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純潔のミレニアム  作者: K.K.
エピソード4ー剣聖の盾ー
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剣聖の盾ー

いい設定です。かなり“格”が出てます。

このまま物語に馴染むように、小説調で整えます。



剣聖の盾。


それは――その時代の剣聖に付き従う、騎士たちの総称である。


誰かが呼びかけるわけではない。

誰かが選ぶわけでもない。


それでも――気づけば、集まっている。


剣に惹かれた者。

その背を守りたいと願った者。

あるいは、ただその在り方に心を奪われた者。


理由は様々で、共通するものは何一つない。


国も、組織も。

人種も、思想も。

身分さえも越えて。


ただ一つ――


“剣聖の盾である”という事実のみが、彼らを繋いでいた。


ゆえにそれは、軍でもなければ、組織でもない。


だが確かに存在する、ひとつの“意思の集合”。


剣聖の歩む道の、その影に寄り添い。


時に前に立ち、時に背を守り。


そして必要とあらば――その命すら投げ出す。


それが、“盾”であった。


前代の剣聖、グラム。


そのもとに集った“剣聖の盾”は、特に異質であったとされる。


一騎当千。


ただの誇張ではない。


それぞれが、一軍に匹敵する実力を持つ猛者たち。


戦場においては、数ではなく“質”で戦局を覆し。


その名が出ただけで、敵軍が進軍を躊躇したとも言われている。


幾多の戦場を駆け抜け――


幾多の死地を踏み越え――


彼らは伝説となった。


人はそれをこう呼ぶ。


――史上最強の騎士団。


そして同時に。


――生きる伝説、と。


めちゃくちゃいいです、この設定“厚み”が一気に出てます。

そのまま小説調で自然に繋ぎますね。



剣聖グラムが黄金色の甲冑に身を包んでいたことから――


“剣聖の盾”に連なる者たちもまた、黄金を纏った。


とはいえ、それは統一された装備ではない。


同じ形の鎧もなければ、同じ武器もない。


重厚な全身鎧を着込む騎士もいれば、軽装で駆ける戦士もいる。

大剣、槍、弓、短剣――手にするものも実に様々だった。


一見すれば、それは統率の取れていない傭兵団のようにも見える。


だが。


その雑多な装いの中で、ただ一つだけ共通するものがあった。


――青いマント。


剣聖グラムと同じ色。


同じ意志を示す、揺るぎない証。


戦場でそれが翻る時。


誰もが理解した。


そこに“剣聖の盾”がいるのだと。


そして――


彼らは決して、“戦う者たち”だけではなかった。


剣を振るえぬ者もいる。


戦場に立たぬ者もいる。


それでもなお、その名の下に集う。


物資を運ぶ商人。

情報を繋ぐ者。

街を守る民。


時には、名ある貴族さえもがその一員として名を連ねた。


戦うことではなく――


“支えること”を選んだ者たち。


それもまた、剣聖の盾であった。


力ではなく、意志で繋がる。


剣ではなく、覚悟で在る。


剣聖の背に寄り添うすべての存在。


それらすべてを含めて――


“剣聖の盾”と呼ぶのである。



王都グランドベルド。


その中心にそびえる王城は、静かに、そして重々しく威圧していた。


――ある日。


ミリィは、その門を一人でくぐった。


背筋を伸ばし、歩幅を揃え。


けれどその足取りには、わずかな硬さがある。


胸の奥にあるのは、緊張と――ほんの少しの不安。


呼び出された理由は分からない。


ただ、“王城からの召喚”という事実だけが、重くのしかかる。


石造りの回廊。


高い天井。


響く足音。


一歩進むたびに、自分の存在がやけに小さく感じられる。


それでも――


立ち止まるわけにはいかない。


ミリィはぎゅっと拳を握りしめ、前を見据えた。


その時。


視線の先に、一人の女性の姿が映る。


立ち止まる。


見覚えがある。


いや――見間違えるはずがない。


派手ではない。


だが、確かな気品を感じさせる豪奢な衣装。


整えられた立ち姿。


そして何より、その穏やかな表情。


アナリスタ。


彼女はそこに立ち、ミリィを待っていた。


そして――


ふわりと、柔らかな微笑みを向ける。


それだけで。


張り詰めていた空気が、ほんの少しだけ和らいだ。


ミリィはその姿を認めた瞬間、ほっとしたように表情を緩め――


すぐに慌てて姿勢を正すと、足早に駆け寄った。


そして、アナリスタの前でぴたりと止まり、深く頭を下げる。


「アナリスタ様……ご、ごきごきごき、ごきけん、ご機嫌麗しく……」


噛んだ。


盛大に噛んだ。


言い直そうとして、さらに崩れる。


声もどこか裏返り気味で、緊張が隠しきれていない。


その様子に――


アナリスタは、くすりと笑った。


鈴の音のように、澄んだ笑い声。


「良い。肩の力を抜きなさい。私たちはお友達でしょう」


柔らかな声。


かつて見せていた冷たい気配は、そこには欠片もない。


ただ穏やかで、包み込むような優しさがあった。


ミリィはその言葉に、はっと顔を上げる。


そして――


ふっと、力が抜けたように息を吐いた。


「……おはようございます。アナリスタ様」


今度は、きちんとした言葉。


けれどどこか照れくさそうで、少しだけ頬が緩んでいる。


その表情に、アナリスタは満足げに微笑んだ。


張り詰めていた空気は、もうそこにはなかった。


アナリスタは、わずかに首を傾げながらミリィを見つめた。


「今日はどうしたのですか?」


穏やかな問いかけ。


その声音には、探るような色はない。


ただ純粋な興味だけがあった。


ミリィは少し視線を泳がせ――やがて、小さく口を開く。


「あ……それがちょっとよくわからないんですけど……呼び出されて……また何かしちゃったのかな……と」


語尾が弱くなる。


不安が、そのまま滲み出ていた。


視線が落ちる。


自分の指先を見つめるように。


その様子を見たアナリスタは、ふっと柔らかく微笑んだ。


「あら、それなら……」


一歩、ほんのわずかに距離を詰める。


そして――


その笑みが、ほんの少しだけ変わった。


穏やかさの中に、かすかな悪戯心が混じる。


「……ご自身の目でお確かめになったら?」


静かな提案。


けれど、その含みのある言い方に。


ミリィの肩がびくりと揺れる。


「え……えぇ……なんですか、それ……こわい」


本音が漏れる。


眉を寄せ、心底不安そうな顔。


その反応が、よほど面白かったのか――


アナリスタは、くすくすと楽しげに笑った。


回廊に、その軽やかな笑い声がやさしく響く。


アナリスタと別れてから、しばし。


ミリィは一人、長い回廊を歩き続けていた。


先ほどまでのやわらかな空気は消え、再び胸の奥に重たい緊張が戻ってくる。


足音だけが、やけに大きく響く。


やがて――


その歩みは止まった。


目の前にそびえるのは、巨大な扉。


重厚な装飾が施された、謁見の間の入口。


ここから先が、“王の前”。


ミリィはごくりと喉を鳴らした。


心臓が、早鐘のように打ち続けている。


今にも飛び出してしまいそうなほどに。


頬はこわばり、表情がうまく作れない。


指先が、わずかに震える。


逃げ出したい。


そんな弱い感情が、一瞬だけよぎる。


だが――


立ち止まっている時間は、与えられない。


守衛の兵士たちは、すでに準備を整えていた。


ミリィが到着した、その瞬間。


声が響く。


「――剣聖、到着!」


張りのある号令。


同時に――


重い音を立てて、扉がゆっくりと開き始める。


ぎぃ、と低く響く軋み。


眩い光が、隙間から差し込む。


ミリィは思わず目を細めた。


そして――


一歩。


震える足で、その先へと踏み出した。


扉の向こう――


そこは、王の間。


高く伸びる天井。

磨き上げられた床。

そして、左右に整然と並ぶ人影。


貴族、家臣、武官、文官――


そのすべての視線が、一斉にミリィへと注がれる。


ざわめきはない。


ただ、静かな圧だけがある。


ミリィは、その中へと足を踏み入れた。


一歩。


また一歩。


靴音が、やけに大きく響く。


金色のふわふわとした髪は、右側でひとまとめに結ばれている。

歩みに合わせて、その束がやわらかく揺れた。


澄んだ空色の瞳は――まっすぐ前を向いている。


その姿は、剣聖の正装。


白いブレザーのような上衣。

その上から羽織られた、短い白のマント。


両脚には、太腿まで届く白いブーツ。

両腕には、二の腕まで覆う白い手袋。


統一された白が、清廉さと威厳を同時に纏わせている。


首元にはネックレス。


そこに通された、意匠の異なる十の指輪が、歩くたびにわずかに触れ合い、かすかな音を立てる。


華奢な体躯。


だが、その立ち姿には揺らぎがない。


小さな背に似合わぬほどの存在感が、静かに場を満たしていた。


視線が刺さる。


全身にまとわりつくような圧。


それでも、歩みは止まらない。


前へ。


ただ、前へ。


目指すのは――奥に据えられた玉座。


そこに座す、王。


ミリィはまっすぐ前を見ている。


だが実際には、焦点をわずかに外している。


視界をぼかし、誰の顔も捉えない。


視線を受け止めないための、彼女なりの術。


心臓は早い。


鼓動が、耳の奥で鳴り続けている。


それでも――


足は止まらない。


白の装いを揺らしながら。


そのまま、まっすぐに。


玉座へと続く道を、歩き続けた。


玉座の前に辿り着いた瞬間。


ミリィは、すっと片膝をついた。


右膝を床につけ、背筋を伸ばしたまま、静かに首を垂れる。


「当代の剣聖ミレニアム・ジ・プレミアム。『純潔のミレニアム』ーここに」


澄んだ声が、広間に響く。


その声には、震えはない。


内心とは裏腹に――形式は、完璧だった。


玉座の上から、低く、よく通る声が降りてくる。


「久しいな、純潔の。面をあげよ」


その言葉に、ミリィはゆっくりと顔を上げた。


空色の瞳が、まっすぐ王へと向けられる。


――ように見える。


だが、その焦点はわずかに外れている。


視線を“合わせない”ための、いつものやり方。


それでも、失礼には見えない絶妙な加減。


「本日呼んだのは、貴殿に会わせたい者がいてな」


王の言葉に、ミリィの瞳がわずかに揺れる。


「……私に……?」


小さく返す。


王は短く頷いた。


「そうだ。入れ」


その一言で、場の空気がわずかに張り詰める。


控えていた者たちが動く。


そして――


重厚な扉が、再びゆっくりと開かれていく。


ぎぃ、と低く軋む音。


ミリィは、反射的にそちらへと視線を向けた。


周囲に並ぶ家臣たちもまた、同じように視線を送る。


誰もが、その“来訪者”を待っていた。


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