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物語(仮)  作者: りくど
第2部
5/8

1話:誰かがいる当たり前

ここから2部になります。

長い夜が明け、朝が訪れた。

かつて、朝になると聞こえた小鳥のさえずり。


……今は、全く聞こえない。


不気味な静寂に包まれているようだ。



─さえずりが聞こえて「あぁ…朝かぁ」って思う。それが当たり前だね?



「ふぁ〜…なんかよく寝れた気がする。」


起きたシオンの隣では、さえずり…いや

黒い小鳥さんの寝息が聞こえる。


「(…カナタがいたから、安心したのかな。

まぁいいや…、ちょっと周りを確認しよう)」


シオンは一口水を飲み

深呼吸をして、耳に集中した。


※※※

シオンはカナタより少し体が小さい。

そして、うさぎの因子が体に現れている。

うさぎような耳と脚がその証。


この耳のお陰で、小さな音も拾えるのだ。

※※※


「………すぅー……ふぅー…」


──ドクン、ァアァァオオ…

──ギィィェァ、ォォォッ、グゴォォ。


「まだいるみたい…

小さなやつだけど15かぁ。」


ドロップ達は、スーパーの周囲を囲み

いつでも狩れるように

その姿を潜め待っている。


シオンの耳を相手に

待ち伏せは無意味…のはずなんだが

困らしてるのは事実だ。


「はぁ……どうしよう…私は戦えないし」


困り、悩んでいると

黒い小鳥さんは目覚めた。


「ふぁ〜〜…んーー!はぁ〜。よく寝たぁー!

元気いっぱい!ふっかーつ!」


「ホント元気、あははっ。

よく寝れたんだね。おはよ〜。」


「シオンおはよ〜!シオンもよく寝れた?」


「うん、寝れたよ、もう爆睡したよ〜」


まるで学生のような会話だ。


シオンは、朝ごはん用にとっておいた

最後のぽりぽり人参と水を用意し

二人で半分こして食べた。


シオンは質問する。


「ねぇ、これからどこ行くとか

目的地とかあるの?」


カナタは咀嚼しながら、首を振る。


「え?ないかな!ないけど、ここは出るよ。

また食べ物探さなきゃだしね…ははは……。」


カナタは人参のぽりぽり感を噛み締めた……。


「シオン、ありがとうね!すごく助かったよ!

キラキラの玉は食べないようにするから!」


よいしょと体を起こし、出発の準備をする。


同時に、シオンの胸は

ぎゅっと締め付けられた。


もうすぐ、カナタはココから去ってしまう。


そうなれば、独りぼっちに逆戻り。

怯えながら死ぬまで孤独だ。


それだけは、もう……絶対に嫌だった。


シオンは勇気を出した。


「ね、ねぇ……!」


「(ビクっ)…どうしたの?おっきい声出して」


「あの!わ、私も…!

私もカナタと一緒に行かせて!!

独りぼっちは……もうイヤ…!」


カナタは黙ってしまった。

嫌だからでは無い。ただただ、驚いた。


しかし、返答までは早かった。


「うん!いいよ!一緒に行こっ!

こんな世界(ばしょ)だし、生きるためには

一人より二人のがいいのは当たり前だよ!」


シオンの目から涙が溢れる。


耳と脚しか取り柄のない自分でも

嫌な顔せず、受け入れてくれた。


何よりもう『独り』じゃないのが嬉しかった。


「カナタ、ありがとう…。」

「(ずるずる…)でも、カナタに

言わないといけないことがあるの……。

この建物の周辺、小さなドロップが

15体はいるの……」


「げっ…!まじ?なんにも聞こえないよ?私。

あっぶなぁ〜、小さいんじゃ弱いけど

その数じゃ、めんどうだなぁ〜」


「でも、本当にシオンの耳いいなぁ〜!

私もそれだけ耳がよければな〜」


「いいじゃん、目がいいんだし。

でも、これからは二人だから。

音は私が聞くから、安心して」


「あ、そうか!そうだね!

じゃあ、私は目と戦闘は任せてね!」


二人は笑い合う。


特別な言葉ではなかった。しかし

泣いて目を腫らしてもいいぐらい

シオンの心は喜びで満ちていた。


「とはいえ………どうする?」


「飛んでるのはいないんだ、だから

飛べると一番安全だけど、私無理だし…」


「んー……あっ!シオンはさ、

今まで逃げまくってたんだよね?

てことは、速く走れるよね?」


「速いかどうかは分からないけど

確かに、ずっと逃げてた。」


「この両足は、これまで逃げて生きた証で

その分『進んだ』結果…

ほぼ、ウサギに近いんだけど

いつからか、もうここから『進まない』んだ」


「『進まない』の?!

自然と何か身についたってこと?」


「い、いや、それは私も分からない…」


「そっか〜、なんだろうね?まぁ、いいや!

でも、その逃げまくってたで思いついたの!

競走しようよ!」


「……競走か、おっけ〜…じゃない!!

え、なんで!?そうなったの!?」


「えっと〜、私は飛ぶね!

でも、シオンの真横を飛ぶ。

上を飛ぶと私はズルになっちゃうからね!

それで、ドロップ達の間をぬけて行く。

どうせなら、楽しくいこー!」


「羨ましい、前向きさだよ、カナタ…。

うん、わかった。できるか不安だけど…」


カナタはシオンにちょっとまっててと言い

建物内の所々のヒビの間や窓から

周囲を見渡し戻ってきた。


この建物の裏側、方角で言えば北側。

そっちにも建物があるから

そこを目指して競走しようというのだ。


シオンの心拍数は

アホみたいに高くなっていた。


そして、準備は整った─。


「よーし、行くよ!競走ね!」

「う、うん…。ふぅー…。行こう!」


二人は勢いよく飛び出た。

それを合図に、周りのドロップ達が

待ってましたと一気に反応して、

襲いかかりはじめた。


しかし、その間をダンスのように

綺麗に避けていく。


その様子は、ただの競走ではなく

《障害物競走》だ。


「すごいね!シオン!やっぱり速い!」


「カナタもすごいよ!

こんな低く飛んでるのに!」



世界は残酷になってしまった。

だけど、二人は今をMAXで楽しんでいた。


シオンは醜い声、崩壊した世界の音

逃げて生き延びていた時に感じた

死をも思わせる風、怯える毎日。


これらしか知らなかった。


だが、それも今は全て違う。

風が気持ちいい、外は明るい、

何より誰かと笑い合う嬉しさ。


カナタと出会い変わったのだ。


言葉や顔こそ出さないが、カナタもまた

誰かといる喜びと幸せを

噛み締めているようだった。


走っている二人の姿は

元々、知り合いのようにもみえた─。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

2部も「勢いとテンポ」を大事に、とにかく楽しく書き進めています。

ゆるい気持ちでお付き合いいただけると嬉しいです!

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