31.四人集めた
「こんばんは」
Remnants of Eden : Unlimitedの待ち合わせロビー。
時間の流れが現実と異なるRemnants of Eden : Unlimitedに至る手前の空間。
そこで待っていた私とカエデの前に現れた黄色い髪のアバター。
着物姿の市松。
「こんばんは。来てくれてありがとう」
「こちらそこ、お誘いいただきありがとうございます」
「じゃ、行こっか」
「あ、もう一人来るから待って」
「もう一人?」
「多分」
声はかけたので、来てくれる筈。
多分。
「市松の格好ってどうやってるの?」
彼女を待つ間、私は着物姿にカスタマイズされたアバターの理由を尋ねる。
「メニューで衣装チェンジが出来ますけれど?」
「あ、本当だ」
「気付かなかった」
揃ってTシャツ、スパッツ姿の私とカエデは早速あれこれ衣装を変え始める。
「着物……無いよ?」
浴衣はあるけど。
市松の物と少し違う。
「これは、少々課金を」
「そんなトコに課金要素あるの?」
そして、そんなトコにお金かけちゃうの?
「アタシ、これ」
出たよ。妖怪ジャージ女。
「こんなのもあるんだ」
武器も鎧も無いが、色々な衣装の中にコスプレの様なものまで。
「これとか」
と、選んだのは眼帯に全身包帯姿。たしか、何かのキャラ。
「失礼します」
その衣装にチェンジしたそのタイミングで最後の一人が現れた。
黒髪に白いワンピース姿のいいんちょ。
「よし。これで全員だ!」
カエデと市松がいいんちょに頭を下げるが、誰だかわかってない様子。
「とりあえず、自己紹介だね!
えっと、晴海桜子。
プレイヤーネーム【ヨシノ】。
クラスはサモナー 。武器は銃!
よろ!
次、カエデ!」
「なあ?」
「何?」
「本名も必要なのか?」
「必要です! 理由は後述」
「あー明原紅葉。
プレイヤーネーム【カエデ】。武芸者。
よろしく」
正体を知らなかったいいんちょが僅かに眉を上げるのが見えた。
「次は、わたくしですね。
西七辻葵プレイヤーネーム【市松】。
修道士をしております。よしなに」
恭しく頭を下げる市松。
そして、全員の視線が最後の一人に集まる。
「……風雪伊墨。
【クロアゲハ】。
職業、従騎士」
「詳細は省くけど、昨日私が見つけました!」
「言い方」
「あの、クロアゲハさんは、黑天騎士団のメンバーでは?」
「黑天騎士団?」
「昨日討伐されたヒッペ。
大規模レイドの中心となったパーティですわ」
「……ヒッペ?」
「CL制覇したレアルのタケみたいな感じ。ちなみに私らJ3」
「すごいじゃん!」
なんとなくカエデにわかりそうな言葉に置き換える。例えとしては間違ってるかも知れないけれど、すごいってことだけ伝わればそれで良し。
「そこは、昨日抜けたわ。スタイルの不一致」
「やはり、シュヴァルツ・シュメッターリングはソロ専と言う訳でしょうか?」
シュ……なんて言った?
「……私はクロアゲハ。シュヴァルツ・シュメッターリングではないわ」
「シバルツ?」
カエデが私に救いを求めるが、残念。
私も分からない!
「海外のとあるゲームでの実力者です。
一言も発せず、誰とも行動を共にしない。
だけれど、攻略の最前線に必ずいる。
Remnants of Eden : Unlimitedが発表された辺りから途端に姿を消した様ですけれど」
「へー。いいんちょ、有名人だったんだ」
「私は、シュヴァルツ・シュメッターリングではないわ」
「まあ、そう言う事にしておきましょう」
西七辻さんは、どうやらいいんちょがそのシバルツなんとかだと確信している様子。
「一つ、良いかしら?」
クロアゲハが横髪を掻き上げながら言う。
「何? クロちゃんって呼んで欲しい?」
クロアゲハ、長いしね。
「そんな事言ってないわよ!
一つ、はっきり言っておきたいの。
私は身内でワイワイ楽しむつもりはない。
……こうやって、誘ってくれたことは感謝してるけれど、それとコレとは別」
「まあまあ。
結論は私の計画を聞いてからでも遅くないよ?」
「計画?」
「本題に入っても良いかな?」
三人を順番に見回し、一拍置いて大声で宣言する。
「奇しくも同じクラスの四人が集まったので、五千万の賞金首【グアンナ】を倒して山分けしようゼイ!!」




