1話:一望千里は当たり前
※こちらの内容から第3部になります。
よかったら第1部、2部も読んでみてください。
カナタ達はビルの5階、その一室で
次の日を迎えていた。
先に目覚めたのはシオンだった。
「ん〜〜〜…っとぉ…。」
─あぁ、朝起きたらまず背伸びよね。
結構気持ちいいんだよね。私は絶対するよ?
背伸びをしたシオンは体の違和感に気付く。
ドロップに蹴られた
背中と脇腹がまったく痛くない。
「え、あれ?すごく痛かったのに……。
今は痛くない…ご飯が効いたのかな…?」
シオンもまた『人であり、人ではない』。
自然治癒力が──《強化》されているのだ。
※※※
《自然治癒力》
人間には自然治癒力が備わっている。
時間と共に治していくあれだ。
これには個人差がある。
早い人もいれば、遅い人もいる。
※※※
シオンの回復速度はこの強化自然治癒力のおかげ。
しかし、これには種類がある。
切り傷、掠り傷、擦り傷等の
極小の負傷なら即時まではいかないが
数十分〜数時間で回復する。
カナタより頑丈さはあまりない為、
シオンにとっては蹴られたダメージは大きい部類。
そして、この負傷が大きい場合は
早くて1日、遅くて3日かかる場合がある。
だとしても、バカみたいに早いが…。
※※※
シオンは基本的に逃げまくって生きてきた。
傷を負う事はほぼ無いに等しい。
音で判断し、危険なルートは避けれるからだ。
つまり、自分の傷の回復速度が
早いかなんて分かるわけもないし
意味不明だし、理解不能だった。
心臓も食べてないから、なおさら謎。
シオンがご飯のおかげと
結びつけるのも至極当然、当たり前だ。
「昨日食べたアレ…
実はすごい食べ物だったのかもしれない」
「全然痛くないし、塞がってるし…。
これなら不味いのを食べなくても平気そう。
さて、外を確認しようかな」
ビルの一室の窓を開け、耳で確認し
目は見える範囲を見渡す。
ドロップの心配はなさそうだった。
安心はしたが疑問だった。
あとからコンビニにやってきた
ドロップの姿が消えていた。気配すらない。
「いないならそれでいいけど
ちょっと怖いな……」
シオンは変な不安を覚える……が…。
その声はそんな事など気にしない。
容赦なく割り込み、ぶっ壊してくる。
「よく寝たー!ふっかーつ!」
「…わぁ!!もう!急に声出さないで!」
「あ、ごめん、シオン。おはよ〜!」
「はぁ…。おはよう、カナタ」
ビックリしたシオンは反射で座る。
カナタは速攻でご飯を食べはじめる。
本能なのだろう。
パン、水、パン、水……
誰も取らないのにすごい速度だ。
「もう、よくわからん……」
シオンはやや呆れた顔と苦笑いをするも
自分もお腹は空いたためご飯を食べることにした。
咀嚼しながら、カナタは聞いた。
「これから…(もぐもぐ)……どうする?」
「んー、私も考えてるんだけどね(もぐもぐ)」
シオンは食べながら答え、立ち上がり
再び窓の外を見る。
さっきはドロップの確認だけで
周辺しか見ていなかった。
今は、ビルから見える範囲で
全体を見ている。そして。
「ねぇ、カナタ?
あそこ見える?あれは…建物だよね?」
「どれー?」
シオンの指の先には、この街が
全部見えそうな高台。
そこに見えるシルエットは大きく
シオンでも建物かな?と予想できた。
「んー?そうだね、建物だよ!」
「やっぱり建物なんだね」
「動いてはないし、形が建物!」
「じゃあ、ちょっと行ってみない?あそこ」
「え、いいけど、なんで?」
「んー、分からないけど、高い所からなら
この建物より色々見えそうだし
次どうするかも思いつくかなって」
「ふーん?高い所ってそうなんだ?
よし、じゃあ行こう!」
高台に向かうため
ご飯もほどほどにし、ビルを出た二人。
「ドロップが出たら私が倒すね!」
「ありがとう。でも、いないんだよ」
「え?」
「さっき、先に起きたから確認したんだ。
とにかく静かだった。」
「そうなんだ、じゃあ、あそこまで
問題なく行けるね!」
シオンの中では不安は拭えていない。
だが、いないにこしたことはない。
安全に行けるならむしろラッキーだ。
しかし、警戒を怠らず高台を目指し歩いていく。
──到着
目的の高台にはシオンの不安が
嘘のようにすんなり到着した。
だが、目の前には別の敵が現れていた。
坂道だ。
シオンはカナタより基礎体力がない
実はここに来るまでも既に疲れている。
「…いや、ここまで……はぁ…はぁ…
距離あると…思ったけど…さ!はぁ…
だとしても…距離あったくない?!」
「そう?ドロップいなかったから
早く来れたじゃん!」
「いなかったけど…ていうか……何…?
次はこれェ〜?!む、無理ぃ〜……はぁ…はぁ…
カ、カナタは…いいなぁ〜ずっと飛んでて楽そう…」
「あぁ〜…ごめん、楽」
「キィィィィィィ!!!この!この!」
「わわわ!危ないよ!シオン、やっぱり飛び方を……」
「うるさい!うるさい!この!」
カナタに蹴りを当てようと頑張るが
当たる訳もなく……。
「はぁ……が、頑張れ私…」
シオンはやや重たいリュックを背負って
この坂道を進む覚悟を決める。
「私だけ…大変な気がしてならない……」
「シオン?背中のやつ持とうか?」
「それだけは絶対イヤ!負けたことになる!」
「う、うん、わかった…(誰と戦ってるんだろうシオン)」
シオンのよく分からない意地を
カナタは何も分からなかった。
それでも仲良く坂道を進んでいく。
──高台の建物前
「着いたー!やっぱり建物だったね!」
「……」
「あれ?シオン?」
「…………て」
「え?なに?」
「………ませて」
「聞こえないよ、シオン、どうしたの?」
「や・す・ま・せ・て・!」
「は、はぃー!ごめんなさいぃー!」
シオンは到着と同時に
地面にうつ伏せになり全く動けなかった。
重たい、重すぎる。ハードすぎた。
「(体力…つけなきゃ……)」
シオンは切実に誓うのだった。
─わかるわかる、ビックリする時ある。
体力も鍛えなきゃないのは当たり前だよね。
私?あるわけないじゃないっ
カナタはシオンが動けるようになるまで
いじりながら待っていた。
「やっぱり、飛び方教えようか?」
「カナタちゃん?私と戦いたいの?」
「こ、こわい……」
「はぁ〜、まったく。もう動けるから行こ」
「う、うん」
建物はやはり大きかった。
石の塀に囲まれ、敷地内に入るための
ゲートがカナタ達を待っていた。
塀自体に多少の亀裂や崩れている跡があるが
特に問題はない。
また、金属プレートがありそこには
《広域災害対策センター》と書いてあった。
当然、読めないし意味も分からない。
「なんて書いてあるの?シオン」
「んー、ごめん、これは分からないや」
「そっか、じゃあとにかく中に行こう!」
カナタのこの切り替えの早さは
常々見習いたいとシオンは思うのだった。
二人はあまり役に立たなそうな
ひしゃげたゲートを開けて進む。
─ センター内
建物内は荒れている。物は壊れ、ガラスは割れ
ポスター等もそこら辺にあり、
壁にはぶつかったよう凹み跡がある。
血痕もいくつかあり、電気は当然つかない。
しかし、幸いなことに
陽の光は差し込んでいるため明るかった。
その明るさが、建物内の荒れ具合を
より不気味にしていたが
暗くないだけいくらかマシだった。
カナタ達は予定通り高い所から周りを見るために
建物の上を目指した。
─ 屋上
上に行く階段を見つけ、屋上へ来た。
「うわぁ〜!すごーい!」
「…すごいね、遠くまで見える」
思わず声に出てしまう。
「朝いた建物から見てるのと全然違う…」
「すごーい!みんな小さい!
近くで見てたら大きかったのに!
ここからじゃ小さい!不思議ー!」
「あはは、そうだね、不思議だね!」
屋上を歩きながら、周囲を見た。
次の目的地になるものでもないかと。
景色的には、絶景じゃないが、
遠くまで見えるという点において
一望千里という言葉が合っているだろう。
さらに見て歩いていると
シオンはとある場所が気になった。方角は北西。
「あそこ…なんか……違う?違うというか
馴染んでないっていうかなんていうか
カナター!ちょっと来てー!」
カナタは逆方向からふわっとやってきた。
「どうしたの?なにか見つけたの?」
「カナタ、ほら、アレ見て」
「ん?どれどれ〜」
カナタもシオンが見ていた場所を見る。
「ん〜?なんか揺れてる?
でもそれより、あそこだけ変だよね?」
「え、カナタもそう思うの?」
「え、シオンも?だって、あそこ変だよ。
なんか…なんかぁ〜…ん〜
ボロボロじゃない?っていうのかな」
「綺麗でキラキラってこと?」
「そう!なんかあそこだけすごくキラキラ!
食べ物と違うキラキラ!」
見ていた場所は確かに
シオンが言うように綺麗でキラキラ。
ただ、この世界のものとしては
明らかに異質で異常。
なぜなら、それはこの世界ではありえない
──《森林地帯》だったから。
ビルがあった街には雑草は生えていた。
しかし《木》はなかった。あっても枯れ木だ。
それがこの世界の普通で正常。
つまり、当たり前。
二人は次の目的地をそこに決めた。
「すごく気になる、あそこ行ってみよう」
「うん、私も気になる!」
「よし!じゃあ、中に戻ろっか」
「OK!まず戻ろう〜!」
─ 再度、建物内
「ねぇねぇ、シオン
どうせならなにか探してみようよ!」
「え、あ、そうだね!
なにか役に立つものがあるかもしれない!」
「シオンが飛べるやつとかね!」
「カナタちゃんは悪い子なんだね?(ギロリ)」
「あはは…さ、さっきより怖いよシオン…はは」
─やるわぁ、これ。弄り方見つけると
何回もやりたくなるよね。私の弄り方?秘密っ
森林地帯への出発準備も兼ねて
なにかないか探索する。
入ってきた時はそこまで気にしてなかったが
改めて見れば、床も所々穴が空いている。
「これなにー?」
カナタが手に取ったのはポスター。
子供が大人と手を繋ぎ笑顔だ。
ポスターには、でかでかとバランスよく
《安心安全》と書かれていた。
「なんだろう?でもそれはいらないね」
「うん、そうだね、ぽいっ」
ポスターを投げ次へ。
次はフロア案内図の前に来た。
「うげぇ…さっきのより分からないよこれ」
「うん…ほんとに分からないね…」
「でも、こっちとこっちがあるね?」
「なんでなんだろう?」
「……!シオン、もしかしてさ!
今私たちがいる『ここ』の下が
あるよってことなんじゃない?!」
「……あっ!なるほど!だから
こっちとこっちに書いてあるんだ!
すごーい!カナタ!そうだよきっと!」
「へへへへ///(適当だったんだけどな…)」
カナタは本当に適当でただの直感だった。
ただ、シオンならこう言うだろうなと
シオンになった気持ちで言ってみただけ。
しかし、それは合っている。
この建物は、屋上、1階、地下1階の作り。
1階を再度探索し
地下に降りる階段を見つけて降りる。
地下も1階同様ではあったが
悲惨さは地下のが明らかだった。
「うっ……シオン、ここ変な匂いする〜」
「うん…すごいね……。上より酷いね…」
あまり言葉を発さず
ただ、ひたすらに見て回った。
ボケてるような雰囲気じゃないことを
なんとなく思ったのだ。
地下の最奥、血痕こそ付着しているものの
比較的破損等が見られない扉があった。
扉には《所長室》と書いてあった。
「あとは…ここか!」
「結局、何もないのかもね」
シオンはドアノブへ手をかける。
ガチャガチャガチャッ!
「あれ?なんで?全然開かない」
「えぇ、どうするの?壊しちゃう?」
「ん〜…ドロップはいない、けど
このままだとずっと入れない…。
よし、カナタ、壊しちゃえ!」
「任せてよ!」
待ってましたと言わんばかりの満面の笑み。
カナタは蹴破ろうとした。
だが、蹴っても少し凹んだだけで
壊れなかった。
「あれ、壊れないなぁ…じゃあこっちだ!」
カナタはハンマーを取り、振りかぶる。
「せーのっ!!!」
バゴォーーン!
カナタのハンマーの前では
鍵の閉まった扉は無力だった。
「ははは……壊しちゃえ!とは言ったけど
全力すぎるよ…」
「シオン、壁は壊した方が早いんだよ?」
「そ、それはそう…。(絶対違う気がする…)」
所長室に足を踏み入れる。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
いよいよ、旅が変わる第3部です。
第3部も浮かんだ文字を勢いで並べていきます。
よろしくお願いします!
ブクマ等はお任せします。
ちなみに、鮭よりシャケ呼び派です。




