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乙女ゲームの主人公に転生したはずなのに悪役令嬢がみんなに愛されて過ぎていて私はほっておかれています。  作者: としろう


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あなたの気持ちは?

そう、ブレスレットは何の反応も示さなかったのである。

試しにアンジェリカがつけてみたが、やはり反応はなかった。


ミナミとアンジェリカは顔を見合わせる。


「まあ、何とかなるでしょ」


――何と!?


アンジェリカの言葉に呆れたミナミだった。


とりあえず、元管理人に会ってそのブレスレットを見せることにした。

小奇麗にされた彼は、品の良い老人にしか見えず、とても元浮浪者には思えなかった。


「……間違いありません。これは50年ほど前に紛失してしまった聖なるブレスレットです」

老人が静かに言う。

迷いもなく確信しているあたり、何か特別な見分け方でもあるのだろうか。


「本物ではあるのね」

そう言ったアンジェリカの言葉に老人は静かに頷く。


その反応にアンジェリカは満足し、しばらく考えると……。


「では、長年紛失していた聖なるブレスレットが見つかった、それだけでも十分じゃないかしら?」



そして、今その聖なるブレスレットをつけてミナミはアンジェリカの誕生日パーティーに出ているのである。


最初はミナミが聖女であると騒ぐ?つもりであったが、まったく光らないブレスレットを前に作戦を変更。

紛失していた聖なるブレスレットが50年ぶりに見つかった!で話題を作るらしい……。


作戦はこうだ。

ミナミがアンジェリカに貰ったブレスレットを身に着けて会場に居ると、あの元管理人がそれを見つけ、

「これこそ、あの聖なるブレスレットだ!」と騒ぎ出し、婚約の話はうやむやに……。


ということらしい。


――正直上手くいくのか?


ミナミは、雑なこの作戦に不安しかなかったが、アンジェリカのゴリ押しで当日を迎えてしまった。

ランナもセルジュールも死んだ魚のような目をしていたが、彼女(アンジェリカ)の好きにさせようと思ったらしい。


成功したとて、時間稼ぎにしかならないとミナミは言ったが、「それでいい」

とアンジェリカは言った。


「今は本当に話せない状態だから、時間が少しでも稼げたなら、必ず私からリュークにきちんと話しますわ」


その瞳は真剣だった。

二人の間にしかない信頼や思い出、想いが色々あるだろう。

二人は決して嫌いあってるわけではない。

ただ、好きの意味が少し違うだけ……。


ミナミは胸がぎゅっとなった。


そんな事を考えていると、いつの間にかパーティーも中盤に差し掛かって来た。

何か発表があるならそろそろだ。


案の定、リュークリオンが壇上に上がり、幼馴染ずやアンジェリカも上がる。


「本日は我が娘の誕生日にお集まりいただき、感謝します」

ドミエール公爵が挨拶をする。

そして、お祝いの言葉をという名目で、リュークリオンにマイクが渡される。


――いよいよだ


ミナミに緊張が走る。

無意識にブレスレットをいじる。


「アンジェリーナ様がこうしてつつがなく健康に、16歳を迎えられたこと、大変うれしく思います。私は――」


――そろそろかしら

そう思って、元管理人に目くばせをしようとしたミナミだったが、緊張したせいか、ブレスレットを落としてしまう。


カランっ。


「あっ!」


急いで転がるブレスレットを追いかける。

それを見ていたランナやセルジュール、元管理者も追う。


――早く取り戻さなきゃ!

その間もリュークリオンの口上は続く。

決定打を言う前に、取り戻さなくてはならない。


「あった!」

ランナが見つけて、ミナミの手にはめる。

――早くしなきゃ!

ミナミが急いで管理者に合図を促したその時だった。


「――よって、ここに私とアンジェリカ嬢との婚約を解消することとする」


――えっ?

ミナミはランナとセルジュールを見るが二人とも何も知らないと言った様子だった。

壇上のアンジェリカさえ、驚いて固まっている。


「先ほど述べた通り、今のままでは特定の家門ばかり優遇され、広く優秀な人材を確保するのは難しいだろう。しかしながら、世界的な情勢も鑑みるとこのままでは我が国は時代に取り残されてしまうだろう」

「変わらなければいけない時に来た。そう言えば良いだろうか」

皇太子の真剣な眼差しに会場の誰もがかたずをのんで聞き入る。

「そして、その一因となっているのが、幼いうちの家門同士の婚姻制度だろう」

「本人たちの意向も関係なく、家門同士の利で繋がる婚姻を重ねていては広く公正な政治を続けていくのは難しいだろう」

「と言っても今すぐに取りやめろという訳ではない。不満もあるだろう。そこで、まずは王族から率先してこの慣習を排していこうと思う。」

リュークリオンは大きく息を吸い込む。

「今日をもって、リュークリオン・マリオン・サンジュールとアンジェリカ・サン・ドミエールの婚約解消を宣言する」

会場はゆれる。

喜んでいいのか、判断が難しいのであろう。

「リューク……」

アンジェリカは突然の事で驚きながらも、涙が出そうになる。


――私の為に……ありがとう


「アンジー、もし、20歳になって、お互いに生涯を共に歩みたいと思えたなら、私の方から改めて婚約を申し入れよう」


その一言で、会場が歓喜に沸き、拍手喝さいが起きる。


事情も知らない人々からみれば、なんと素敵な愛の約束だろうか。

国政の為に一度は婚約解消する愛する二人が、20歳の成人を迎えた時、晴れて正真正銘の婚約をする。

劇的なドラマだ。


だけど。

それは成し遂げることはないだろう。

なぜなら、アンジェリカの気持ちはもうそこにはないから。


でも。


――リュークリオン、あなたの気持ちは?

これを国王や重臣達に承諾させるために、ここ数ヶ月寝ずに奔走していたのじゃない?

ミナミはすれ違い様に見たリュークリオンを思い出す。

酷く疲れている様子だった。

声をかけることすら、はばかられるほどに。


あなたはいつだってそう。

アンジェリカの為なら、なんだってやってのけるのね。


――でも、そしたら、あなたは?

あなたの気持ちや思いは誰が受け止めるの?

あなたの傷ついた心を誰が癒してあげるの?


――ああ、私が優しいあなたを癒してあげられたなら


その時だった。


「ああ!!光が!!……間違いない、この光は聖女様の時と一緒だ!!」


見るとミナミの腕のブレスレットが七色に光っていた。

ここまでお読み頂きありがとうございます!

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