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32.情報で殴り退路を断つ

 私は右手を突き上げながら高らかに宣言した。


 静まり返る三人。


 ………………あれ?


 なんか、期待していた反応と違う。


「え? ダメ?」


 まずは真っ先に食いつきそうなカエデに。


「いや、ダメじゃないが……話が飛びすぎじゃないか」

「そう?」

「ああ」

「でも、OKでしょ?」

「異論は無い」


 良し。

 次は、市松かな。


「折角のお誘いですが、わたくし、皆さんの足を引っ張らないでしょか?」

「ヒーラーは超必要!」

「では、是非ともお願いいたしますわ」


 最後はクロちゃん。


「見つけたって事なの?」

「もちろん! そして、その事を知ってるのはここの四人だけ!」

「……ずるいわよ」

「何が?」

「そんな秘密を明かされたら、協力せざるを得ないじゃない!」

「よろ!!

 まあ、どうしても嫌で抜けるならそれはそれで仕方ないと思ってる。

 だけど、他に情報漏らすのだけは止めてほしいかな。

 市松も」

「承知しました」

「きっちり最後まで付き合うわよ。

 他言なんてしないわ。絶対」


 よし。


「決まりだね」

「ならば、事前に決めておいた方が良い事が一つあるわ」

「パーティ名?」


 実はいくつか候補が。


「違う。報酬の分配よ」

「山分けじゃない?」

「それで良いの?

 この情報を見つけ出したヨシノさん。貴女は他より多くもらう権利があると思う。

 ちなみに、いずれは広がる事だろうから予め伝えておくわ。

 懸賞首は倒すと報酬をどうするか問うダイアログが表示される。

 全員で山分けか、指名した一名の総取りか。

 参加者全員で多数決の上、決定される仕組み」


 へー。

 でも、そしたら普通にみんな山分け選ばない?


「ちなみにヒッペの時は、この仕組を誰も知らなかったこともあり結局山分けになったわ。

 その得票率、知りたい?」


 うん。頷く私達。


「三割弱よ。山分けを選んだプレイヤーは」

「「「ええ!?」」」

「他は?」

「わからない。それは公表されない、けどおそらくは面白半分で自分の名前を書いたんでしょう。

 重要なのは、比較多数ってこと。過半数ではなく。

 つまり、四割のプレイヤーの票を操作できればその四割のプレイヤー間で利益を独占することも出来た訳ね」


 五割のプレイヤーを押さえればそれで確実に独占可能。

 ふむ。

 いやらしい仕組みだな。


「なあ。

 報酬の話は後にしないか?」


 と、カエデ。


「いいえ。重要な事よ」

「まずは勝たない事にはその皮算用になんの意味もないからさ」

「……それもそうね。

 じゃ、そのグアンナの出現パターンと具体的な作戦を聞かせてもらおうかしら」

「うん。

 グアンナはキノエネから北。山道の途中にある洞窟のさらに下にいる。

 姿は牛頭のごつい獣人。

 でっかい斧を持ってた。

 食らうと死ぬ」


 私の情報に二度三度瞬きをするクロ。


「……それだけ?」

「それだけ」

「行動パターンは?」

「斧を使うよ。それしか知らない。

 気付いたら死んでたから」

「……行ってみないとわからない訳ね。

 了解。

 みんな、ログアウトした場所はヒノトウシね」


 全員が頷く。


「転移システム無いのは面倒ね。

 嘆いても仕方ない。

 アイアンラットを倒す事になるけど一直線で戻るわよ」

「了解」

「りょ」

「かしこまりましたわ」

「あ、それと、このパーティのリーダーはヨシノさんで良いわよね?」

「え!?

 クロちゃんで良いじゃん。

 いいんちょなんだし」

「私は多分暴走するわ。

 それを止める役が必要。

 それと」

「それと?」

「まとめ役は現実だけで十分」


 と言う訳で、私がリーダーになった。


 ◆


 ヒノトウシの宿屋へ転送。

 シロを呼び出し外へ。

 廊下で全員が顔を合わせる。


「まずは、道具屋か」


 と、カエデ。


「何故?」

「回復アイテムがない。

 市松に任せきりって訳にはいかないだろ?」

「それなら、私が山程持ってるわ。

 安心して」

「……それじゃ、お言葉に甘えよう」


 買い占めしてたらしいしね。

 口には出さないけれど。


「それじゃ、行こうか」

「その前に……一ついいかしら?

 全員に聞きたいのだけれど」


 クロちゃんが少し躊躇いがちに言った。

 なんだろうか。


「……ヨシノさんの格好を見て、どうして誰も何も言わないの?」


 何でそんな泣きそうな顔をするんだい?


「アタシは何回も服を着てって言ってる。

 その結果がこれだよ?」


 やめてよ。その言い方。

 まるで私が好き好んで半裸になってるみたいじゃん。


「そう。なら仕方ないわね」


 くそう。

 簡単に諦めやがって。

 キノエネに戻ったら服を買おう。

 決めた!

 決めたんだから!!

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