第78話 騎士団、分断される
エドガーのもとに、騎士の各小隊長が集まる。
「副団長、用意が整いました」
「何時でも出られますっ」
「魔女どもに、目にものを見せてやりましょうっ」
騎士達の士気は高い。
エドガーが大きく頷く。
「団長。御命令をっ!!」
「うむ。諸君。待たせたっ!! 辺境伯騎士団、出撃だっ!!」
「「「うおおおおおおおおっ!!」」」
アビゲイルの号令に、騎士達が一気に走り出した。
ヒュンッ
その集団の真ん中に、何かが物凄い速度で空から落ちてきた。
眩いばかりの光が世界を包む。
ドカンッ
ほんの一瞬遅れて爆炎と爆風が地面と一緒に騎士達をなぎ倒す。
悲鳴を上げる暇も与えず、グレネードランチャーの爆発が騎士達に襲い掛かる。
数人の騎士が吹き飛ばされ、舞い上がった土砂が空から降ってくる。
後方に居て、爆発に巻き込まれなかったアビゲイルとエドガーが目を見開いて動きを止めている。
すると再び、あの甲高い音が聞こえてきた。
ヒューンッ
ドカンッ!!
先程の場所から少し離れた所が激しく爆発する。
数人の騎士が吹き飛ばされて、岩肌に激突する。
もうもうと爆煙が上がり、周囲の視界を塞ぐ。
「魔女どもめっ……まだ、このような攻撃手段を持っていたのかっ!? くうっ!!」
その煙の中で、アビゲイルがギリッと奥歯を噛むのだった。
◆
コリンは地面に伏せたまま銃を構えている。
風に乗って、騎士達の雄叫びが聞こえてきた。
続けて、騎士達が駆け出す足音。
コリンが銃のグリップを握り直す。
次の瞬間、地面が揺れた。
ワンテンポ遅れて爆音が鳴り響く。
何かが吹き飛ばされるような音が聞こえる。
「(アグネス……ナイス・タイミングだっ)」
そして二発目の着弾。
再び地面が揺れて、爆音が響く。
コリンが見つめる方向から、もうもうと黒い煙が立ち上る。
その煙の中から、金属の鎧を身に纏った騎士達の姿が見え始める。
「(直撃を避けた連中が来たな……こいつ等を通す訳にはいかん)」
コリンは引き金を引く。
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ
こちらに向かってくる騎士の前で魔道障壁が砕け散る。
しかし騎士達は突撃を止めない。
「(こいつらの障壁は削れなかったか……)」
コリンはセレクタを変える。
パパパパパパパパパパパパパパッ
騎士の前の空間が白く濁る。
「ぐあああああっ!!」
魔道障壁を失った騎士の身体に、銃弾が小さな穴を穿つ。
しかし、その小さな穴を穿たれた騎士は、その場で崩れるように倒れる。
パパパパパパパパパパッガチッ
銃弾を撃ち尽くす。
コリンはすぐにマガジンを交換すると、空になったマガジンを後方に放り投げる。
ロゼがそれに気づき、空になったマガジンを回収する。
『ユーリさん。これ』
『ロゼ、ありがとう』
ユーリは受け取ったマガジンに、銃弾を込めていく。
「(訓練の時に使ったローダーのありがたみが身に染みるよ……)」
そんな事を考えながらも手は止めない。
ガチャ、ガチャ、ガチャ
一発ずつ弾を込めていく。
弾を込め終わったマガジンを持ってロゼがコリンのもとに向かう。
ユーリはその背中を見つめながら、腰のホルスターから拳銃を取り出す。
「(これも……使う事になるのかな)」
ユーリは冷たい金属の光沢を放つ拳銃を銃弾の横に置くのだった。
◆
騎士団はグレネードランチャーの攻撃により、大きく二つに分断されてしまった。
後方の集団にはアビゲイルとエドガーがいる。
そして彼らは今、混乱の渦中にいた。
「負傷者を後退させろっ!!」
「追撃できるものは追撃しろっ!! 先行している者達を見殺しにするなっ!!」
「地面が崩れていて、負傷者を運べませんっ!!」
アビゲイルがエドガーに指示を出す。
「此処はわたしが引き受ける。お前は動けるものを連れて、追撃班を編成しろ」
「し、しかし」
「お前に攻撃の全権を預ける……魔女たちを仕留めてこいっ」
アビゲイルの言葉に、エドガーが頷く。
「必ずや、ご期待に添えるよう……尽力します」
「……死ぬなよ」
「……御意」
短い会話が終わり、エドガーが声を張り上げる。
「動けるものは我に続けっ!! 追撃に移るぞっ!!」
エドガーを先頭に、十数名の騎士達が続いていく。
「頼んだぞ、エドガー」
アビゲイルはその背中を見送りながら、負傷者の救助に当たるのだった。




