閑話 平和だな……
ギルドマスターのゴライアスは領主邸にやって来ていた。
領主邸を守る門番たちが、ゴライアスの顔を見てギョッとする。
それはゴライアスが、一気に十歳以上老けて見えたからだった。
「……大丈夫ですか……顔色が悪いですよ?」
「……俺は大丈夫だ……至急、領主に取り次いでくれ……重要な話がある」
「分かりました」
門番の一人が屋敷に向かって駆けていく。
残った門番がゴライアスに小さなスツールを勧める。
「とりあえず、お座りください……しんどそうですよ?」
「……すまんな」
ゴライアスは差し出されたスツールに腰を下ろす。
そしてゴライアスは街の方向を見つめる。
空は青空で雲一つない。
この時間帯は草原の方から涼やかな風が吹いてくる。
風に乗って街の歓声がかすかに聞こえてくる。
「……平和だな……」
ゴライアスが思わずそんな言葉を吐く。
「そうですね。最近は大きな紛争も無いし……まあ、あったとしたら、あの女達の騒ぎ位ですね」
門番が苦笑いしながら答える。
「辺境伯騎士団も、もうすぐ動くと聞きましたよ?」
門番は相手が顔見知りの所為か、そんな事を口走る。
「駄目だろ? そんな事を口にしちゃ……」
ゴライアスが穏やかな口調で諫める。
「すいません……ちょっと喋り過ぎましたね。気をつけます」
門番がゴライアスに謝罪していると、屋敷に行っていたもう一人の門番が戻ってきた。
「ゴライアス殿。屋敷の方へどうぞ」
「ああ、すまなかったな」
ゴライアスはスツールを門番に返す。
「では、ご案内します」
門番はそう言って、ゴライアスの前を歩きながら屋敷に向かう。
ゴライアスがもたらす凶報を、領主が知るのはもうすぐだった。




