三つ目の依頼
ハーピー討伐の依頼は一応終えたので、村を出て、三つ目の依頼のため北へと続く森の道を歩いて行く。何でも友好的モンスターが住む隠れ集落があり、そこの困り事を解決する内容らしい。
「内容は書いてねえゴブ?」
ゴブミツにナカマは頷いて
「ランダム……じゃなくて、行かないと分からないみたいだね」
キャピナは私の後ろで首に私の手元まで伸びている縄を巻かれ、パタパタと羽ばたきながら1メートル程上を気持ち良さそうに飛んで付いてきている。縄は首輪ではなく、ヒガンバナでボーッとしているキャピナが私達を見失わないようにするためと巻いたゴブミツは言っていた。
ゴンゾウは警戒のため、最後尾を歩きながら
「こいつ、気持ちよくなって尻が丸出しなのも気にしておらんな……いい加減目障りや」
ゴブミツは振り返って
「モンスターの集落で服を買うゴブ。人間の金はありがたがられるゴブ、それに……」
ゴールデンシュリンプが落とした小さな金塊を見せてくる。確かに結構お金は手に入れた。しばらく困りそうにはない。
突然、目の前の4メートル程ある、幹にキノコを生やした広葉樹が動いて無数の太い枝をしならせ、鞭の様にしながら打ってきて
「ギャー!!」
おぞましく叫びながら先頭を歩くゴブミツとナカマに襲いかかってきたきた。ゴブミツは
「カーストレントだゴブ!話通じねえからやっちまっていいゴブ!」
斧を振り上げ、枝を切り落としながら盾を構え突撃していく。背後からも同じような木のモンスターが襲いかかってきて、オールを構えたゴンゾウと後ろに下がった素手のナカマが応戦し始める。
私は荷物から出刃包丁を出して戦おうとするとキャピナが真っ青な顔になり
「とっ、鳥肉にしないでエエエ!!」
と体毛を抜け散らかしながら暴れ出したので、出刃包丁を入れ物に直して、縄を引っ張って皆の邪魔をしないようにヒガンバナを口に運んであげると幸せそうに咀嚼し始めた。早くも胸の周りと股の体毛も薄くなってしまっている。
仲間達は無事に木のモンスターを倒し、私がその幹に生えていたキノコを折ってみると黒い筋が走っていた。これはツキヨタケだ。毒キノコ。キャピナに食べさせると
「ふやー……これおいちいねえ……ご主人様あ……しゅきしゅぎですう」
私を主人呼ばわりしてきた。とりあえず空いていた布袋に入れられるだけ入れる。ツキヨタケは絶対食べてたらいけない毒キノコだ。こんなので気持ちよくなるなんて信じられない……。
更に森を歩くと、分厚い何重にもなった高い木柵の中に、多数の粗末な小屋が建っている獣人達の集落が見つかった。ボロボロの服を着た犬や猫の顔の獣人達は友好的で、あっさりニャン大王という奥の村長の小屋に通してくれた。どうやら貧しい集落のようで、キャピナの服は買えそうもないみたいだ。
古い木造玉座に座った大きな身体の老いた猫顔獣人のニャン大王は
「よくぞ来た。早速依頼の件じゃが……ヒガンバナとツキヨタケが大量に必要じゃ」
そう言ってきて、私が2つの布袋を差し出すと
「おおっ!このくらいじゃよ!ではギルドへの依頼は完了したと報告しておくぞ」
立ち上がって布袋ごと全部持っていってしまった。
あっさり終わったので、持ってきた食料を食べた後、集落から出て、森を南東のスナイドの街に帰る途中、急に私の後ろを飛んでいたキャピナが
「ひっ……やっ……ペットみたいに首輪されて……毛がまた減ってる……」
そう言いながらドサッと草地に落ちた。恥ずかしさで羽根で身体を覆ったので飛べなくなったらしい。どうやら毒物の効果が切れて正気に戻ったようだ。ゴンゾウがため息を吐きながら抱き上げると
「まっ、待って!腕がお尻と背中に当たってるって!」
「毛がないんやから、当たらないのは無理やろが、黙って抱き上げられとけ阿呆」
「やらあああ!!はじゅかぢいいい!ヒガンバナちょーだい!キノコでもいいからああ!気持ちいーのちょーらいいいい!」
キャピナは森に響き渡る声で泣き叫んで、一日中、依頼をし続け、疲れて構うのが面倒な私達は黙って、木々の間から夕焼けが差す森を足早に進んでいく。夜になる前に抜けないと大変だ。




