困惑のミレニアムー
了解しました。オセの口調とミリィへの敬語関係、修正して整えます。
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「純潔のミリィ様!少女を助けて魔獣討伐!」
そんな見出しの号外が、テーブルの上に置かれていた。
紙面には、森での出来事が誇張された見出しと、大げさな挿絵まで添えられている。
そのテーブルの下。
床には、正座したまま小さく縮こまるミリィの姿があった。
肩はすくみ、視線は落ち、今にも消えてしまいそうに震えている。
「……ごめんなさい……」
か細い声が、部屋の静けさに落ちた。
その前に立つ二人。
腕を組み、無言で見下ろすオセ。
扇子で口元を隠しながら、静かに目だけを向けるアナ。
沈黙が、しばらく続く。
先に口を開いたのはオセだった。
「……で?」
ミリィの肩がびくりと跳ねる。
オセは号外を軽く指で叩きながら、淡々と続けた。
「助けようと思って、派手に記事になるようなことしたんすか」
ミリィはさらに小さくなる。
「……ちがいます……」
その言葉に、アナが扇子をゆっくりと下ろした。
視線は柔らかいまま、しかし逃げ場はない。
「ミリィ」
穏やかな声が落ちる。
「説明、していただけますか?」
ミリィは床に額がつきそうなほど、うつむく。
「えっと……その……困ってて……」
言葉が途中でほどける。
オセは変わらず淡々と見下ろしたまま、息を吐く。
アナは静かに目を細める。
「……困っていた、で済む内容ではなさそうですわね」
部屋の空気が、さらに静かに沈んでいった。
オセの声が少しだけ荒くなる。
「大体、早朝に抜け出すとか、ありえねぇっすよ!」
続けてアナも、扇子をぱたんと閉じてため息をついた。
「本当に、予定も詰まっていたのに急にいなくなって、私がどれだけ大変だったか……」
ミリィはしゅんと肩を落とし、小さく縮こまる。
「はい……反省してます……」
しばらく、空気が重く沈む。
だが――
「……とは言え」
オセがぽつりと呟く。
「……とは言え」
アナも同じように言葉を重ねる。
二人は一瞬だけ視線を合わせたあと、ふっと表情を緩めた。
そして、同時に笑う。
オセが大きくガッツポーズをとり、
「おかげでミリィ様の評判、爆上がりっすよ!」
アナも扇子の向こうで目を細める。
「本当に、子供たちの人気まで手に入れるなんて……おそろしい子」
重かった空気が一気に崩れる。
ミリィはゆっくりと顔を上げる。
涙目のまま、ぽつりと呟いた。
「……へ?」
オセが軽く肩をすくめながら、明るい声で続ける。
「いやーさすがミリィ様!今や街中だけじゃなく、学校でも注目の的らしいっすよ!」
アナも扇子を軽く揺らしながら頷いた。
「今、子供たちの間では剣聖ごっこが流行っているらしいですわ」
その言葉に、ミリィは涙目のまま首を傾げる。
「……怒って、ない?」
オセは即答した。
「当たり前ですよ!むしろ褒めてあげます!」
その瞬間、ミリィの表情がぱっと明るくなる。
アナは静かに目を細めた。
「貴女は今や、大人から子供まで、この街のアイドルです。でかしましたね」
「そ……それほどでもぉ……えへへ」
ミリィは頬を赤くして、照れくさそうに笑った。
その様子を見て、オセがにやりと口角を上げる。
「とは言え、今度抜け出したらエッグい水着で街中1周してもらいますからね?」
「……え?」
ミリィの笑顔が固まる。
アナも扇子を軽く口元に当てながら、さらりと続けた。
「そうですわね……それはそれでまた人気も上がりそうですし……やりましょう」
「え……?ええーっ?」
さっきまでの安心はどこかへ消え、ミリィの声だけが部屋に響いた。
アナが軽く扇子を閉じ、空気を切り替えるように言った。
「冗談はさておき……」
ミリィはまた小さく肩を震わせる。
さっきの“水着発言”がまだ頭に残っているのか、涙目のまま固まっていた。
アナはそんな様子を見て、少しだけ柔らかい声になる。
「あまり一人で外を歩かないでね」
オセもうんうんと頷いた。
「ミリィ様、今や大人気の有名人なんすから、もっと気をつけてもらわないと」
アナは視線を少し外へ向けながら続ける。
「まぁ、貴女の強さなら護衛は必要ないでしょうけど」
その言葉に、オセがすかさず口を挟む。
「いやいや、ミリィ様強いけどチョロインだから、誘われたらほいほい着いて行っちまうんだもん」
ミリィの目がぱちくりと瞬く。
「チ、チョロ……イン……?」
聞き慣れない単語を、ゆっくりと口の中で転がす。
アナは扇子で口元を隠しながら、小さく息を吐いた。
「あぁ、それは心配ね」
オセは腕を組みながら、少しだけ真面目な声を混ぜる。
「普段は俺がついてるから安心だけど……やっぱなぁ」
アナも扇子を軽く顎に当て、考えるように目を細めた。
「そうなると……やはり護衛も必要かしら」
ミリィは不安そうに二人を見上げる。
「……護衛?」
オセは軽く肩をすくめた。
「オーディションかなぁ」
アナは即座に頷く。
「オーディションでしょうね」
「……あ、あの、もう一人で出歩かない、から……」
ミリィは慌てて小さく手を振る。
オセが片眉を上げる。
「あん?」
アナも静かに視線を向ける。
「何か言いまして?」
ミリィは一瞬でしゅんと萎れてしまう。
「なんでも……ないです」
オセはため息混じりに肩を回した。
「とりあえずオーディションやってくれよ」
アナはすでに予定を組み始めるような口調で言う。
「そうと決まれば明日にでも」
ミリィだけが、状況を完全に飲み込めないまま小さく座り込む。
かくして――
剣聖の護衛オーディション開催が、あっさりと決まった。




