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乙女ゲームの主人公に転生したはずなのに悪役令嬢がみんなに愛されて過ぎていて私はほっておかれています。  作者: としろう


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聖なるブレスレット?

ついにアンジェリカの誕生会の日がやって来た。

予想通り、旧成人式ということでいつもより盛大になっているらしい。


親しい友人としてミナミやランナ、セルジュール、そしてタクマも招待されている。


壇上には当然のようにリュークリオンと以下幼馴染ズがいる。


「アンジェリカ サン ドミエール様、入場します。」


父親にエスコートされ、アンジェリカが入場してくる。

ワインレッドの生地に黒いレースや細かな刺繍、控えめにパールも散らされている。


他の人が着ていたら衣装負けしてしまうであろう。


そんな絢爛豪華なドレスを難なく着こなしてしまう彼女はやはり、特別なのだと会場にいる誰もがそう感じられた。


そして、ドミエール公爵から、リュークリオンにエスコートをバトンタッチされ、舞台の中央に向かっていく。


あまりの2人の眩さに会場からは感嘆の声がもれる。


そんな2人を見て、ミナミはやっぱり心が痛む。


しかし今はそんな感傷に浸っている場合ではない。


今日はミナミの人生にとっても恐ろしく重要な日になるはずだから。


遡る事一か月前。


「ミナミさんが聖女になればいいのよ」


アンジェリカは乙女たちの前で自信満々に言う。

目の前にいる3人の乙女はあっけにとられてしまうのだった。


「あの……アンジェリカ様のお気持ちはわかりますが、聖女とはそう簡単になれる者ではありませんわ。そもそも努力したらなれるという者でもありませんし。」

セルジュールが困惑しながら言う。

「私もそう思います。確かにミナミには何かしら特別な運?みたいなものは感じますけれども……。それだけではねえ??」

ランナも言葉を選びながら慎重に話す。

アンジェリカを頭ごなしに否定などできない。


しかしそんな苦労も露知らず、アンジェリカは自信満々に言い放つ。


「大丈夫ですわ!!私、秘策がありますから!!」


――なんの?!


ミナミはどうせ前世の知識だろうなと思いながらもとりあえず何を言っても聞かなそうなアンジェリカの話を聞くことにしたのだった。


要約するとこうである。


現在聖女かどうかを判断するには、王室にある聖なる水晶で判断している。

毎年、聖フォース学園を卒業する光属性の者達が順に手を触れていき、水晶が何らかの反応を示せばそれが”聖女”ということらしい。

約50年前の聖女が現れた時、水晶は七色に輝いたらしい。

しかし、実はそれ以外にも聖女を調べることができるアイテムがあるらしい。

それは聖なるブレスレットと呼ばれ、中央教会に保管されていたのだが、50年ほど前に紛失してしまったらしい。


それがなぜか今度の非公式のオークションで取引されるという。

アンジェリカはそれをゲットして、ミナミにつけさせれば何らかの反応を示すというのだ。


さらに、当時そのブレスレットを管理していた者が任を解かれて、浮浪者のような生活をしているのでその人に「本物だ!と言わせるのだという。


ここまでの話をドヤ顔で説明するアンジェリカに、セルジュールとランナは固まってしまった。


――いやいや、その計画無理ありすぎね?!


そのブレスレットはドミエール家の財力で得たとしよう。しかしながら、それは本物なのか?!50年近くも前になくなったものがなぜ今?

そして、元神官であろうその浮浪者は身元は確かなのか?彼の証言に信憑性はあるのか?!

そもそもミナミがブレスレットをつけて光もしなかったら?いや、普通に考えて光らないんじゃ??


「完璧すぎる私の計画に皆さん、言葉も出ないようですわね」


――どこがだよ!!


思わずそうツッコミそうになる二人の令嬢を落ち着かせ、ミナミが口を開く。


「まあ、とりあえずそのブレスレットを手に入れて私がつけてみない事には始まらないわね」


光らなければ……アンジェリカもこの計画は諦めるだろう。


「それもそうね!では早速今晩行きましょう!」

「どこへ?」

「もちろん……オークション会場にですわ!!」


大人数で行っては目立つという理由でアンジェリカとミナミは二人でオークション会場に行くのであった。


「アンジェリカ様、これは誰のルートなの?」

道中でミナミがアンジェリカに尋ねる。

明らかにこんな都合のいい話、前世の知識に違いない。

「うーんと、これはショークリオン様よ」

「え??リュークリオン様の弟君の??……対象だったっけ?」

「実は裏ルートで、全ルートをクリアしたら出てくるルートなのよ」

「それはもう、私にはお手上げね……。じゃあその浮浪者も間違いなく元神官のブレスレットの管理者なのね」

「そういうこと!でも名前が思い出せなくて……まあ、主要キャラでもなかったんだけどさ。でも前世の知識もだんだんと忘れてくるものね……。」

少し残念そうにアンジェリカが言う。


「……忘れていってもいいのかもしれないわよ?」

「え?」

「前世の記憶に私達、少し縛られ過ぎなんじゃない??」

「え??ミナミさん、どうしたの急に」

「いいえ、ただ、私達、前世にとらわれ過ぎているかもって。本当の意味でその人の今を見られてるのかなって。それでいて本当に自分の気持ちは今の自分の気持ちなのかなって」

「ミナミさん?」

「……あなたが避けているのは前世のリュークリオン様でしょ?今のリュークリオン様は本当にあなたを断罪するような人?」


――今のリュークリオンはアンジェリカを断罪なんかしない。むしろ、自分を犠牲にしてでもあなたを守るでしょうね。


「……それはわかっているわ。」

「だったら!一度でいいからちゃんとあの人を見てあげたら?タクマへの気持ちは前世からの推しって言ってたけど、それにつられてない?だって冷静に考えてどうみてもあなたとリュークリオン様はお似合いよ、アンジェリカもリュークリオン様の事大事に思っているんでしょう??」


アンジェリカのタクマへの気持ちを疑っているわけではなかった。

だけど、やっぱりあの人が求めているのはアンジェリカで、それを失う事はあの人にとってとてつもなく悲しい事なんじゃないかと思う。

あの人の寂しそうな顔をもう見たくない。

客観的に考えて、リュークリオンとアンジェリカがそのまま婚約すれば全て上手くいく気がした。

タクマだって、身分違いと諦めるだろう。

私だって。


「ミナミさん。私の気持ちは変わらないわ。私が生涯一緒に居たいと思う人はタクマ様だけ。たとえこの思いが誰かを傷つけたとしても」


アンジェリカが真剣な瞳で言う。

ミナミはそれ以上何も言えなかった。


馬車の中に沈黙が訪れる。



ブレスレット獲得は簡単だった。

珍しい鉱物を使っているとのことで多少は人々の関心を引いたが、所詮は古びたブレスレット。

あっさりとアンジェリカが落札した。


「これが聖なるブレスレット?錆びついてるわねえ。こすったらきれいになるかしら」

なんだかアンジェリカの前世の知識も疑わしくなってきた。

とりあえずアンジェリカがつけてみるが、当然なにも起きなかった。

次はミナミの番だ。

若干の緊張のもと、ミナミがブレスレットをはめると……。


「え?!」


――何も起きない!!


二人は顔を見合わせる。


「……まじで?」

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