6話:命を頂く当たり前
※こちらは5部になります
よかったら1〜4部も読んでみてください
家の中は、ゾアの失態?のおかげで
とても和み緊張とは無縁になった。
ひとしきりにゾアをいじり倒していたら
夕方になっていた。
窓からそれを確認したレマ。
「あぁ…おもしろい、あははっ
そうだ、ゼラ、里は案内したの?」
「えぇ?お風呂と服だけだよ〜?」
「そう、なら今日は里の案内でもしてあげて。
話したいことはまだあるけど
一気にだと疲れちゃうからまた明日来て」
「それでいいよね?ゾア」
「い、いいよ!姉さんの好きにして!」
「もういいじゃない、お姉ちゃんで」
「そうだよ〜、もうみんな知ったし〜」
「いいからいけ!明日また来なさい!ほら!」
「はぁ〜…はいはい、わかったよ〜
んじゃ行こ〜……」
「秘密を知れたしいいわよねっ」
「全然いい!じゃまた明日ねー!」
「ランカちゃんも行きたい!」
「ランカはダメ、ここにいるの」
「ちぇ〜…しょうがないなぁ
みんなまたねー!」
ゼラ達と共に家を後にした。
外に出て、桟橋を歩いていると
来た時も聞こえてたが
湖に発生している、僅かな波とその音が
シオンは気になっていた。
「そういえば、
湖がずっと揺れてるけどなんでだろ?」
「あぁ…それ〜?レマちゃんの力〜
『誰でも見えて、安心できるように』って
どんな力かは知らな〜い」
「明日、話してくれるんじゃないかしら」
「あたしもすごい気になるんだよねぇ
でもなんか、今になって聞にくいなぁって」
「わかるそれ〜…別にいいかって
思ってるしねぇ、深く考えないの必要〜……」
「そうなんだ、じゃあ今は
気にしないでいいか…」
ゾアのインパクトが強すぎて
レマの事を詳しく聞く感じではなかった。
明日、喋ってくれると期待した。
気づけば、里の中央広場まで来ていた。
「まだ賑やかー!
お腹減ったー!ご飯食べたーい!」
「私もお腹減ったから、案内しないで
ご飯食べようよ〜…どうせ
ここにいれば全部わかるし〜」
「確かにそうね、お腹減ったわ」
「そうだ!じゃあ、あれ食べようよ!
『イモリとヤモリドロップの串焼き』!
最近、食べれてなかったでしょ?でも
今日は取れたらしいんだよ!」
ゼラは食いつく、目が怖かった。
「アレが今日あるの?なんで知ってるの?
食べたくてもずっと無くて困ってたの。
早く行こう。無くなるのは許せない。」
「ゼ、ゼラ姉、アレ好きだもんね…目怖いよ…
服で2人がはしゃいでる時に、
服を作って反応なくて、なんだよもうって
ふと歩いてる人見てた時に
食べてる人がいて聞いたんだよ!
反応のことなんかどうでもよくなった!」
「わたしもアレ好きだけど、たしかに
全然食べれてなかったわね、行きましょ!」
ゼラ達は盛り上がっているが
カナタとシオンの顔は引きつっている。
ドロップを『食べる』話だから。
聞いたことも見たことも試したこともない。
カナタは食べるが、回復のための
『心臓』を食べるだけで
ドロップ自体を食べるわけじゃない。
カナタとシオンの当たり前は通用しない。
缶詰など旧文明のものは一切ない。
ここでは生きるため、栄養のため
『ドロップが食事なのは当たり前』
引きつる顔で質問する。
「…え、ドロップを……食べるの!?
食べれるの?!絶対無理!」
「うん、ドロップがご飯なんて…やだなぁ…
缶詰とかパンとかないの?」
2人は缶詰とパンを恋しく思う。
それが当たり前の食事だったから。
「え〜と、シオンちゃんが持ってたやつね?
あんなすごいのはないわよ?」
「ないない!ここではドロップご飯だよ!
でもね、ちゃんと美味しいの!」
「串焼きは絶対あげないからね〜……!」
ゼラは案内を頼まれたが
フルシカトして本能に従い、
食事処に行くことを決めた。
そこへ近づくほど、カナタとシオンの
鼻を美味しそうな『匂いの軍勢』が攻撃する。
体は正直だ。
カナタのダムは崩壊し滝が流れ始める。
シオンもダムは決壊しつつある。
ドロップご飯から放たれ、漂う匂いは
今まで食べてた鯖缶同様に
名前と匂いが相反しているのに…。
ぞろぞろと歩いていると
店の店主がすぐに気づいた。
「おぉ!三面鏡じゃないか!
後ろのは新入りだな!よく来たな!
ゼラ〜、さては串焼きを聞いてきたなぁ?
アッハッハ!
顔を見ればわかるぜ、安心しな
まだあるからよ!」
「そうだよ〜、まだあるならよかった〜
ヴヴじぃ、いつものとこ空いてる?」
「当たり前だ、あそこは三面鏡と
レマちゃん達だけの特別席だぜ?
でも新入り!今日はそこ座っていいぞ!」
「じゃあ、串焼き持ってきてね〜…
あ〜あと、アシナガドロップバチの
脚のぽりぽり棒もおねが〜い
毒ソース忘れないでねぇ〜」
「ヴヴじぃ!あたしはあとアレ!
ドロップバッタのなんこつ揚げ!」
「わたしは、蜘蛛ドロップの糸麺にしようかしら
あ、冷たいのがいいわ、あとは
蜘蛛ドロップのゆで目玉をお願いね」
「「(何言ってるの…この人たち……)」」
「おう!すぐ持ってくからな!
新入りはなにか他食うか?!」
「え、あ、え、その……」
「え……っと〜」
「あ、そうか!何がいいか分からないか!
ハッハッハ!来たばかりだからそうだよな…!
それじゃ、これはどうだ?今日のオススメだ!
魚ドロップの卵丼と
ドロップカゲロウの照り焼きだ!
いいのが手に入ったんだ!美味いぞー?」
「(……さ、魚…!?)」
「(カ……カゲロウ…!?!?)」
過敏に反応もしたくなる。
なぜなら、クローバと出会った森で
試練として出会ったドロップだったからだ。
まさか、あれがご飯としてここにあるとは
2人は思いもよらなかった。
あまりの衝撃に返事ができず
ヴヴじぃはいいものだと思い、用意する。
「決まりだな!待ってなよ!」
「「……あっ」」
ヴヴじぃは早速、厨房に向かい準備する。
「なんでそんな顔なの〜?
うまそうじゃ〜ん…」
シオンとカナタは簡単に説明した。
「あははー!おもしろすぎでしょ!
お腹痛い……ひー!あははっ!」
「き、きついわね、それは…でも……ぷっ
ちょっとおかしくて笑っちゃうわ、ふふふ」
「ヴヴじぃすご〜……」
「「笑わないでっ!!!」」
※※※
『ヴヴじぃ』
適合因子は『カブトムシ』
甲殻と呼べる部分は、両肩と両膝、両肘が
プロテクターのように変化している。
元々の体格とカブトムシのパワーが合わさり
さらに強そうな肉体をしている。
その代わり、羽は飾りレベルで
全く飛ぶことができない。
肌は、プロテクターの部位周辺以外は肌色
違うのは、カブトムシの硬さを
その皮膚は再現していてクソ硬い。
普通の刃物は通らない。
また、ドロップを食材とするため
里の外へ行くことがある。
戦う時は『甲殻』を『攻殻』とし
『攻撃は最大の防御』のスタイルで仕留める。
また、自分の力の範囲内で倒せるやつしか
倒さないため、著しい深化はしない。
自分の力量はわかっている。年の功だ。
さらに、食材を取りに行く時は1人ではない。
ヴヴじぃを筆頭に数名のチームを組んでいる。
三面鏡へのリスペクトのようだ。
※※※
ゼラ達専用の席は、店の屋上。
里を見渡せる超特等席。
これはヴヴじぃの
どうしてもという要望で作られた。
自分を助けてくれて、
里に連れてきてもらったその恩を
『食事』という形で全力で返す。
だから『絶対にその席には誰も座らせない』
しばらく待っていると、
注文したドロップ料理が続々と運ばれてくる。
「待たせたな!アンタらからは
何もしてもらうことはないからよ!
どんどん食ってくれ!」
この世界…もとい里には『通貨』がない。
ここでは『何かしたら』『何かで返す』
これで成り立たせている。
ヴヴじぃはご飯屋、だからそれに関係する
お返しをしてもらっているのが大体。
『水を持ってきてくれ』
『調味料の材料を持ってきてくれ』
『このご飯を届けてくれ』
他もあるが、簡単なのはこんな感じのもの。
そしていよいよ……食事だ。
「これこれ!これだよー!串焼きー!」
「まずこれ〜…ずっと待ってた〜」
「ホントいい匂いねぇ〜」
名前でも何言ってるか分からなかったのに
実物を見てもっと意味不明になる2人。
ダムは決壊しているのに。
「こ、これホントに食べれるのかな…」
「シオン、私もそう思うけど
口から水が止まらないよ…?」
ぐぅ〜〜〜
2人のお腹からは
隠しきれないほどの爆音が鳴り響く。
「あはは!もう限界じゃん!食べなよ!
大丈夫だって!ほら……(もぐもぐ)うまーい!」
「た、たた、食べよう、カナタ」
「う、うん、お、お腹…お腹減ったし
ふ、ふる、震えが…」
「いくよ………」
「「……せ…せーのっっ!!」」
卵丼と照り焼きを1口分取り、
めちゃめちゃ震える手で運び、噛む。
目をギュッと閉じ、嫌そうな顔で
もぐもぐしていたのもつかの間。
その顔はほぐれにほぐれた。
「「おいしーーーー!」」
リミッター解除の瞬間である。
「カナタ!そっち!ちょっとちょうだい!
私の少しあげるから!ね!
うっ……み、見た目すごすぎるねこっち…
あの時もそうだったけど……
んぁ〜ん……(もぐもぐ)」
「シオンのも食べたいからいいよ!はい!
うわぁ…こっちもすごーいっ……キラキラ!
んぁ〜ん…(もぐもぐ)」
「「おいしーーーー!」」
「違うの食べたい!
ゼラ!それ食べたい!ちょうだい!」
「やだー!これ私のー!まだあるじゃんかぁ!」
「ダ、ダスト!そのなんか分からないの
食べたい!ちょうだい!
カリスのも食べたい!」
カナタとシオンは今までの
『当たり前』を完全にぶっ壊され
新しい『当たり前』を全力で楽しんでいる。
美味いと分かれば話は変わる。
美味すぎて、誰のだろうとお構いなし。
ドロップご飯は衝撃的ではあるが
その美味さはヴヴじぃのおかげで
何万倍も跳ね上がっており
2人の胃袋を見事に掴んだのだ。
いや……鷲掴みだ。
その後も、ドロップご飯を
みんなで結局分け合いながら、堪能した。
そして、ヴヴじぃと別れる。
「お腹減ったらまた来いよ!
いつでも待ってるからな!」
「また来るねー!ヴヴじぃー!」
「私もまた来るー!」
大満足の2人。
「見て!シオン!お腹ぱんっぱん!」
「負けてないよ?私もほら!ぱんっぱん!」
「「あはははっ!」」
外はすっかり暗くなり、先程までの
里の明るさは所々となっていた。
「んじゃ〜…今日は解散だねぇ〜
あ〜…?2人は寝るとこないねぇ?」
「そうじゃん!宿の部屋あるかな?」
「2人は戻っていいわよ、わたしが案内するわ
ついでに見せておきたいものがあるし」
「そう〜、じゃ〜…ダストにお願いする〜
2人ともまたねぇ」
「明日ね!寝すぎるなよ!じゃあねぇー!」
ゼラとカリスは先に帰った。
三面鏡には三面鏡用の家がある。
それもレマの個人的理由でログハウスだ。
そして、見せたいものがあると残ったダスト。
「ダスト?何を見せるの?」
「暗くてシオンじゃ見えないかも!」
「まだ見えるよ!もう!」
「ふふ、ついてきて」
ダストの後をついて行く。
また湖に戻ってきたが、少し離れた場所。
そこだけは、他と違う。
『水面が揺れず、鏡のようになっている』
ダストはそこで2人に覗くよう伝える。
「カナタちゃん、シオンちゃん。
2人に里の名前の意味を教えておくわ。
この部分を覗いてみて。
綺麗に『今の自分が映る』わよ」
体を触れば、変わっているところはわかる。
けれど、姿自体見たことない。
2人は……湖の水面を見る。
『今の自分』が綺麗に映っていた。
「…は、初めて見る……これが私…?
こんな顔なの…耳と…右側だけなにこれ…
尻尾はランカちゃんほどじゃないけど……」
「え、これが私ぃ〜!??なんかこわーい!
やっぱ脚黒い!すごい黒い!手首も!
手の指もここだけ黒い!」
「ふふふ、普通の反応ね、誰もそうだわ。
でもそれが『あなた達という証』であり
『生きてきた証拠』よ?
改めて、この里の名前は『鏡湖の里』。
あなた達や私たちみたいな適合者が
『ありのままの姿』で暮らす場所
その意味が少しはわかってもらえたかしら?」
「この姿が、悪くないってことだね!」
「少しわかった気がする……。
この姿が…今の私…!生きてきた…!」
「それじゃ、宿に行きましょ?
2人は部屋がないから、今日はそこで
寝てもらうしかないわ」
「おおー!寝れるところ!」
「ふぅ〜…。よく寝れそう〜」
宿に着き、ダストが説明すると
快く部屋を案内され、そこでダストと別れる。
「それじゃ、2人ともまた明日ね」
「うん!!」
「また明日…!」
2人の体からは、何かが一気に
解放されたようで自然とベッドにダイブする。
カナタは秒で寝た。気絶の域。
シオンも軽すぎて気にすらしなかった
リュックを置きダイブする。
「寝るの早くない!?はぁ〜……
羨ましいところ……多いなぁ…ほんと…。
寝すぎな…いようにしないと……
……すぅー…………」
シオンもスイッチがオフられ眠りについた。
ベッドで寝ている2人。
ベッドというものを気にする暇もなく寝た。
ここまで濃すぎた。
かつて当たり前であった
ベッドという旧文明の物を知るのは何日か後。
明日は何が待っているのか。
この里の当たり前は驚きの連続。
カナタとシオンは新しい『当たり前』を
少しずつ…受け入れていく。
「ぐふふ……おいしぃ〜……すぅー…」
「……(ね、寝れない…耳塞ぐやつ欲しい)」
最後まで読んでいただきありがとうございました!
ブクマ等はお任せします!
ゆるく楽しんでいただければ、それで!
書いてて、ゲテモノなのに
美味そうに思いました。




