憑依者御一行
風が吹く草原を川沿いに3人で歩いていく。しばらく進むと東西に横切る大きな河の岸に小さな町があるのが見えてきた。ゴブミツが
「ラミマーの町だゴブ。向こう岸の町もラミマーだゴブ」
ナカマが頷いて
「そうだね。河を渡る前にちょっと休憩しようか。空腹ゲージがギリギリだ」
私達は町に寄る事になった。
食べ物やさんで焼きたてのパンを3個買って食べる。河を客を乗せた小舟がいったり来たりしているのを眺めながら古いベンチで3人並んで食べているとナカマが
「美味しい?」
「美味しいよ。味が分からないの?」
「んー……まあ、そうだね。僕は匂いと味は分からない。気にしないで良いよ」
「そっかあ、大変だね」
ゴブミツが鋭い目を更に細めて河を見ながら
「お、異世界からの憑依者御一行が河を渡ってきたゴブ。皆見ろゴブ、ド派手だから丸わかりだゴブ」
ナカマが面倒そうな声で
「一応ボイチェン入れるね。声をゴツいおじさんにするけどすぐに戻すから」
私は河の方を見る。確かに黄金の鎧を着て背中に大剣を背負った背の高い金髪美男子と、殆ど裸みたいな水着を着て虹色に鈍く発光する杖を持った茶髪でセクシーなお姉さんと、ツインテールの少女が全然似合ってない豪華なローブを着ている。3人は楽しげに話しながら私達に近づいて来ると、美男子が
「ナカマさん、おはよう!」
ナカマが妙に低い声で
「おはようございます。ジローさん」
と返すと引きつった笑顔で後ろに下がった。代わりに少女が前に出てきて可愛らしい声で
「ネカマのおじさん、無課金?低レベルNPCとモンスター連れてのソロプレイって楽しい?」
ナカマは冷静な低い声で
「自分のペースでプレイしてるんだ。放っといてくれないか?チョメたんさん」
お姉さんが進み出てきて
「ナカマさん、私達、南の邪竜倒しに行ってるんだけど、異変はなかった?」
「パフミさん、南は平和だよ。ウサギジングウネココが少し荒らしてたくらいかな」
3人は顔を見合わせるとお姉さんが
「今はスナイドの街を我が物顔で探索してる。市長のNPC退けて勝手に街の税金変えたり、住人の服を変えたり、やりたい放題ね」
少女がため息を吐いて
「20万のプレミアムパスのパワーやべえわ。廃課金者のお陰で私達が遊べてるってこともあるけどねー」
美男子が苦笑いすると
「関わらない方がいい。アイツ多分オンゲー初心者だしそのうち痛い目見るからな。じゃあナカマさん!よい旅を!」
3人はまた喋りながら去っていった。
ゴブミツが額の汗を拭いながら
「高レベルの憑依者どもこえーゴブ……」
私が
「そんなにレベル高かったの?」
元の気弱そうな声に戻ったナカマが
「3人共レベル60でカンストしてた。あれは他のオンゲーから流れてきた廃人グループだと思う」
「オンゲー?廃人って?」
ナカマは苦笑いすると立ち上がり
「行こう。ネココさんの情報も入ったし、船に乗ろう」
そう言った。




