極大水魔法のシワ寄せ
ナカマが3人分のお金を出してくれて、髪がない頭が良く焼けている高齢の船頭さんがオールで漕ぐ小舟に乗り、流れの速い河を渡っていく。向こう岸も遠くにしか見えないような大きな河だ。村から出たことない私には初めてのことばかりで驚いている暇もないなあ……などと考えていると船頭さんが上流の方を見て
「あー……こりゃ不味い……誰かが水竜様の怒りを買ったなあ」
呑気にそう言うと煙草に火を点けた。ゴブミツが焦った声で
「ルフィナちゃん!船頭さん!ナカマに掴まるゴブ!ナカマ!紫のバリア出して今すぐ消えるゴブ!」
ナカマは上流の方を向き
「……ろ、ログアウトしろってこと?」
自分に掴まったゴブミツと私と、ゴブミツの痩せた緑の右手に掴まれ、怪訝な顔でナカマの背中に掴まった船頭さんを見廻す。そして上流の河水が少し盛り上がったのを見て
「あっ……そうか……船頭さんごめん!勝手にパーティーに入れます!」
驚いた様子でそう叫ぶと直後にその場から消えた。
小舟全体を紫のバリアが包み込み、ゴブミツはまた焦った顔で船の端を掴みながら
「船頭さん!ルフィナちゃん!船の何処かを掴むゴブ!」
私が慌てながら小舟の端の出っ張りを掴み、船頭さんも真面目な顔で煙草を船の鉄板が貼られた部分で揉み消しオールを両足で挟んで抱え、そして両手で船底の出っ張りを掴んだ。
次の瞬間、上流から凄まじい勢いで盛り上がった鉄砲水が押し寄せてきた。あっという間に辺りを包むと、私達が乗った小舟は凄い勢いで押し流される。紫のバリアに守られ、一切水は入ってこないけど、小舟は勢いよく流れる河水によってグルグル回りながら水流の中、上下して東へと勢いよく流されていっている。
私は途中から怖くて両目を閉じ、ひたすら大丈夫だと念じながら勢いよく流される小舟に掴まっていた。
……
気を失っていた様だ。煙草の臭いがして目を覚ますと、全員無事で座っていた。船頭さんは空に向け煙を吐き出し、ナカマも戻っている。ゴブミツが辺りの水と青空しかない景色を見回し
「……無事なのはありがたいけど、これ、海まで流されたゴブ……」
ナカマが苦笑いして
「……今、上流でブレイバー一行が水竜との交渉に失敗して戦ってるけど、旗色が悪いんだって。僕達はブレイバー一行に放たれた水竜の極大水魔法のシワ寄せを食らったみたい」
船頭さんが
「ああ、憑依者共が悪さしてんのか。最近良く乗せるけど、変なやつばかりだな」
ゴブミツが大きくため息を吐いて
「このナカマも憑依者だけど、良い奴だゴブ」
船頭さんは大笑いして
「ちげーねえわ!命の恩人だよ!」
そう言った後、真顔で
「で、どうすんだ。俺はもう戻れねえ」
ナカマは腕を組んで船頭さんを見ながら
「ゴンゾウさん、船頭レベル27か……僕達と冒険します?パーティーには入れちゃったけど、外すこともできますよ」
ゴンゾウと呼ばれた船頭さんは頷いて
「悪くねえ話だ。ここまで流されたら仕事場にはもう戻れねえからな。ジジイで良ければ手貸すぜ」
「決まりですね。ルフィナちゃんもいい?」
「良くわかんないけど、お父さんが探せるなら!」
ゴンゾウは興味深そうに私を見てくる。




