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Devil’s patchwork ~其の妖狐が神を討ち滅ぼすまで~  作者: 國色匹
第二章 成長と願いと
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其の四一 宝石団の水晶石

<>(^・.・^)<トロン君視点から一旦外れます〜

「………」


 セキュリティ網を抜け、私はターゲットが存在するという美術館に入り込む。

 出来る限り音を立てず、それでいて可能な最高速度を維持しつつ、エメラルド製の機械に頼り切ることなく周囲に目を向ける。

 今回は少しスムーズすぎる気がしないでもないが、本来ならば、私一人ならばそれの繰り返し。

 だが、今回はそれだけではないのだ。


(なぁ、これってこのまま進めばいいのか?)

(ええ。このまま進むわ。私についてきて。貴方は事前の打ち合わせ通り、今回は私のサポートに徹してください。あぁ、ただし私から離れすぎないように)


 此度の任務、潜入しての秘宝の奪取。

 我々《宝石団》の基本方針であり、ボスであるダイヤモンドことビズの悲願につながるものだ。

 団員それぞれが持ちうる限りの力を使い、役割を分担し、綿密に立てられた計画の通りに実行する。

 これまではその繰り返しであり、今回もそれは変わりない。

 人数を除いて。


(了解。基本的に一定の距離を保ちつつ、頃合いを見て機動のサポートだな)


 先日ボスが発見し観察を重ね、これならば我々の理念に即するだろうという確信が得られたうえで、満を持して加入させた新メンバー。

 コードネームはクリスタル、いまだ完全に染まることのないその精神性と、透けて中身が存在しないかのようなそのココロ、さらにどんな色にも染まりうる性質を表現したものだ。

 もっとも、名付け親はボスで、昔に見たものの中でイメージに沿ったものを選んでいることから、以上の考察は私の独断と偏見によるものだ。

 人によれば、「そこまで考えてないと思うよ、あとぶっちゃけイタいよ」というかもしれない。というか似たようなことを言ったやつが身近にいた。

 ………いいじゃない。私がそう思ったんだもの。

 で、コードネームと別の本名のほうは、トロン。

 九尾の狐であり、炎に風、氷を操る器用な妖怪で、私が見てきた限り最も真摯な妖怪だ。

 実のところ、ボスが新メンバーをスカウトしてくるのは初めてではない。

 今までにも何人かの術使いや妖怪を引っ張ってきたことがある。

 しかしながら、彼ら彼女らが活動を続けられたのは、長くて一か月程度。

 その理由は、活動する理由を見失ったり、目的でなく過程にこそ悦楽を感じてしまったりといろいろだったが、中には………命を落とした、というのもある。

 そして脱退後にどうしているかは触れないように約されており、どこにいるのかも不明。

 かつてはそれなりの数のメンバーが詰めていたアジトにも、現在はボスを含め、設立時のメンバーの四人しか残っていない。

 今回の任務で、クリスタルが合格点を出せば五人になるけれど、彼は彼で兼業している先が他にもいくつかある。

 だから、結局事務所の空き部屋が十全に活用される日はかなり先か、二度と来ないだろう。


「……」

「………」


 隣に立つ彼が何を考えているのかは、わかるようでわからない。

 ………ボスの言うところによれば、本人すらわからないんじゃないか、ということだった。

 正直そこに関しては触れない方がいいだろう。事務所で作戦会議していた時も、その前後もボスは触れなかった。

 触らぬ神に祟りなし、とは言うけれど、ボスによれば『触らぬ転生者に祟りなし』という方が実感を持って納得できるらしい。

 なんでも、「あそこでこっちを選ぶのハ、よっぽどの馬鹿カ、捨てられない何かがあるやつくらいダナ」ということだ。


「……」

「…………っ!」


 私は手袋と長袖で黒く染まった腕を突き出し、半歩後ろでついてきていた大和撫子精神旺盛なクリスタルを制止する。

 ………いや、昨今はあまりこういうこと言わない方がいいのだろうか。持論としては、定型化した言い回しを態々気に掛ける方がナンセンスだと思うのだが。

 意識を重要ではあるがこの状況下では与太話である話題から引き離し、角の向こうの様子に目を向ける。

 流石に日本でも有数の名品・珍品・盗品を展示している美術館だけあって、その防衛網は一丁前だ。

 目標の据え付けられた展示室の前には交代制で見張りがいる、という情報は仕入れていたし、一人で下見に来た時にも確認はした。

 その時は精々片手で数えられるほどしかいなかったはずだが、今日はなぜだか十人を越えようかという見張りが詰めているのが見える。

 さて、どうしようか。


「…………」

(なぁ、前情報よりも守衛の量が多くないか? ここまでだと、確かアメジスト先輩の術も効きにくいんじゃ………?)

(そうですね、確かに相手が狭い空間に密集している場合、私の術の効果は著しく減退します)

(じゃあ、どうするんです………?)

(そんなものは決まっています)


 そう、不測の事態が起きようと、私の歩みが止まることはない。

 なぜならば。


あの馬鹿(エメラルド)の装備を使いましょう)


 正直あいつのしたり顔、『やっぱり備えあれば患いなし、でございますなぁ!』とにやけた顔がよぎるのは嫌な気分だ。

 とはいえ、ここで使わない手はないし、他に切れるまともな手はない。

 だったら、ここで使うまで。


「理を織りて虚ろを抱く………来たれ、召喚式二号、青鷺の火」


 腰に付けたカプセルのうち一つを取り外し、安全ピンめいたものを親指で外す。

 音を立てないように気を付けて、それでも設計者の馬鹿がくっつけた音声認識機能を使わなければならないため、極力マスクで声を抑えながら起動する。

 すると私の掌の中に収まるサイズで、青白く発光する愛らしい雛鳥が現れた。

 ちなみに音声認識機能については、「露出している武器だから、万一盗まれた際、身内にしかわからない発動条件を付けておくべきなのでござりまする」、というのが言い分だった。

 だったら最初から私たちの生体認証でも搭載しておきべきだ、といったら「やだなぁ、拙者はしがない日曜大工ならぬ日曜工作員、電子技術は使う専門で作るのは門外漢でござりまするよぉ」とのたまっていたから、締め上げておいたのはいい………いや、よくはない思い出だ。


「ズアン、行っておいで」

「………凄いな、《宝石団》ってこんなこともできるのか」

「これはあいつがおかしいだけね」


 新入り特有の質問を定型文で返しつつ、呼び出したズアンを掌のうちから離す。

 ピィ、と鳴く代わりに身をよじらせて、ズアンは角から飛び出していった。


「………………おい、なんだこのおもちゃは」

「あ? ………確かになんかいるな、なんだこりゃ?」

「十中八九敵だろうな………」


 暗闇の中、ほの明るいとはいえ青白く光るズアンに敵が引き付けられる。

 いくら容姿が愛らしいからと言って、流石に警戒を解きはしないか。

 しかしある程度注意を引き付けるには十分。


「………」

「………」


 後ろのクリスタルにハンドサインを一つ、前方に進む意思を示す。

 同時に術を発動させながら角から出ていき、ズアンが囀っているのを横目に守衛の群れを潜り抜ける。

 扉は閉まっているが問題はない、構造上目標が鎮座する正六角形の展示室は四方八方を通路で囲まれている為、ズアンで注意を引き付けているうちに正反対側へと回り込む。

 展示室から通路へ抜けるため、六つある展示室の壁面全てに扉が備えられている。

 流石にズアン一匹で全ての扉にいる守衛を退けられるわけじゃないけれど、注意を逸らすのは十分に可能。

 私の術ならば、其処を突いて扉を開けて中へと忍び込むことができる。

 現在クリスタルを私の付属品のように扱って気配を共に消しているように、《気配遮断》の術使いである私を原因とする音も、多少ならもみ消せる。

 蝶番が軋む音、扉と枠が接触する音、鍵部分が擦れる音、その他諸々、爆発音や大きな衝突音でもない限りは大丈夫。

 けれど流石に今回は安全策を取ることにした。


「………」

「………ふぅ」


 物陰に隠れてバレていないかをクリスタルに確認してもらっている間に、私の方はカプセルが青白い光を取り戻すのを目視した。

 これはズアンが一旦消滅して再びカプセルの中に戻ったことを示す。

 このカプセルは実体を仕舞っているわけではなくて、あくまでアジトにいるズアンをコピーして出力しているのに過ぎないけれど。

 と、なれば。


(クリスタル、そろそろ扉が開くわ、気を引き締めて中へと侵入するわよ)

(? ぉ、おう)


 事情がよく分からないようだけれど、数瞬後に理解が及んだようで納得したように首を振り、周囲の警戒に戻った。

 やはりこの狐の少年、結構筋がいい、ほぼすべてのことに一定以上の才能を発揮するようで、探偵事務所と〈妖技場〉の双方が目を付けるのも頷ける。

 さて、では何故扉が開くかと言うと。


「消えたな………」

「おい、一応扉が開いてないか、後中に侵入者が居ないか確認しろ」

「はっ、しかし我々は担当の入り口から離れておりませんが」

「怪盗っていうのはそういう隙を狙うもんだ。念には念を入れるに越したことはない」

「了解しました」


 ほら来た。

 動向は守衛たちの会話通り、あからさまに怪しい鳥がやってきて消えたのだから、何者かの襲来を予想するのが必定。

 であれば自分たちの警備が万全であったか否かを明らかにするため、中を確認するように指示するだろう。

 展示室はモノが多い、入り口から懐中電灯で照らすだけではどうしても死角が生まれるから、中へ入って侵入者の不在を証明しようとしても不思議じゃないし、仮に室内へ入らなかったとしても鍵は開く。

 そうすれば私が鍵を開ける際に発生する音を遮断する手間が省け、より一層他のことに注意を割けるから、確認するような指示が出た時点でどう転んでも有意義なのだ。


「え、っと鍵鍵」


 お誂え向きに私たちの潜む物陰から一番近い扉が開き、守衛が中へと入っていく。

 先程と同じハンドサインで前進、開いた扉から中へと入り、懐中電灯を避けながら室内の調度品とその棚に隠れてやり過ごした。

 これで侵入、つまり前半は成功した。

 あとは後半だけ、この調子なら問題なく任務をクリアできるだろう。

<>(^・.・^)<作戦成功するといいですね〜()

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