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物語(仮)  作者: りくど
第5部
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22/30

2話:帰るまで遠足が当たり前【後編】

※こちらは5部になります

よかったら1〜4部も読んでみてください

カリスの目が痛い理由は、至極単純。


──目が『開きっぱなし』だから。


オーバーファクターが発動すると

基本的に終わるまで『目を閉じれない』

1度たりとも『瞬きができない』


だが、『瞬きができず、閉じれなくても』

『閉じたい』という

『人としての本能』まではなくならない。


カリスは、ドロップとも戦い、自分とも戦う

1体ずつのが楽と言っていたが……実際は『2対1』


常に──『人数不利』


そして、目が開きっぱなしのせいで

『乾き』と共に徐々に『充血』してくる。


だから痛いし、その目からは、涙も『一切出ない』


ただでさえ、目は地獄。

それに加えて…もう1つキツいものがある。


目が限界に近づく度に

水滴の揺らぎは大きくなってしまうことだ。

それは、他者から見てもわかるほど。


戦闘時間が長引き、カリスが

『限界』か『本能』で目を閉じれば最後……


水滴は──『強制解除』


使っていたいなら──『開いていろ』

終わっていいなら──『閉じればいい』


この選択は因子の声を体現しているに等しい。


オーバーファクター

──『水獄万化』


その制約の1つは、肉体的にかなりきついものだった。



水獄万化は、言うならば『超短期決戦型』

ドロップをどれだけ早く全滅出来るかが全ての鍵。


「ぶは〜……!あとはお前だけ!

ササッと倒させてもらうよ!目が痛いの!」


「……つ、つ、……つれ…け……つれ…て」


「やだね!まずちゃんと

喋れるようになれ……よっ!!」


「グォアァァァアオォ!!!!」


言葉と同時に、水が流れるが如く

リーダーの周りを自慢の速さで

飛んで、跳ねて、走り始めたカリス。


そして、水が石を削るように

カリスはリーダーの体を少しずつ斬り、離れる。


ヒット&アウェイだ。


短剣で斬った箇所の外傷はなく、無傷だが

斬った箇所の『中』から少量の血が出る。


飛び回るカリスを目で追えないリーダーは

斬られていることは体でわかっている。

だが、斬られて血が出ても動じない。


ダメージが極小すぎて気にならないのだ。


「クソ…!お前!他のやつより硬すぎ!

適合してるからちょっと違うんだな…!?

(このまま斬ってもアレじゃ無理だ…

時間がかかっちゃう…!

刺して一気に水をぶち込んでやる…!」


カリスは相手の異常な硬さに驚いたことで

この一瞬だけ動きを止めてしまい

そのまま思考してしまった。


リーダーは止まった敵の隙を見逃さない。


今度は俺のターンだと言わんばかりに

その鋭い鎌を振りあげた。


人間だった頃はきっと…足が速く

何かの選手だったのかもしれない……。


一気に間合いを詰められてしまう。


「ダメだ…避けれない!チッ……こい!」


避けれないカリスは

その鎌を受けようと短剣を出した。


鎌は……フェイクだった。直前で止まる。


─ドンッ!


「は…?!止まっ……!ん…ぐっ……!」


「はは……は……ガガガォァゥァア……くひ…」


リーダーの顔は笑顔ではなかったが

その言葉で笑っていることがわかった。


「こ、こいつ……ッ!!

その手は嘘かよー…!蹴りやがってー…!」


その蹴りは元々の強さに

適合された力が足され、パワーがあった。


カリスは水滴の壁まで飛んだが、外には出ない。


「バシャンッ!」という音が鳴るだけ。

だから負傷することもない。


この水滴は、カリスも敵も自由に出入りはできない。

決闘場そのものと言っていい。


どちらかが死ぬか

カリスが目を閉じ解除されなければ出られない。


「短剣は間違いだったかなぁ……?

1番扱いやすくて好きなんだけど…いやいや

今はそれどころじゃない…!」


独り言を言いながら、既に動き回っていた。


カリスは自分の力のはずなのに

この『水滴の中』では

『同じ場所に止まっていられない』


先のように、驚いて一瞬止まってしまう等は別だが


常に動いている必要がある。

攻撃する、しない関係ない。

とにかく動かなきゃならない。


そして、これは……『制約ではない』


動く必要がある理由は、カリスが適合した


──『リュウグウノツカイ』


リュウグウノツカイに限らず

深海魚は生態として、同じ場所にはいられない。

常に動く、動かなければならない。


カリスにはその生態が『特徴』として体にあり

この水滴の中に『入ると』それが『発動する』


普段はそんなものはなく、普通。

水獄万化を発動し、作られた水滴の『中のみ』だ。


「(どうする…?痛いけど、まだ目はもつ…だけど

時間をかけていいわけじゃない……)」


カリスは自分の目の状態と相談しながら

どうするかを考えていた。


※※※


─外側


「ゼラ姉さん」


「う〜ん…たぶん手こずってるんだねぇ〜…

あの…人みたいなやつ、めんど〜なんだねぇ…」


「なんかさっきより揺れてる?」


「揺れてるね?なんだろね…?」


※※※


クマムシリーダーは動き回る

カリスを段々と目で追い始めていた。


「少しずつ斬ってたら、全然終わらない…!

あー刺したい…!水入れたい!

入れたら中から爆発させ……て……ん?

…あっ!……そうじゃん!刺す必要なくない!?」


カリスは思い出した。


クマムシリーダーを含め、クマムシ軍は

『カリスの水』を利用して再生した。


ならば、体の中にその『水』があるのではと。


短剣で斬るんじゃなく

そっちをいじって攻撃すればいいんじゃ…と閃いた。


カリスから何かを感じとったリーダーは

やっと慣れた目で追い、確認し

すかさず距離を詰めて右の鎌、左の鎌と

今度は鎌で攻撃してきた。


「ころす……こ、、す…ウァァゴゴ……ころ…」


「あたしの速さに慣れたか!だけど、遅かったな!」


カリスは避けた。

ゆらゆら揺れている髪だけが少し切れる。


「離れ……ろっ!!」


ドン!


カリスは蹴り返した、壁までは

飛ばせなかったが、それで十分だった。


「言ってることが分からないと思うけど!

最後に教えてやる!お前の中には

既に!『あたし』がいるんだよ!」


カリスは動きながら伝え、そして

タイミングを見計らい、見つけた一瞬で、

リーダーに向け、短剣を勢いよく投げ、再度動く。


その短剣の速さは、カナタの爆速より速かった。

水滴自体の流れも利用した超高速投擲。


短剣の速さはリーダーには追えず

確認した時には、腹に当たり

腹巻きのように広がりそのまま浸透した。


「グゴォア……!?…い、、い…ゴォォあォ」


「さっきより痛いかもね!あはは!」


ズシャ!ズシャ!ズシャ…ズシャ…ズシャ!


リーダーの体の中から、水で作られた

無数の棘が勢いよく何本も飛び出て、串刺しになる。


そのまま倒れ込むリーダー。


ピクリとも動かず、水が沢山その場にあっても

もう復活できないことも確認できた。


「ホント硬すぎー!ちょっと強くて楽しかった!

またね!話せるようになってろよー!

あ……もう聞こえてないか!あははっ!」


──ちゃぽん。


『2対1』の人数不利に勝ち、出てきたカリスは

さっきまでとは違い、疲弊していた。


カリスが出てきて数秒後に

水滴は崩れ地面に吸われていく。

他の水滴も同様に崩れている。


崩れた箇所は『赤』かった。そこには……


胴体だけ残って倒れているクマムシ

首だけないクマムシ

中身だけ無くなって袋になってるクマムシ


とにかく、見て気持ちがいいとは到底言えなかった。


目は元に戻り、カリスはすぐさま目を閉じる。


「いぃーーーーったーーー!!

だぁーーー!くぅーー!いたーーーい!目ぇぇ!

うわぁぁぁ!おぉぉぉぉ!!と、とれるーーーー!」


「カリス!だ、大丈夫!?目やられたの!?

体か?!何されたの!?」


「出てきたから倒したんだよ…ね?

でも、なんであんなに目を抑えて……」


ダストは教えてくれた。


「カリスはね…オーバーファクターを

使うと基本的には『目を閉じれないの』…

すごく……きついわよ……」


「のわぁーーー!いたい!いたい!いたーーい!

んぉぉぉぉ!!くそー!何だこの制約ー!!」


地面に転げ、のたうち回り

足をバタバタさせ、目を抑え、悶絶する…。


「どうすんの!?あれ!」


「なんか、私も目が痛いかもしれない……」


「はぁ〜…手こずったねぇ…?カリス〜。

でも〜、カリスの制約、私より楽でいい〜…」


「うるさいなぁ!あ゙あ゙…!いたい!楽じゃない!

ゼ、ゼラ姉…!はやぐーー!」


ゼラはカリスに近づき、触手を伸ばし

カリスの身につけているポーチから

小瓶を取り、蓋を開ける。


触手操作は朝飯前。


無理やり手をどかして、押さえ込み

無理やり目を開かせ、閉じぬようにし

無理やりカリスを静止させ

無理やり液体をかけた。


ゼラがカリスにかけた『小瓶の液体』こそ

目の痛みを応急処置で和らげるもの。

あくまで応急処置なので、完治しない。


治すにはちゃんと目を『洗わないといけない』


だが今は、一時的でも十分なのだ。



そして、小瓶の液体の正体は──『普通の水』


誰でも口にしたことがある。

当たり前に蛇口から出てくる、あの『普通の水』。


ただの──『水』。


自分で作った水は自分には『使えない』


カリスが飲んだり、浴びたり、洗ったり

できるのは『普通の水』のみ。


ポーチに水を持っていたのは

こういう時のための応急処置用として

里を出る際には必ず持っている。


──遠足には何があるか分からない

その為の準備は当たり前。


当然、そのことはゼラとダストは知っている。

だから、ゼラは対応が早かった。


「あ、ありがとう!ゼラ姉……!

はぁ…楽になったぁ……!ふぅ〜…。

目を抑えちゃうから、持ってきても

自分でかけれないんだよね、あはは……」


少し離れた所にいたカナタ達にも

落ち着いたのがすぐに分かった。


「あれ?カリスがバタバタしなくなった!」


「カリスに何か液体?みたいのをかけてたね?」


「そうよ、液体をかけたのよ。

あの液体はシオンちゃんもカナタちゃんも

飲んだことあるわよ。アレ…ただの水だもの」


「「……ええぇ!?」」


「わたしも同じ反応したわよ、ふふ

わかるわよ、その気持ち」


「でも、水使えるのに、水使えないって

カリス変なのー!」


「そうだね…使えてもいいのにね」



里までは距離がある。帰るまでは遠足だ。


──『帰るまでは』



一息つこうとした、その時。

ダストの鱗粉がシオンの耳より早く反応した。


「あら……?」


ブゥゥゥゥ──


眠りを邪魔された怒りなのか

ただただ、呼んでしまったのか…。


鱗粉に触れ、ダストの元へ『線』として伸びていた。


ダストが確認した後、

すぐにシオンも耳で捉えた。


「次は何!?すごく低い音、た、沢山いる!!」


まるで重機のように重たい羽音が

地鳴りのように響いていた。


その羽音の塊は鱗粉などお構い無しに

木々の間を抜け、時にはへし折り

5人の頭上へ覆うように現れ、滞空した。


空を覆う奴らの正体は、

スズメバチドロップの大群。

こちらも当然、セカンドビッグバンの影響で

変わってしまっている。


個々のサイズはバラバラだが、

羽音は共通してやたらデカく重たく変化してる。

普通のスズメバチも重たい羽音だが

ドロップ化して、比にはならないデカさ。


そして、その中には、一際でかいやつがいる。


女王だ。


「あぁ〜…次はハチだぁ〜……」


「無理無理!あたし今は無理!戦えない!」


「私も無理〜…

触手当たんないし、毒効かな〜い…

ダスト〜〜…!おねが〜〜い……!」


少し離れたダストに

大きい声でお願いするゼラ。


物理は効くが、当たらないのを知っている。

さらには毒も効かない。だから頼む。


「仕方ないわね…んもう……

こんなに来ちゃったのは、カリスのせいよ!」


「「(絶対違うよ…ダスト……)」」


女王は突撃の信号を発し、大群は一斉に

5人に向かって飛んでいく。


音が重すぎて押しつぶされそうな勢いだ。


「気持ち悪い!気持ち悪い!気持ち悪い!

来ないで!来ないで!来ないで!」


「むりむりむりむり!!ちょ、ちょっと!

カナタ!私に隠れないで!やだやだやだ!」


本能か、2人の拒絶具合が半端なかった。


「まぁ、そうなるわね。2人とも?

近くで見ると、もっと気持ち悪くて

夢に出るかもしれないわよ?」


「ゆめは知らないけど……

寝てる時に見るのは…」


「「嫌だーーー!!!」」


脊髄反射で目を固く、強く、ギュッと閉じる。


カナタは言葉は知らないが意味はわかってた


「(そ、そんなに効くとは…まぁ今のうちに)」


カナタとシオンの強く閉じているその目に

閉じていてもわかるぐらいの強い何かを感じた。

それで更にギュッと閉じる。


何か周辺で音は聞こえている。

だが、なんの音かは判断がつかない。

と、思っていた矢先だ。


「2人とも、もういないわよ、終わったわ」


「「えっ……?」」


固く閉ざされた目を恐る恐る開き、見た。

そこに映っていたのは『全滅してる大群』

1匹たりとも生きていなかった。


「これはこれで気持ち悪いと思うけど

飛んでくるよりマシね」


「え、何したの!?ダスト!ねぇ!」


「あんなにいたのに…ホントに何したの……!?

いや!それより!これはこれで無理!

ん?なんかまだでも音が──」


──バリッ…バリッ……


シオンは音のなる方を確認した。

目を丸くし、ギョッとし、ゾッとした。


「あ〜ん…(バリッバリッ…もぐもぐ…)」


「た、食べてる?!」


「うん〜…私も毒平気〜……あと意外と

栄養いい〜コイツ好きぃ〜…うま〜。

でも、毒のせいで私しか食べないんだぁ」


「ゼ、ゼラ…毒のせいとかじゃないと思う…」


「え、違うのぉ?」


「ゼラやっぱ変!」


2人の頭はしっちゃかめっちゃかだった。

しかし、理解することを待ってくれない。

目指している山頂がすぐそこだった。


「ねぇ〜…もうすぐ上つくし行こ〜…」


「てっぺんだ!てっぺーん!」


「2人とも行くわよ、もうすぐ山頂よ」


5人は進み始めた。


進みながら、

カナタが気になることを口にする。


「カリスのさっきのやつ!水の!

あれ、すごいけどさ、カリスの深化も

すごいんじゃないの?」


「……あっ!そうだよ!カナタが言うまで

何も思わなかったけど…

深化がすごいんじゃないの?

オーバーファクターなんて…」


「え?別になんともないよ!」


「「へっ……?」」


「確かにやばそう!って思うよね〜、でも

アレにはその人が不利な制約…ん〜と〜

『ルール』みたいなものが

いくつかあるんだ、『1個だけ』は

絶対にないんだけどね?」


「「うんうん」」


「そのルールで深化する時の

体の痛いのと記憶が無くなるのを『無くしてる』

だから、深化する時の体の痛みはないし

記憶も今のままなんだ!」


「え、じゃあ!私もそれを

使えるようになれば!」


「うん、私も!使ってみたい!」


ダストが口を挟む。


「ダメよ、カナタちゃん達には使えない。

というよりまだ『そこまで』きてないの」


「え、何が…?きてないの?ダスト」


「『深化』よ。アレができるのは、ある程度

『深化してなきゃダメ』みたいなの、詳しくは

よくわたし達もわかってないわ……ごめんね」


「なんかぁ…急にぃ?だったよねぇ?

まぁ…今はそれより先行こうよ〜……

帰りた〜い…疲れたぁ〜」


「そうね、ここで止まってては

またいつドロップが来るかも分からないし

2人とも、今教えてあげられるのはそれだけ

今は里に行きましょ?」


「えー!知りたいー!でも里も行きたいー!」


「そうだね…気になるけど

まずはあそこに行かなきゃ…!」


オーバーファクターは深化が進まなきゃダメ

だが、どれくらいか、あとは何が必要か

それを確かめるのは今ではない。


今は里に行くこと。

帰るまでが遠足。油断してられない。


そして、ようやく


──山頂に到着した。


見たこともない景色が広がっていた。

2人は思わず口を開けてしまう。


セカンドビッグバンの影響など

受けてないようにも見えてしまう程の景色だった。


ゼラは触手に座り

頬杖をついて、2人に振り返り


「やっと着いたぁ…だるすぎぃ…ホント…

アンタら見える?

ほらあそこ〜…あれが里だよ〜」


ポカーンとしていた2人はハッとし

ゼラが指す触手の先に目を向けた。


──里があった。



─おイおィ、やっと、わたシの出番

あれ、ぼクの話し方変わってる?



最後まで読んでいただきありがとうございました!


ダストも強そうですねぇ

何したんですかね?


ブクマ等はお任せします!

ゆるく楽しんでくれれば、それで!


ここ書いてる時、目が痛かったです。

瞬きはしまくり。

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