないでよ!!」
「と言うわけで、クロちゃんは欠かせない要員です!」
「どう言う訳なの!?」
「みんな暴れて気が済んだ所で改めて街を見に行こう!」
「おー。肉だ肉。行くぞ、シロ!」
「ワン!」
「さっき食っただろうよ!
それより武器屋!」
「ん? 銃を新調するのか?」
「違う違う。クロちゃんにピッタリの武器を思いついたんだ」
「私?」
「うん。ハリセン!」
「使わないわよ!」
私達は笑いながら街へ。
先頭はカエデ。その後をシロが尻尾をフリフリとさせながらついて行く。
◆
取り敢えず、武器屋。
そんな理由で武器屋に直行。
武器屋って、取り敢えずとかそんな感じで行く場所では無い気もする。
カエデが刀を目線の高さまで上げて刃毀れをチェックする。
売り物なんだから刃毀れある訳ないじゃん。
市松がメイスを振り抜き小さく首を傾げる。
風切り音がして振ってる最中が見えなかったんだけど何が不満なの?
二人共武器選びに夢中。
「クロちゃんは武器、良いの?」
「買い換えるほどじゃないから」
「ハリセン置いてないしね」
「そうね」
……流されちゃった。
「クロちゃんさ、さっきヤツって……私の気を紛らわせようと……してくれた?」
「……別に」
む。ツンモードだ。
「……私が居たからトーファに見つかった。
申し訳ないと思ってる」
「あの人ってどんな人?」
「ごめんなさい。
よくわからない。
その、あんまり話した事なかったから。
でも……そうね……見ていて思ったのは、人を動かすのがとても上手いという事ね。
それも、先頭に立ってというより、影から誰かを支えて」
「参謀タイプだ」
もしくは軍師。
アバターは脳筋なのに。
「参謀というより、矢面に立たないようにしてるんじゃないかしら。
誰かを傀儡にしてるの」
「ふむ。
それじゃ、メガネの女の人は?」
短髪の方は聞かなくても大体わかるからいいや。
「レンナは……何を考えてるのかよくわからない人だったわね。
唐突にとんでもない事を言いだしたり……」
そこまで言ってクロちゃんが私をじっと見つめる。睨む様に。
「……よく考えたら、貴女そっくりね」
「ええ!?」
それは、酷くない?
「スライムクイーンの粘液。
20万かき集めて落札したのあの人よ」
「ええ!!?」
あの人が?
「じゃ、私達の持ってるスライム素材って……」
「この辺で手に入らないなら欲しがるんじゃないかしら」
「フレンドなんだよね?」
「ええ」
よし。
今度会いに行こう。情報収集だ。
今日は行かない。今度。
「……連絡する?」
「今度。
今日は、もう頭いっぱい」
「そうね。ギルドを見てから情報整理しましょう。
宿で」
「その前にスキル屋寄ろう。
他人の目から逃れるステルススキルが欲しい」
「同感ね」
開き直ればいいのだろうけれど、五千万近い財産を持っていると思うと気が気でない。
まあ、そんなスキル置いてあるわけはないのであるが。




