1話:異文化交流は当たり前
※こちらの内容から第5部になります。
よかったら1〜4部も読んでみてください
里へ行くため、ゼラの最終試練を
無事突破し、行く資格を得た気絶中の2人。
それを横目に話をする里の住人たち。
「見事に起きないね!あはは!」
「ゼラ姉さんのアレは
相当キツかったと思うし、仕方ないわ」
「お腹減った〜…ご飯持ってきてないんだっけ〜?」
「ここで休む予定でもなかったし
何も無いのよね、どうする?」
「まだ外出れないしな〜」
(チラ…)
ダストとカリスはアピールする。
「見なくてもいいよ…
もうお腹減ってだめ〜…待ってて〜……」
ゼラは触手を使い体起こし『歩いて』
そのまま移動し外へ出た。
ペタ…ペタ……ペタ……
ゼラは常に裸足、靴は履かない。
本来の効果ではない試練用とはいえ、
実は…もう1つ。
瑠璃毒葬が『終了後に発動』する
ゼラにとって最低最悪、
知られるのも恥ずかしい厄介な制約がある。
『使用後、触手は使えるが
丸一日は歩かなきゃならない。』
だから『歩いて』吹雪の中へ行く。
そして、ゼラが恥ずかしさを消すための
勝手に作ったマイ制約は
『フードを深く被って、できるだけ
顔を見られないようにする』だ。
これは全く関係ない。
個人が本気で勝手に考えたもの。
ゼラにはそれほど嫌なのだ。
ダストとカリスは知っているが
そこは何も言わない。
「(…雪山バージョンで
アレを作って食べればあっという間ぁ〜)」
ゼラの顔はニヤニヤしていた。
「な、なんか笑ってた?
でもさ〜、よく平気だよなぁ…ゼラ姉…」
「ホントね…頼もしいけどね…あと…
笑ってたわね…まさか……」
そんな会話から少しして
やってくるあのうるさく元気な声。
ある意味でオーバーファクターかと
ツッコミたくなるくらい。
「ふっかーつ!お腹減ったー!
体いたーーーーい!」
オーバーファクター(仮)のような
大声を出して飛び起きたカナタ。
「うわぁ!?びっくりした!」
「え、ええ、びっくりしたわ…
カナタちゃんもう平気なの?」
「え、う〜ん、なんか痛い?んだけど
平気!なんかね……平気!」
「「(説明になってない……)」」
耳に入った聞きなれたうるさい声に
シオンも目覚めた。
「ふぁ〜…おは……いっったーーーい!!
痛い!!体が…ぁが……ぁがが…
ぜ……全部…いったーーーい!」
「あらあら、こちらもこちらで、ふふ」
「あー、反動的なやつ?
そりゃそうなるよ、あの中で
強引だったもんねやり方、あはは!」
「仕方ないわね、今の2人の
限界を超えたわけだもの。でもそれは
そのうち…いや、すぐ治るわよ……」
シオンもカナタも
怪しい言い方をするダストに首を傾げるが、
とにかく元気にはなっていた。
「いててて…あれ……?」
シオンはまるでロボットかのように
手を動かし体を触った。
ここで初めて気づく──『尻尾』だ。
森にいた時に、深化した部位。
あの時は目的を達成するために集中し
痛みも気にしなかった。
その後、ここに来るまで
体も触ってないし、違和感を
感じてなかったから気づかなかった。
「え…なに…え?」
「あれー?シオン、なにそれ?
そんなのそこになかったよね?」
「うん、なかった…よね?
い、いつ深化したの……?」
「あら?シオンちゃんのその尻尾
最初からあったと思ったから
何も言わなかったけど、違うのね?
いつ深化しちゃった?」
「私にも…いつか分からない…」
シオンはチラッと目に映ったカナタの
青黒く深化した指に気づき
カナタの指を見る。
「カナタもそれ……いつ…?」
「うわ、ほんとだ…違う!…なんで?!
でもまぁいいよ!ここだけみたいだし!
それよりお腹減った!」
少しなら気にしない
カナタは相変わらずだった。
そんなことより空腹の方が問題だった。
シオンはゼラがいないことに気づいた。
「あれ?ゼラ?…は?」
「食べ物を取りに行ったわ、そろそろ
帰ってくるんじゃないからしら」
「…え?外はまだあんなにすごいのに!?」
「ゼラ姉は平気なんだよ!」
「寒さにも…(もぐもぐ)……強いのか(もぐもぐ)」
カナタは自分たちの荷物から
乾パンを取り、リスのごとく口に貯めていた。
「ちょっとー!いつの間にー!」
「そういえば、シオンちゃんそれは?
ずっと気になってたんだけど」
「え、あ、これ?これは─」
リュックのことや
その時の出来事などを簡単に話した。
「へぇー!それすごくいいね!!
いっぱい物が入るなんて!
あたしもほしー!」
「それに、なんかちょっとのキラキラが綺麗ね」
「あの…食べ物取りに行ってるけど
この缶詰…食べる?」
「か、かんづめ?知らない!何それ!
食べたい!食べてみたい!初めて!」
「…それ食べ物なの?えっと…かんづめ?」
「うん、美味しいよ、はいどうぞ」
──カチン、カチン
ダストとカリスは缶詰を知らない。
というより忘れている。
当然、開け方も分からない。
唯一、動くプルタブを見つけ
開けようとするが、全然開かない。
「あ、え!?なにこれ…!あげたら戻る!
どうやって食べるの!?」
「………私でも分からないわ
これ自体が食べ物ではないのね…?」
「あ、これはこう…して…(パカッ)…どう!」
「「……おぉ〜………んぉ!??」」
「シオン見て!ダスト達、変な顔ー!
あはは!おもしろーい!」
カナタは脚をバタバタさせて笑っている
その横でシオンは不思議に思った。
ダストは静因子のはず。でもこの
食べ物のことを全く知らない。
自分と歩いてきた道が違うから知らないのか
深化の代償として払われたのか。
それは不明。
「(今気にすることじゃないか)」
「カナタ、なんだっけ?顔が……ぷっ
どうしたの?その顔〜」
ダストとカリスはカナタの言う通り
これ食べれるの?って顔をしている。
匂いは美味そうなのはダスト達もわかる。
…けど、色と見た目が相反しすぎている。
シオンは似たようなことあったなぁと
心で思うだけにして、食べて見せた。
「(もぐもぐ)…ほら、食べれるよ?(もぐもぐ)」
「見てみて!シオン!
2人が困った顔してるぅー!あはは!」
カナタはもう面白くてしょうがない。
「もう!カナタちゃん!笑わないで!」
「そ、そうだよ!だってこれだぞ?!」
ダストとカリスは
意を決して、恐る恐る口に運ぶ。
反応は180度違うものだった。
「「……っ!お、おいしいー!!!」」
「なんだこれ!美味いじゃん!
見た目はホント汚いのに美味い!
ねぇ!もう1つ!もう1つ食べたい!」
「初めて食べたけど、ホント美味しい…
見た目は汚いけど……。
んッ…んッ…!わ、私ももう1つ…」
「え、この液体は?!
こっちが美味いんだから
これも美味いに決まってるでしょ?
……んぁ〜…(ゴク…ゴク……)」
「あ!いや!それ……は…って遅かった…」
「ぁがッ!げほ……うぇ〜…!!なにこれ!
飲めなくない!けど、喉が…の、喉が……
み、水ぅ〜!……あ゙あ゙……!」
「はい、水!それは口に入れても
平気な液体だけど、飲むと
喉が…そうなるの……あはは…
だから、飲まない方がって最初に
言えばよかったね…はは…」
「私は(もぐもぐ)…
飲まなかったよ(もぐもぐ)…あはは!
カリス、自分で水飲めばいいじゃーん!」
「『あたしの水』は飲むとかはできないの!
それと!もう笑うなよ!!」
カリスの水は操ったり、何かしたり
使い方自体はあるが、それを
『飲み物』として口にすることはできない。
カナタは未だに
笑いながらも食べている。
和やかな雰囲気の声を
洞穴に近づいていたゼラは耳にしていた。
「あれぇ…起きたのかぁ…なんか…
楽しそう…?お〜い、お待たせぇ〜
って…何か食べてるのぉ?」
「あら、おかえりゼラ姉さん、あのね─」
ダストは諸々説明した。
カナタとし シオンには気づかれないように
ササササッ!と移動していた。
恥ずかしい……!とにかくこの一点に尽きる。
そして、何食わぬ顔で
触手に座ってる風にしゃがみ
ゼラも鯖缶を口にする。
「うわぁ……きったなぁ〜…
でも匂いはいい〜…
でも、きったなぁ〜…ぁ〜ん……(もぐもぐ)」
ゼラの顔は別に何も変わらなかった。
美味しいともなんとも言わなかった。
ただ、その触手は止まらなかった。
無言で鯖缶に手を…いや、触手を伸ばし
口に運んでいる。
「あはは!見てよシオン!
ゼラが私みたいに沢山食べてるー!
さっきの怖いのと全然違う!」
「…(もぐもぐ)……(もぐもぐ)」
「ゼラ姉も気に入った!?美味いよね!?
ねぇ!ゼラ姉もこれ飲んでみてよ!」
「ヤダ」
「なんでだよー…!!!
ゼラ姉なら平気そうじゃん!」
「邪魔しないで〜…(もぐもぐ)」
「珍しいわね、そんな夢中になるの」
リュックに詰め込んでいた
食料たちはみんなで食べたので売り切れ。
全部食べてしまった。
「あ〜…カナタ?なくなっちゃったね…?」
「や、やってしまった……」
「じゃあ次、私がとってきたやつと
アンタらにはこれぇ〜」
ドンッと目の前に出されたのは
ダストとカリスにはそれぞれの好きな物
シオンとカナタの目の前には
見た目も匂いも鯖缶の1000倍は
ゲテモノと呼んでいいものが出された。
「ね、姉さん…それってまさか……」
「うぅ…!久しぶりに見た……」
「だってこれがいちばん早いじゃ〜ん」
「「……(な、なにこれぇ〜!?!?)」」
「これは〜…私特製の
『超・超効率回復ご飯スペシャル
雪山で取れる食材バージョン…!』だよ〜」
「これを食べるとねぇ〜?回復するまで
だいたい、30分くらいで完治するの」
「へ、へぇ〜……!そ、そうなんだ…!
全然分かんないけど……
…(た、食べたくなさすぎる!)」
「さ、さすがの私でもちょっと…コレは……」
ゼラは優しい顔をしていた。
そして、触手を使い、そのご飯を
問答無用で2人の口に容赦なくぶち込んだ。
「こうしないと
食べないのもわかってたんだぁ〜
は〜い、どうぞ〜…」
「「……んん!?!!?……んぐっ!?」」
口から出すことを許さないように
触手はそのまま口を塞いでいる。
その様子はただの……拷問だ。
「あれは…かわいそう……うぅっ…!」
「私達はもう
食べることないからいいけど…」
「ダストもカリスもお腹まだ空いてるでしょ〜
まだあるから食べた方がいいよ〜…?」
「「だ、大丈夫です!お姉様!!」」
「そう?遠慮しなくていいのにぃ」
「「(遠慮じゃないよ、姉さん……)」」
洞穴の中はずっと和んでいた。
先程までの殺伐とした雰囲気はどこへ…。
気づけば、いつの間にか
外も吹雪は止み、晴れていた。
シオンとカナタは再度
ある意味で気絶していた。
「そんな不味くないのになぁ…(もぐもぐ)」
─異文化の学びはタメになる
最後まで読んでいただきありがとうございました!
第5部がいよいよスタートしました!
実はですが、浮かんだ文字を並べて
勢いに任せて書いたこの作品
1〜5部まで1週間位で書き終わってます。
なんか楽しくてつらつら書いてましたね…
ブクマ等はお任せします。
ゆるく楽しんでいただければ、それで!
第5部もよろしくお願いします!




