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第77話 騎士団、白兵戦へ


 アビゲイルが率いる十騎の騎馬騎士達が、エドガー達のもとに到着する。



「アビゲイル団長っ、如何いたしましたっ!?」



 当初の予定と異なり、アビゲイル達が駆け込んできたことで、エドガーが驚いて騎乗したまま駆け寄る。


 アビゲイルはエドガーの問い掛けに、苦いものを飲み込んだような表情を浮かべる。



「『魔女』どもの罠が執拗に張り巡らされていてな……想定以上の損害を出してしまった……」


「それは……」



「今は負傷者を後方へ移動させている……」


「はい……賢明な判断かと」



 エドガーは頷く。


 アビゲイルはエドガーに馬を寄せると、耳元に語り掛ける。



「作戦を変更する……岩山の後方から一気に突撃を仕掛ける」


「挟撃ではなく……ですか?」



 アビゲイルは静かに頷く。



「『魔女』どもは少数だ……魔道具による罠にも限りがあろう……数の優位があるうちに押し潰す」


「……」



「これ以上の損害は、騎士達の士気にも関わる……」


「分かりました……」



 そう言ってエドガーは後方に振り返る。



「我々が三十騎、団長たちが十騎……合計で四十騎……」



「岩山の後ろ側は、騎馬は使えるのか?」


「通路らしきものはありますが、騎馬で一気という訳にはいきません」



「では、白兵戦か」


「それが妥当かと……ご安心を、我々は騎馬でなくても十分に活躍してみせますよ」


「それは疑ってはいない……」



 アビゲイルは口元にほんの少しだけ笑みを浮かべる。



「よし、全員に白兵戦の用意をするように伝えよ……用意ができ次第……出る」


「御意」



 エドガーは馬上で騎士の礼をとる。


 アビゲイルも、見事な答礼で応える。



 エドガーは笑みを浮かべて馬首を返す。



「全員、傾聴っ!!」



 騎士達が騎乗したまま、エドガーの方を見つめる。



「作戦を変更する。これより、白兵戦で『魔女退治』に臨む。各人用意せよっ!!」



 一瞬の沈黙の後、騎士達が絶叫のような雄叫びを上げる。



「「「うおおおおおおおおおっ!!」」」



 騎士達は雄叫びを上げながら、剣を抜き、頭上高く掲げるのだった。


 ◆



「「「うおおおおおおおおおっ!!」」」



 アグネスとシャムが移動の為の準備を行っていると、岩山の裾の方から騎士団の雄叫びが聞こえてきた。



「この声は……」



 思わずアグネスは手元のグレネードランチャーを掴む。



「突撃が始まるのかっ?」



 アグネスはトランシーバーに手を伸ばそうとして、左手が自由に動かせない事に、今さら気付く。



「不自由なもんだ……」



 アグネスが苦笑すると、シャムが手を差し出してきた。


 どうやらグレネードランチャーを持ってくれるようだ。



『ありがと、しゃむ』



 アグネスはグレネードランチャーを手渡し、トランシーバーを掴む。



「こちらアグネス。聞こえますか?」


『ザザッ……聞こえる……今の雄叫びの事か?』



「はい。此処からだと全容は見えないのですが……騎士達が馬から降りているのが確認できます」



 アグネスは草むらを障害物にして、遠くにいる騎士団たちを見つめる。



『そうか……敵は白兵戦を選んだか……』


「どうしますか?」



『正直言えば、騎馬のまま攻めてくれた方がありがたかったんだが……こうなるとタイミングが重要だな』


「タイミング……ですか?」



『ああ、アグネスの場所から騎士団の動きは見えるか?』


「もう少し移動しないと全体は見えません」



『……そうか、ならその場所で構わん。奴らが動き出す瞬間に一撃を入れろ……奴らが固まっている時がチャンスだ』


「……それが……タイミング」



 アグネスが息をのむ。



『できるか? というより、やって貰わんと困る』


「イエス、マム」



『判断はお前に任せる……動き出す瞬間を狙え』


「イエス、マムッ!!」



 そしてトランシーバーの通信が終わる。


 アグネスが怖い顔をしているせいか、シャムがおそるおそるグレネードランチャーを差し出してきた。



『これ……』



 アグネスは差し出されたグレネードランチャーを見つめて、大きく息を吸う。



「タイミング……外せないな……」



 そう呟いて、シャムにトランシーバーを差し出す。



『しゃむ……やるぞ』



 シャムは小さく何度も頷く。


 アグネスはシャムの手からグレネードランチャーを受け取ると、騎士団の方向に照準を合わせるのだった。


 ◆


 アグネスとの通信を終えたコリンがユーリの方へ振り返る。



「ユーリ。いよいよ来るぞ……準備は良いか?」


「はい、コリン班長……」



 そしてロゼが銃弾を込め終えたマガジンを持ってコリンに近づく。



『……これを……』



 コリンはロゼの手からマガジンを受け取る。



「銃弾をおろそかには使わん……約束する」



「ユーリ。アグネスの攻撃が合図で撃ちまくる……弾の補給を頼むぞ」


「イエス、マム」



 そしてコリンは岩陰に体を伏せさせる。


 草原と岩山は、不気味なほどに静まり返っていた。



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