エリザベス
老婆は、私たちにソファに座るように勧め、全員が着席すると
「……ナカマさんは、若いじゃろ?」
ナカマが苦笑いしながら
「エリザベスさんはボイチェンじゃないですよね?」
老婆は頷くと
「あっちでもこのまんまじゃねえ。人生で初めて鏡見ながらキャラメイクしたわ。畑仕事の合間にオンゲーするのが趣味で、同じ趣味の旦那にも最近先立たれって感じじゃ」
ナカマが不思議そうに
「多分、初日勢ですよね?これで合ってます?僕、オンゲー初心者で……用語とかも毎日勉強してる感じです……」
老婆は微笑んで頷き
「戸惑ってるのう。ヘッドギアとカメラで表情まで伝えられる……すごい時代になったもんじゃ。ああ、パーティーの方々、茶菓子とかいらんかね?」
ゴブミツが
「頂くゴブ!毒はいれねえでくれゴブ!」
老婆は笑いながら棚からクッキーを大量に出してテーブルに置くと
「オンゲーを休止挟んで五十年してきたが、この世界は気に入っておる。私はこれをやってる最中で死にたい。成り行きで市長になってしまったが、この小さな町も好きじゃ」
そう言いながら緑茶を淹れ、陶器のコップを私たちの前に並べると
「……哀れな老人の小さな世界を守るために、ヘンタースンシを殺してくれんかね?」
ギラギラした表情で言った。
ゴンゾウが真面目な顔で
「……どう、殺して欲しいんや」
老婆はシワだらけの顔で微笑んで
「現地民の方々に説明するとな、私ら憑依者はこの身体を操っとる本体が別世界に居る。なのでこの世界の憑依者の身体を殺しても本来が死ぬわけではない」
クッキーをかじっていたゴブミツが冷や汗を垂らし
「まっ、まさか!本体をナカマに……」
老婆は爆笑すると
「いっ、入れ歯が外れかけた……そんなこと頼まんわ。そうじゃなくてな……あんたらにはヘンタースンシのこの世界の身体を暗殺しに行って欲しいんじゃ」
凄いことを頼んできた。
ナカマが険しい顔で
「すぐに蘇るのでは?」
老婆は微笑み
「……配信者の泣き所は、配信のBANじゃ。それはもう知り合いに呼びかけてやって貰っとる。別件でポリスへの通報も済んだ。ただ、何でも即日に、というわけにはいかん」
ナカマが唖然とした顔で
「そっちも手を回してるんですか……」
老婆は笑いながら
「願掛け程度じゃな。配信を止めて悪さを一切止めた配信者も過去におるからな。まあ、それはこっちの話や。とにかく暗殺してもらえるんかな?1回でええよ。それ以上は期待しとらん」
ゴンゾウが頷いて
「あんたの話は呪文みたいで殆どわからんが、我々は単純にヘンタースンシを暗殺すればいいんやな?」
老婆は黙って頷いて
「アイツはロリコンじゃ。しかもゲームを荒らすのが目的なので、一切レベル上げとらん。低レベルなんじゃ。お嬢ちゃん、今からする話をよく聞きなさい」
私をジッと見つめてきた。




