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物語(仮)  作者: りくど
第3部
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15/30

4話:森が綺麗は当たり前

※こちらは3部になります

よかったら1部と2部も読んでみてください。

─東:カナタ


カナタはドロップ化した10体の

カゲロウを目で捉え確認していた。


しかし、どうしたらいいか分からない。


カナタは

全力を出す《面の攻撃》しか知らない。

制御をする《点の攻撃》など知らない。


「いつも通りやっちゃうとダメ…か

でも…あの、クローバ?が言ってたのは

嘘かも!何体か普通に倒して

ホントかどうかやってみよう!」



──やってしまった。本当に木っ端微塵。


残りのドロップカゲロウ─3体。


※※※


《カゲロウ》


カゲロウという昆虫は

命が数時間で尽きてしまい

皮膚がとにかく薄く、指で触れたり

風でも潰れてしまったりする。


しかし、セカンドビッグバンの影響で

そんな当たり前は終わり

新たに始まっている。


この世界のカゲロウは

皮膚耐久がおかしくなっている

体長も大きく、比例して羽も大きい。


だが、変わってないところもある。

それは体の中身。

内蔵等はなく、ほぼ空気のままだ。


※※※


「ムキになっちゃった…もう!ホントじゃん!

どうしよう…あと3体しかいない……」


残り3体のカゲロウ。


カナタは本気で悩んでいた。


「えー……ホントにどうしたらいいの?

このままじゃ持って帰れないよ…」


その場を行ったり来たりして考える。

「んー」と言いながら、地面に転がる

小石を拾っては投げ……拾っては投げ。


「もうー!クローバ!

やり方教えてくれてもいいじゃん!

わかんなーい!」


─ビュン


愚痴とイライラを再度拾った小石に乗せ

投げてしまった、カゲロウに。

ただのヤケクソで八つ当たり……。



しかしそれは、カゲロウを持ち帰る

最大の答えになった。


「あ………うわぁー!

間違っちゃったーーー!……って…あれ?」


カゲロウはその小石が当たり

確かに死んでしまった。あと2体。


カナタが不思議に思ったのは、そのカゲロウが

少しだけ体が崩れて倒れてる姿。


カナタは閃いた。


「もしかして?いつもみたいに叩いたりして

力いっぱいで倒すのがダメだから

この小さくて軽いのでやれば…」


もう一つ小石を拾い

力を乗せる、投げる、当たる。


カゲロウは先程より形を残し死ぬ。

だが、クローバの条件達成にはならない。


あと1体。


「あ〜……さっきのよりいいけど

アレじゃだめだ…でも次で最後…

もう少し…細いのを速く投げればいいかな?」


カナタの視線は辺りを探し

自分の羽のコートへたどり着く。

1枚取り、その形を見て確信する。


「コレ…コレだよ!絶対いける!

よーく狙って……せー……のっ!!」


羽の持ち手はペンのように持ち、

ピッチャーのように腕を振り抜く。


力も速さも小石の時より増している。


ほぼ無音で飛び、カゲロウの頭を貫通した。


倒れ込むそのカゲロウはその形を

完璧に保ったままだった。


「や、やったー!できたー!形があのまま!

危なかったぁ………よし、持って帰るぞ!

シオンは…できたかな……?」


カナタは見事、点の攻撃で

ドロップカゲロウの形を崩さず回収した。


シオンの心配をしながら来た道を戻る。



─西側:シオン


シオンもまずはクローバの言った

小さな池を確認していた。


「クローバさんが守ってるのはあれだね。

……って……え?」


小さな池にドロップが数体いる。

しかし、驚いたのはそこじゃない。


そのドロップ達は

池の周りを──《泳いでいる》。


さも当たり前かのように泳いでいる。

シオンが見て驚いたドロップ達は

まず絶対こんなとこにいない『魚型のドロップ』


魚が泳ぐのは水の中だ。

生きるためにも水から出ない。


目の前の魚は《空中》にいる。異常事態。


セカンドビッグバンは

その池にいたであろう魚にも

ちゃんと影響を与えていた。


魚ドロップは、池の周りをぐるぐると

ずっと回り、水にもどる気配すらない。


「な、なんで…?」


シオンは理解しようと考えたが

そんなことを気にしてる場合でもなく

すぐに目的を果たすために動き出す。


「いやいや…今はそっちじゃない!

水を持って帰らないと。とはいえ……

あれだけ近くだとバレちゃうな、んー」


考えてたシオンは

クローバの言葉を思い出した。


西側にはトラップがあると。


「クローバさんはトラップとかあるって…

どれのことだろう?」


辺りを見渡すと、他より明らかに

索敵しているように変に動いてる枝があった。


枝の先に細かい枝が丸くまとまり

先端は口をすぼめたような形をして

小さな穴が空いていた。


「…あれだけ違うように見えるし、あれかな?

確かめてみよう……ほいっ」


地面に落ちてる小石を当てた。正解だった。


小石が当たった枝の先端は反応した。

枝は近くにいたドロップを攻撃し始め

次々と落としていく。


そして、その隙に近寄り瓶に水を詰める。


「よし、今のうちに…………取れた!戻ろう!」


シオンが水を手に入れと同時に

魚ドロップ達は全滅した。

バカにできない威力のトラップだ。


「…うわ…すごいなぁ

ドロップを普通に倒しちゃった……」


感心していたその時だ。


シオンの耳がピクピクと動く。

ドロップとは違う

何かが近寄ってくる音を捉えた。


音の正体は、シオンを戻さまいと

地面から突き出してきた太い根っこ。


池自体に何かあった場合の

連動式トラップ根っこが発動した。


根っこはシオンの進行方向を塞ぐ。


「…なっ…!塞がれた!

こっちは行けない…なら迂回して……」


回り込もうとするもまた現れ、塞ぐ。

どこに動いても、塞がれて進めない。

体力がなくなっていく。


「……はぁ…はぁ…

これを避けていけって事だね。」


うねる根っこを前に考えた。


シオンは基礎体力が多くない。

だが、この根っこを素早く避け

戻らなければならない。


根っこに踊らされて、体力を奪われ

時間をかければ《水が腐る》


シオンの体が震えはじめる。

瓶を持つ手はもっと震えている。


「ど、どうしたら…普通に帰ろうとすれば

そこに出てきて行けなくなる…。

回り込んでもそこに出てくる……。」


自分の体力の無さをカバーしつつ

クローバのところへ戻る方法…


「 …はぁ……思いつかない

せめて音が分かればいいのに」


シオンは閃いた。


「…!音が…分かれば…?」


シオンは一番最初を除いて

根っこの音を一度も聞いていない。

《ただ、帰ろうとした》からだ。


時間は進み続ける。迷ってる暇なんてない。


「カナタだって、きっと頑張ってる!

成功させて帰ってくる。

弱音を吐いてる場合じゃない…!」


この時のシオンは無意識だった。

無意識に因子の力を使った。


聞きたい音だけを拾うように

まわりの音の一切を遮断した。

根っこの音だけを拾うように耳に集中した。


同時に痛みが走った。

その痛みは耳ではなく、腰だった。


だが、優先は目的を果たすこと。

故に、痛みなど気にしなかった。


シオンは走り出す。

根っこは道を塞ごうと音を出しやってくる。


その音を聞いて、避けて、進んだ。


「よっ!…次こっち!……ほい!」


残り時間──13分。


シオンは戻ってきた。

ちょうどカナタも来て、合流した。


「やったー!戻ってこれたー!

あ、瓶!よし、まだ綺麗なまま!」


「ゴール!ついたー!あ、シオン!

そっちも終わったんだね!」


「カナター!ちゃんと取ってきたよ!

カナタもできたんだね!」


「…ほら…すごく危なかったけど……ははは…」


「うわ…なに……き、気持ちわるっ…」


お互いに褒めたたえ

喜びと気持ち悪さを共有した。


試練に行く前の先に帰るという宣言は

条件の達成に集中していたため忘れていた。


クローバはその片目を笑わせていた。


「(自分で考えてできたじゃないか)」


「よくやった、お前さんたち。

約束通り、少し教え──」


言葉を遮り、クローバに聞いた。


「ね、ねぇちょっと!

クローバ、こいつどーすんの?」


「そうだよ!クローバさん!この水は?」


「ん?ああ、そんなもん

アタシは別にいらないよ?捨てちまいな!」


「「はぁー?!頑張ったのにぃー?!?」」


「それはね?動けないアタシが

あんたたちを使って、楽しんだだけさ!

すまないね、ひひひっ

それに、うさぎの娘、瓶をみな。」


「え?」


シオンは瓶を見た。1時間経っていた。

池の水は『腐っていた』。


「腐ってるだろ?ここへ着いて

話してる間に腐っちまったのさ。

でも、腐る前にここへ

戻ってきてるから安心しな。

さて、じゃああんたたちに

アタシが知ってることを教えよう」


「私も捨てる〜……やだ…もう持ちたくない……

気持ち悪い…いらない…うぇ」


カナタもカゲロウを捨てた。


クローバは改めて、自分が知っていることを

2人に教えてくれた。


※※※


─《深化》

因子の力を制御せず使えば

力を使った場所から基本的には深化する。


けれど、例外がある。それは、

深化対象の部位の深化が終わってる場合

他部位が対象となり、痛みが走る。


カナタが口にしていた《進む》正体。

カナタは進んでいるように見えていたため

進むと言っていただけ。


─《代償》

深化する際の代償は記憶で厄介なもの。


『記憶の量』『いつの記憶』『どこの記憶』

これらをどう選び

どれくらい代償とするのか


これは『脳が選定』する。


唯一、分かってることは

些細な記憶であっても

『静因子』『動因子』関係なく消える。


抗う術が無いわけではない。それが循環。

循環が出来れば力を出しても

記憶の消滅幅を抑えられる。


ただし、限界以上の力を使えば

その限りでは無い。


─《循環》

因子の力を血液に乗せ巡らせること。


これは体を巡るイメージさえ出来れば、

簡単にできる基本技術。


そのイメージが難しい場合、

身につけている何かを起点にして

そこから巡るイメージを持てば

比較的やりやすくなる。


※※※


「私の脚と手首は

深化しちゃって変わっちゃったんだね…

でもそれを止めるのが、えっと…

じ、しゅ…循環?なんだね?」


「……き、記憶が…必要……

(じゃあ、私も多少だけど、カナタが

覚えてないのは…)」


「もう少し、話を続けるがいいかい?

やめておくかい?」


「「やめない」」


2人は既に真実を叩きつけられた

頭がいっぱいだ。だが、即答した。


それを聞き、クローバは続けた。


「それじゃ続けるよ。

因子には大きく分けて2つある。

ウサギの娘は《静因子》

カラスの娘は《動因子》だ。

これの違いも教えておく。」


※※※


─《静因子》

生存特化の因子カテゴリ。


シオンが缶詰のことや、

旧文明の概念等々を何となくでも

覚えていたのは

『これは生きるために必要だ』という

静因子の生存に結びついて

脳が判断したからだ。


戦闘力はそこまで高くない。

だが、稀に違うのもいるらしい。


シオンもカナタ同様、独りの時から

因子の力は使っていた。

結果、記憶が消え、脚と耳は変わった。


自然治癒力が高まってるのも

静因子が『生きるために治すのは必要だ』と

判断して強化したからだ。


─《動因子》

戦闘特化の因子カテゴリ。


生きるためには破壊する

これが脳の大半を占めている。


そして、代償となる記憶は

脳が選定するとはいえ、静因子より多い。


カナタはわかりやすい。


独りの時から生きるために力を

無意識に使い続け、学生時代、食料、

旧文明の概念などなど

すでに忘れた多さの結果が

脚と手首に現れている。


街のマスコットを見て、少しだけ

意識が飛んだのは、カナタの脳が

『これは全く必要ないものだ』と

判断し消去していたから。


クローバの言葉を理解できてるのは

動因子でも『これは必要だからとっておけ』と

脳が判断したからだ。


静因子に比べると、戦闘能力は高い。

その代わり、動因子は自然治癒力を

受け付けず、そのままの治癒力。

治すために必要なはずだが、脳が拒否する。


※※※


「ついでに教えるよ、カラスの娘。

ずっと言ってるが、アンタは

カラス因子に適合したんだ。

ここに来るまで、遠くが見えたり

色で判断することが多くなかったかい?

それは、体内の変化でカラスの特性も

取り込んだのさ。」


「そうなんだ…。カラスの事は

よく分からないけど、飛んだりできるから

何かそういうものなんだね…」


「あぁ、そうさ。鳥って言うんだ。

食べ物もなんでも食べようとする。

今のアンタはキラキラしてれば

食べ物だと思っちまう。」


「(カナタは…そういうことだったんだ…)」


「うん!そう!でもシオンのおかげで

食べないようになってるよ!」


「ひひひ、それは相棒に感謝しないとねぇ」


「ねぇ、それよりさ!クローバはなんで

そんなこと知ってるの?」


「うん、そうだよ、なんでそんなに?」


カナタは珍しく真っ当な質問をぶつけた。

シオンもその質問にカナタがした事が

驚いたが便乗する。


クローバは答えた。


※※※


─クローバはセンターの元研究員

イツキのノートにあった『もう一人』。

しかし、クローバはイツキを知らない。


─所長姉妹の相棒的存在

姉妹とはよく話し、多くの研究を共にした。

その中で、静因子と動因子、深化

循環、代償を発見し名前をつけた。


─クローバも誘われていた

だが、研究を優先し断った。

暫くはセンターで研究してたが限界が来た。

知り合いもいないからしれっと消えた。


─当時は普通に森だった。

彼女は森林浴が大好き。落ち着くから。

だが、ここは一度、枯れ木になり死んだ。


それでも、移動せず留まったのは

自分の因子の力で森を再現したかった。

もう一度……森林浴がしたかった。

死に場所も木に囲まれた場所がよかった。


─クローバの因子は『木』

運が良かったとしか言えない。

深化は木の成長スピードと同様に遅く

お陰で研究に時間を費やせた。


─枯れ木を森へ再生させた技術

これも姉妹達と見つけ名前をつけた。

それが《オーバーファクター》

クローバは自分を起点に因子の力を土に流し

無理やり森を再現し、維持し続けていた。


けれど、この技術はそう簡単に身につかない。

クローバはセンスも良かったのもあるが

たまたまだった。


ただ、クローバ自身、もう遅かった。

色々できるようになった時には

ほぼ樹木になってしまっていた。


そして───名前も忘れた。


※※※


クローバのこれまでを聞いて

2人は黙った。


クローバはそんな2人をみて


「なぁにくたばりそうな顔してんだい

アンタらが知りたいことは知れただろうに」


「そうだけど…」


「うん…」


「さぁ、早速循環をやってみな」


切り替えるのが難しすぎる。

まだ整理できてない。


「湖に行きたいんだろ?

そんなんじゃ、山で死んじまうよ」


「シオン…やろうよ」


「そうだね」


無理やり切り替え循環をはじめた。

さすがのカナタも元気で振る舞えない。

シオンも同様だ。


循環は基本技術、深化を抑える(すべ)

2人はセンスか器用か分からないが

すんなり覚えることができた。


「ほう…アンタら器用だね。驚いたよ。

それは体温調整にも使えるし

色々と応用できるし、これからもう少し

楽になるだろうさ」


「なんかじんわり暖かい?感じ?

なんかさっきまでと全然違うのがわかる」


「ん〜…因子と仲良くなった?みたい?」


「そう、そんな感じ?だよね」


「ありがとう、クローバ!」


「頑張って湖を目指すよ!

ありがとう…クローバさん!」


体の変化をしっかり感じた。

そして…クローバへ感謝する。


「ふん、約束を守っただけだ。それで?

湖に向かうのかい?あるか分からんのに」


「行くよ、分からないなら行ってみないと」


「カナタの言う通り。行ってみないと」


クローバは何も言わなかった。

そしてカナタを見た。


「カラスの娘、足だしな」


「え…うん、はい」


土から根っこが出てきて

カナタの両脚に触れ、何かを送り込んだ。


「おぉ……?おお〜…?」


「これでいい、どうだい、少し楽かい?」


「すごい!すごく軽い!楽ー!」


「アンタの脚にあった

まだ循環しきれてない滞りを流しただけだ。」


クローバに時間がやってきた。

そして、最後のアドバイスをする。


「……おや…そろそろ時間が来たね。

最後に教えておくことがある。」


「え、まだあんのー?!」


「いいから、聞こうよカナタ」


「技術のことじゃないよ。

ここを抜けたらある山のことだ。

こ…の世界にな……る前は普通の山だった

けれど…今は雪山になっち……まってる。

セカンドビッグ…バンの影響だ。

…………気をつけるんだ。」


「それでも、行かなきゃ。ね、カナタ」


「シオンもいるし大丈夫だよ!」


「ひひひ…そうかい……。

さぁ……さっさと行きな!

しみったれるのは嫌いなんだ」


「クローバさん、

色々教えてくれてありがとう!」


「今度また会いに来るからねー!」


二人は山を目指し歩き始めた。


クローバはその背中を見送り、少しして

深化が完了し──完全に樹木化した。


「……面白いやつらだった…ねぇ……。

アタシも…もうすこ……し

若けりゃ……(パキパキ…パキ)」


森はすぐに枯れ木の状態に戻らない。

それもまた木の成長スピードと同じで

戻るのもゆっくりだ。


その時までは……


───綺麗な森は広がったまま。

──森が綺麗は当たり前だ。

─シオンの腰には《尻尾》が生えていた。


そして、今回の深化の代償で


学生時代の記憶は全て──消えた。


最後まで読んでいただきありがとうございました!

早いですが、これで第3部完結です!

色々開示されたみたいですね……

いかがでしたでしょうか…?

※誤字脱字、文章の修正を行いましたが

内容が変わっていません。


第4部は「雪山編」になり

こちらも全4話構成となっています。

なお、明日の更新はありません。


作品全体ですが、

勢いとテンポを大事に書かせていただいてます。

また、ブクマ等はお任せします…!

ゆるく楽しんでいただければそれで!


炭酸ドクペか1番好き。



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