ログアウト
私は、ゴブミツ、そしてナカマと共に一度村へと引き返していく。ナカマが
「ゴブミツだったらお父さんの斧をギリギリ使えると思うよ」
と言ったからだ。ゴブミツは
「緊張するゴブ……村入ったら殺されねえゴブ?」
「大丈夫。もうパーティーに入ってるから、NPC達には仲間扱いされるから」
「言ってる意味分かんねえゴブ……でも信用するしかねえゴブ……」
ゴブミツは項垂れ、私は戻る道の途中で月見草を見つけたので幾つか摘んでおく。夜に動くなら持っておくと、視界が良くなる。
村に入り、道具屋のおじいちゃんや、牛乳屋のおばさんとすれ違ったけれど、2人とも俯いて小さくばっているゴブミツを見て
「あーモンスターを躾たのかい。ルフィナちゃん凄いねえ」
何故か褒めるだけで疑いもしなかった。ゴブミツは冷や汗を拭いながら
「マジで攻撃されねえゴブ……すげーゴブ……」
感心した顔をナカマに向ける。
私の自宅の倉庫を開けて、お父さんの斧をゴブミツに見せると
「両手持ちしたらギリいけそうだゴブ。他の防具も持ち物も盾も装備できなくなるけど良いゴブ?」
ナカマは腕を組んでしばらく考え
「やっぱり僕がディフェンダーするしかないのかなあ……ジャスガとか無理だって……とにかくゴブミツ、斧を持ってみて」
ゴブミツはお父さんの斧を両手で持って振り上げ、ゆっくり下ろす。
「いけるゴブ」
「良いね。ゴブミツ、そこの布で斧を包んで」
ゴブミツは斧を布でくるむと両手で抱えた。
私の自宅でゴブミツに軽食を取らせ、お母さんの使っていない古い靴や紫の布マントをあげると喜んで着ていた。また村の北から森に入っていく。そろそろ夕方だ。穏やかな森の中をナカマ先頭で進んでいく。上機嫌のゴブミツは
「大丈夫。少なくともモンスターの群れはいねーゴブ」
自信ありげにそう言っていた。ナカマは無言だったけど、何かをずっと考えていたようだ。
森の中ほどで日が暮れ始めて、私は用意していた光石を取り出す。先頭のナカマに渡すと
「ごめん……眠くなってきた……」
ゴブミツが慌てて
「夜になっていく森の中で寝るのはやべーゴブ!起きろゴブ!」
軽くナカマの背中を小突くと
「いや、僕の中身が……ここ数日あまり寝てなくて……」
ゴブミツは更に慌て
「異世界からの憑依者達は勝手に寝て勝手に起きるってよく聞くゴブ!僕らのことも気にかけろゴブ!」
「ちょ、ちょっと待って……確か、プレイヤーがログアウトしてる間のパーティー保護システムが……あった。2人とも僕の身体を掴んで」
私とゴブミツがナカマの身体を触ると、ナカマは道の横の茂みの中へ入っていき
「じゃあログアウトするけど、この周りに紫のバリアが張られるから……その中に居てね……起きたらここに戻るから……」
そう言うと、何と、その場から消えた。
直後に、私達の周囲に直径5メートル、高さを2メートルくらいの円柱状の紫で半透明の壁が出現した。ゴブミツが斧を下ろして座り込むと
「……ルフィナちゃん、もう大丈夫だゴブ。このバリア聞いたことあるゴブ。中に居れば気づかれねーゴブ。蚊もミミズも入れねーゴブ。ナカマが戻るまでダラダラするゴブ」
そう言って寝転んで、すぐに気持ちよさそうに寝始めた。私は何が何だか分からず立ち尽くす。




