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物語(仮)  作者: りくど
第3部
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13/30

2話:文字が読める当たり前

※こちらは3部になります。

よかったら1部と2部も読んでみてください

「げほ、げほ…すご……げほ」


「…げほ……けむりがすごい!げほ!」


扉は勢いよく部屋の中へ飛び

そのまま音を立てて倒れ込む。

同時に、部屋の中に埃が舞い上がる。


放置されて長かったのがわかる。


埃の中から見えている部屋は

これまた異様な光景であった。


普通の部屋…とはとても言えない。

そこはまるで《小さな植物園》だ。


ツルや枝が壁、天井、床から突き出し

部屋の壁をつたい張り巡ってるのもある。


木…まではいかないが葉っぱも見えている。


──ありえない。


さっき外に見えたキラキラしたアレの

小さいバージョン。


「シオン、外のキラキラと同じだよここ」


「そうだね、大きくないけど…」


「……うるさいなぁ…誰だよ…。」


「「!!?!?」」


驚いた。


この建物には

カナタとシオンしかいないはず。

だから、扉を壊して入ったんだ。


それなのに声がした。


「だ、だれ!?どこにいるの!?」


「出てこい!」


構えながら、部屋の中を見渡し探す。


「出てこいって…目の前にいるじゃんか

僕はここだよここ、目の前の椅子にいる」


二人は正面を向いた。

だが、どう見ても誰もいない。


そういう形に枝がなっていてそう見えるが

2人はそれが喋ってるようには思えなかった。


「はぁ……わかってないみたいだな。

僕はもうほとんど動けないのに…

よいしょっと…」


目の前の『それ』が動き出した。

動いたと言っても椅子からは離れていない。

座ったまま、頭だけを動かした感じだ。


「これで…わかったか?…あれ?なんだ

適合者じゃないか、大学生?ぐらいか?

僕も何人かしか見たことないけど

まだいたんだな。」


「動いた……。いや、それより

あなたは誰?それに、て、てき…

なんとかって、なにそれ」


シオンは初めて聞く言葉に謎だった。

隣のカナタはもっとわかってない様子。


「ん?その反応と様子じゃ知らないのか

僕はどれくらい寝てたんだ?」


「まぁ、どうでもいい。

僕に時間が無いのは変わらないんだ。

もう少しで死ぬからさ。

最後の来館者ってことで、死ぬ前に

君たちの質問にわかる範囲で教えるよ。」


「ねー、さっきから何言ってんの?」


「死ぬとか時間ないとかなに?」


カナタとシオンは独り言なのか

語りかけなのか分からないその言葉に戸惑う。


しかし、男は続ける。


「ていうか、なんで扉ぶっ壊したの?

鍵であければよかったじゃん」


「……かぎ?食べ物?わかる?シオン」


「い、いや、知らない…かぎってなに…?」


「(…何も……分からないのか?

どう生きてきたんだ…?)」


「………。これは?わかるか?」


指のように操った枝で

ぶっ壊した扉の『所長室』を指した。


「え、それは黒い記号だよ」


「私は変な形ってことしかわかんない!」


「なぁ、うさぎの子。

君は静因子の方だと思うが

なんで分からないんだ?読めないのか?」


「な、何をまたわかんないこと言ってるの?」


シオンは本当に何も分からなかった。

だがそれは、お互い様だった。


「(おいおい…これじゃ話にならないぞ。

僕が何を喋ってもきっと理解できない。

埒が明かない、仕方ない…のか

これが僕の最後の役目なのか…)」


男は心で覚悟を決め、

真剣な顔になりシオンを見る。


「僕は見ての通り動けない。

すまないが、隣に来てくれ。」


「え、シオンだけー?」


「あぁ、それに今からすることは

うさぎの子にしか効果がないんだ

君にやるときっと拒絶反応で

体が進んじゃうと思う、それは嫌だろ?」


「ちぇ…でも進むのは嫌だな、わかったよ」


シオンは隣に立った。


「いいか?今からこの枝で君のおでこを触る。

触ってから数分の間、頭が痛くなる。

普通の頭痛より痛いけど耐えるんだ。

わかったか?」


「君、あ〜……っと

今よく見たが…それはカラスか。」


「なに?私の体のこと?」


「そうだ、カラスの子。

今から相棒の様子が変わる。

でも、僕は攻撃する訳じゃない。

だから心配するな、見守ってやれ。」


「え、う、うん…わかった…見てる」


シオンは自分がされることを理解したが

最大の疑問をぶつける。


「ま、待って…!ねぇ、それが

終わった後の私は…いつもの私なの?」


「あぁ、何も心配ない。

ドロップになるとかはない」


「ドロップを知ってるの!?」


「それはあとだ。さ、始めるぞ…」


指のように操った枝が額にくっつき

細く長く枝は広がっていく。

その様子はおでこに根を張ってるようだ。


そして、その細い枝を通して男は

シオンの中に液体とは違う何かを送る。


シオンもすぐに液体とは違う

変な感覚が流れて来ることがわかった。


言われた通り、数秒で痛みが来た。


「……ッ!!あ"ぁ"ぁ"…!

い、いだい!いだい!いだい!頭が!」


「シオン!おい!何した!?」


「静かにしろ。大丈夫だ。

さっき言ったろ、見守ってろって」


「……なにかあったら、許さないぞ」


カナタの顔は変わっていた。

ドロップを無惨に

殺したあの時と同じになっていた。


大丈夫だから見守れと言われていた。

だが、シオンの様子を見て

言われたことなど忘れ、守ろうとしたのだ。


それを見て男はすぐわかった。


「(こっちはやっぱり動因子だな。

にしても…だいぶ進んでるようだが。

まぁ、言動と足で察する。手首も黒いな。

動因子は仕方ないのか?クソ…調べたい)」


「いだい…いだいいだい……ッ!

あ、あだまが……あだまに…何か…!」


その場で地団駄や体を動かし

なんとか誤魔化そうとするシオン。


さっきより様子を変え

動くシオンを見たカナタは

男に襲いかかろうと動き出そうとした。


「お前!やっぱり何かしてるだろ!」


「(はぁ…こっちはこっちで埒が明かない)

もう少しだから、動かないでくれ」


男は、カナタの足下から

太い枝を出し足に絡め、動けなくした。


「な…!おい!離せ!クソ!!

なにこれ…!全然壊れない…!」


カナタは殴ったりハンマーで

叩いたりして、必死に壊そうとするも

ビクともしないその枝は想像以上に頑丈。


カナタの力でもどうにもならなかった。


「…さぁ、そろそろ終わるぞ」


その一言から少しして

シオンが落ち着きはじめた。


さっきまでの痛みが嘘のよう

いや、そもそも何も無かったと

言ってもいいぐらいケロッとしている。


「…あれ…もう全然痛くない。終わったの?」


「あぁ……終わり…だ。

そして…僕の……役目も…終わりだ。」


男は消え始めていた。

ゆっくりとおでこから枝を下げていく。


「え、ちょ、ちょっと!

何したか教えてくれないの!?」


「大丈夫…すぐにわかる…」


「え、どういうこと…?

ドロップのことも聞いてないよ!」


「そうだよ!勝手に消えるな!」


男は消えながらも、ざっくりと説明した。


「君に…僕の力を流して…因子の…

循環と少し君の力も借りて

脳…頭をいじらせてもらった……」


「え、あ、だから頭が痛かったんだ…」


男は続ける。


「…少しだけ……わかるようになってる…

今の僕ではこれが限界…だが、十分だろう

それと…そこにあるのを…見ておけ……。」


「ねぇ!全然わかんないよ!」


「そうだ……最後に…………

覚えておいてくれないか…僕の名前……

僕は……イツキ…。」


「ちょっと!」


「……じゃあね……………。」


二人は困惑しながらも

イツキを静かに見送った。


イツキの顔は幸せそうな顔をしていた。


カナタの足に絡まっていた枝も

その場にドサッと落ち動かせるようになった。


すぐにシオンを気にした。


「シオン、大丈夫?」


「うん、平気だよ。

でもホントに体は何も変わって…ないみたい

頭に何をして、何が変わったんだろう?」


「うーん、私から見てもシオンは普通だよ?」


「そうだよね?何が……」


シオンは首を傾げながら

ふと、隣のデスクに目を向けた。


そこには1冊のノートが置いてあった。

イツキが『見ておけ』と言い残したものだろう。


「……え」


シオンは全身に鳥肌が立った。


ノートに書かれている黒い線が、記号が

ハッキリと『言葉』として認識出来た。

意味もわかるようになっていた。


表紙に──《あの日からの記録》と書かれている。


「これ…分かる……

読める…なんで……?」


自分の異変に戸惑いながらも

自然と手がノートに伸び、開いた。


内容はこうだった。


※※※


─セカンドビッグバン

宇宙の彼方で起きたあの爆発の二回目

そんな大爆発、僕達なんかに

何かできることなんてないだろうが。


当然、地球への影響は予測された

パニックを防ぐためだとか言って

最期まで公表されなかった。

クソが、黙ってても起きたら

結局パニックは確実だろって。


─原因は、爆発後に降った《七色の雪》だ

恐らく地球全土に降った。


この雪を吸い込んだ瞬間に

誰もが、もう終わってたんだ。


雪は体を書き換えたんだ。

当時、皆の間で分かりやすく呼ぶのに

《因子選定》って言うようにしたな。

コイツ、その人の意志なんて関係なしに

勝手に体をガチャガチャしやがって

迷惑野郎だ


─当然、因子選定からその因子に適合した者と

適合しなかった者が現れた。


因子に適合した者は《適合者》

適合せず、そのふるいから落ちて変わり果てた者

みんな《ドロップ》と言うようになった。単純かよ。


─このセンターにいた人は

ほとんどがドロップになったちまった。


昨日まで笑い合っていた同僚が、

咆哮を上げて襲いかかってくる。

ここはもう、ただの地獄だ。


─ここで唯一、適合したのは

僕と所長姉妹ともう一人だけみたいだ。


僕が適合したのは《ナナフシ》

なんだよそれ、名前しか知らないよ。


所長姉妹の因子はよく分からない

ていうか、所長姉妹がよく分からないし

名前すら知らないよ、話す機会すらねぇ。


彼女たちは早くに見切りをつけてここを出て行った。

もう一人は、その後にいつの間にか居なくなった。


─姉妹が言ってた。

北西の森を抜け、山を越えた先にある《湖》

そこで適合者が暮らせる場所を作るって。


僕も誘われたが断った。

こんな時に話しかけんなよ。

僕は自分を使ってでも研究を続けるんだ。


どれくらい体が持つか分からないけど

ここに来た奴に、何か託せるように


─もう僕の体も限界が近いのがわかる

誰でもいい…来てくれ適合者……


※※※


静かな所長室にノートを閉じる

『パタン』という小さな音が響く。


シオンは少し表紙を見ながら止まっていた。


イツキへの感謝と困惑が頭で戦っている。


「おーい、シオン?平気?」


カナタは様子が少し違うシオンを見て

心配そうに顔を覗かせ声をかけた。

その声でシオンは我に返る。


「……え、あ、ごめん、平気だよ

それよりカナタ、目的ができたよ」


「キラキラの所は行かないってこと?」


「ううん、そこは行くよ。その後のことだよ」


「え!すごい、もう決めたんだ!

シオンが見てたそれに何かあったの?」


「うん、あの森…キラキラの場所を抜けると

山があるんだって。それでね、

その山を越えると湖があるんだって」


「うん!うん?わかんないけど、それで?」


シオンは一呼吸置いた。


「その……湖に、この建物にいた偉い人達が

向かっていて、そこで私達のような人が

暮らせる場所を作ってる……みたい」


「えー!すごいじゃん!私達だけじゃないんだ!

みず…うみ?は何か知らないけど

行こうよ!絶対行こう!」


喜ぶカナタの横でシオンは困った顔をした。


「私も行きたい……でもねカナタ。

本当にあるか分からないし、この偉い人達が

湖にたどり着けてないかもしれない。

そうだったら、暮らせる場所がないんだよ?」


「それって私の目と同じだよ!

ほら、形は見えるけど、結局行かなきゃ

何か分からないのと一緒!」


「だから、分からないなら行かないとね!」


「……!」


カナタの言葉はシンプルすぎるが

当たり前の答えだった。


シオンはその答えに驚くが、

すぐに肩の力が抜け、苦笑いした。


「カナタはやっぱりすごいや……。

そうだね!行ってみないとね!」


「そうだよー!シオン心配しすぎー!」



広域災害対策センター。


名ばかりの建物で出会った元研究員イツキ。

彼は適合者になった後も、研究員としての

執念とプライドを貫いた。そして託した。


カナタとシオンは湖を目指し

北西の森林地帯へ向かう。


「よーし!行くぞー!」


「あぁ……そうだった……遠い…重たい…大変……」


「持とうか?その──」


「絶対に渡さない!!!!!」


シオンは負けたくなかった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


勢いに任せて書くと

あれこれ書きたくなりますね。


ブクマ等はお任せします。

ゆるく楽しんでいただければOKです!


カレーには醤油かけます。

美味しいですよ。

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