4話:窮鼠猫を噛むのは当たり前
※こちらは4部になります。
よかったら1〜3部も読んでみてください
ダストはシオンに静因子のやり方で
カリスはカナタに動因子のやり方で
それぞれ、完全循環を会得した二人。
これで『里』に一歩近づいた。
しかし──《最後の壁》が立ちはだかる。
「ふぁ〜…二人とも覚えた〜?
時間かかったね、早い方だけど。最後は私から
アンタらにやってもらうことがある」
ゼラは触手を操って体を起こし
そのまま触手の上に座り頬杖をつく。
話し方は変わっている。
「いい?もう一度言うけど
連れていくかどうかは私が決める。
私にとっては任務なの。」
「うん…」
「わかった…」
カナタとシオンはまだ何もされてない。
ただ、話をされてるだけなのに
体が硬直してしまっているのがわかる。
それほど、目の前にいるゼラは圧倒的だった。
「私はダスト達より甘くないし、しない。
覚えたことを使わないと無理。それでもやる?」
「「やる!」」
2人の返事を聞き、ゼラは説明を続けた。
「やるのかぁ…めんどうだなぁ…でも
行きたいんだよね…仕方ないか。
アンタらオーバーファクターはわかる?」
「え、クローバがやってたやつ?かな?」
「うん、クローバさんのやつだと思う…」
「ふーん。どっかで見たことはあるんだ。
じゃあ今から私のオーバーファクターを発動する。
けど、本来の効果ではないからそこは安心して。
だけど、殺しにいくのはホント。
アンタらはその中で、私の所まで歩いて
私に触れたら連れていく。本当に『触るだけ』
ね?かんた〜ん」
「(うわぁ…簡単とか言ってるよ?ダスト姉)」
「(悪気ないから余計タチ悪いわね)」
小声で話すダスト達。
カナタとシオンはゼラの言葉が
冗談ではないことはすぐに分かった。
オーバーファクターが特殊に変更され、
安心してと言われても
油断すれば生きてるかさえ分からない。
けれど、里に行くため、戦う覚悟を決める。
「あそこに行くために…
私とカナタは完全循環を覚えたんだ…」
「うん!ゼラに負けない…!」
「「絶対触ってやる……!!!」」
「大した覚悟だね…。ダスト〜鱗粉は出しといて〜
それじゃ、始めよっか。」
「わかったわ」
ダストはカナタとシオンの周りに
再度、鱗粉を漂わせる。
ゼラは少し楽しそう。
始めようかのセリフと同時に
『両手で頬杖をついた』。
そのまま、目を閉じる。カナタ達は構える。
ゼラは──目を開いた。
カナタ達の顔は引きつり、ゾッとした。
ゼラの目がさっきまでの『人の目』ではなかった。
光が消え、生気を失っていた。
ゼラの目は、言葉通り……
完全に『死んでいた』。
だが、虹彩のフチはヒョウモンダコ特有の
『瑠璃色のリング』が現れており、光っている。
さらに、そのリングの内側をよく見れば
細い無数の触手がうねりながら、
瞳孔に向かい伸びている。
中央に届きはしないものの、常に動いている。
ドロップとは違う気味の悪さ
恐怖の具現化そのものと言ってもいい。
しかし、その中に美しさも感じる。
凄まじい目。
「な……なんなの……あの目…」
「すごく……気持ちわるい……」
「どうしたの?ねぇ『戦うんだよね?』」
「なんでまた聞くの!言ったじゃん!戦うよ!」
「うん、やるよ…!」
「なんで…………?それが『聞きたかった』んだよ」
ゼラを含め、3人を取り囲むように
足元に大きな瑠璃色のリングが現れた。
「え、次はなに?!うわ!地面が!」
「それに……なんか…光ってる…?」
ゼラの顔は動かない。そのまま話しだす。
「私に『触るまで』ここから出られない
そして、この土俵でしか『生きられない』。
怖くて無理矢理出たりしたら本当に死ぬよ。私もそう。
土俵に入れば最後、私もこの中でしか生きれない。」
「……え?『私も』って…何言ってんの?ゼラ」
「ゼラも死ぬ?え?おかしい……よね?」
「言葉が通じるか分からないけど
それが、私のオーバーファクターにある
『制約』のうちの1つなの。
……さぁ…ここまでこれるかな…?」
ゼラは両手で頬杖をついたまま動かない。
『死んでいる目』でただ2人を見つめている。
その目は笑っているようにも見える。
見られている『だけ』なのに、2人の全身に
感じたことの無い悪寒が走る。
「……っ…!んぐっ……!」
「こ、怖い…あ、あ、足が……」
足が地面から離れず、一歩……たかが…その一歩が
──出ない。
不自然に体はガタガタ震え出している。
頭では『歩いて進みたい』と思っているのに
直感……じゃない、本能が狂ったように
『やめろ』と警告している。
目のリングと土俵はゼラの心臓の鼓動と同じように
脈を打ち、光り、2人を笑う。
進めない2人に、頭痛がやってくる。
「あ、頭が痛い…!動けない!頭が…痛い!」
「だ、ダメ……ほ、ほん、ホントに
こ、ころさ……殺される…」
ゼラのオーバーファクター
──『瑠璃毒葬』
だが、今発動しているのは
ゼラが特殊に変えてるため本来の効果は全くない。
今、唯一あるのは制約のみ。
それ以外は本当にただの土俵。
けれど、ゼラが『殺しにいく』と言った通り
純粋な『殺意の質量』だけで2人を苦しめている。
「なんだ。やっぱりその程度なんじゃん。
ダストの鱗粉も赤になったりならなかったり
あれ〜?覚えたんだよねぇ?」
ゼラは顔を右へ…左へ……
音楽に乗っているかのように揺れている。
その間にも、ダストの鱗粉は、
赤く光ったかと思えば、赤くならなかったりと
乱れているのがよくわかる。
完全循環がゼラの『圧だけ』で壊されかけている。
「…し、死ぬ……シオン…死んじゃう…」
「あ、足を出そうと…すれば…赤くなる……」
「でも…赤くしないようにすると…と、止まる…
…1人じゃ……無理だよコレ…頭痛い…!」
シオンはカナタその言葉で一か八かに出る。
かち割れそうな頭の痛みや恐怖と戦いながらも
シオンはカナタへ必死に伝える。
「それ…だよ!一人じゃ無理なんだよ…!」
「え…?うん?……無理…だね……?」
「カナタ…私の前歩いて…!私は…背中から…!
手をこうして…当て…て……!
さっきの…すごい速いやつ……やって!」
「え、え……?!」
「とにかく…!思いっ…きり!歩いて…!」
「わ、わかっ……た…!!」
カナタが前、後ろをシオン
縦に並び、カナタは会得した時にやった
『内側での爆発』を『歩く』で行う。
シオンは両手をカナタの背中に当てる。
2人は縦に合体した。合体したことにより
鱗粉もまた1つの大きな塊となる。
鱗粉は──赤く光らない。
後ろのシオンが、自分の力をカナタへ流し
完全循環の乱れを中和し制御している。
これは、2人ができる咄嗟の打開策だった。
咄嗟の合体は見事に機能した。
おかげで、確実に1歩ずつ前に進む2人。
目の前には笑みを浮かべて、じっと見ているゼラ。
だが、ゼラに近づけば近づくほど
その『殺意の質量』は比例して上がっている。
「ダスト姉…相変わらずこの丸い模様
青いヤツ…気味悪いね……
あたし達はあの中に…いないのに……
なんで少し震えるんだろうね…」
「な、なんでかしらね…慣れないわ…」
顔の前に手を交差させ、完全循環を
『合体』で維持して、抗って、進んでいく。
「足!頭!全部いったーい!!
けど…あと……三歩…!」
「カナ……タ!わ、わた…私は
ちゃんとい…い、いるから!…進んで!」
「にぃ……!!(足が…体が…ホントに痛い……)」
「(もう少しなのに、私の…た、体力が……もう…
お願い…!ここだけでいいから……もって!)」
「いーちぃ…っ!!!」
そして──。
「「タッチぃーーー!!!」」
瞬間、瑠璃色のリングはすぐさま消え
元の洞穴の地面が現れた。
ゼラの目も元に戻っている。
「はい、おつかれ〜、そして…おやすみぃ」
ゼラに触った瞬間に頭痛や震え
感じていたものは全て消え、2人は気絶した。
体の部位に痛みは走らなかった。
理由は、シオンの『静因子』
静因子は『生存特化』
「生きるため治す」ということは優先事項の1つ。
そして、シオンの強化自然治癒力が
自分とカナタへ作用し、痛みを遮断した。
だが、痛みはなくても無傷ではない。深化した。
2人は『今』の限界以上の力を出したことは事実。
それぞれ、記憶を失う。
カナタは、右手親指が青黒く変化し、
イツキの事を忘れる。
シオンのおかげで消滅幅を抑えられた結果だ。
シオンは……。
カナタ言葉で思いつき、一か八かに出た行動が
合格には致し方ないものだったとはいえ
自分の完全循環を維持しつつ、
カナタには力を流し、中和をするという
『今』のシオンには負荷がデカすぎる事を賭けで行った。
結果として、賭けには勝った。それはよかった。
2人で合格をもぎ取ったんだから。
だが──
シオンの右頬に、2本目と3本目の髭が生えた。
消えた記憶は……大きかった…。
一人でトドメをさせなかったドロップが
『カナタに似ていたこと』と
『カナタになにかあれば自分が止めなきゃと誓い
カナタがカナタでいれるような方法を探す』
という記憶が──選ばれた。
ダストとカリスは愚痴っていた。
「見てるこっちまで死ぬと思った!
ゼラ姉!目!怖すぎ!気持ち悪い!」
「こっちまで震えたわよ!
ある意味無差別なのやめて…」
「えぇ〜?しょ〜がないよ〜…
連れていくかいかないかだよ〜?
甘くなんか出来ないって〜……
それよりも〜、シオンとカナタは
しばらく起きないよ〜」
「仕方ないんじゃない?起きれたらすごい!」
「まだ外に出れそうもないし、
ゆっくり寝かせましょうか」
二人は無事に合格をもぎ取った。
─窮鼠は猫に触った。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
第4部はこれにて終了となります。
「頭に浮かんだ文字を並べただけのお話」として
書いてきたこの作品ですが、
勢いで並べまくった結果、次から始まる
第5部が最終章っぽいです!
カナタとシオンの最後はどうなるか
里で待っているのは…。
ブクマ等はお任せします。
ゆるく楽しんでもらえたら、それで!
甘い卵焼きは好きじゃないです




