閑話 森の中の遺物
少し時間は遡る。
リリはジェシカの腕を掴んで森の中へと突っ込んでいく。
「おいおい、いったい何があったんだよ?」
「説明が面倒くさい。見た方が早い」
「それはそうなんだが……その場所は遠いのか?」
「ううん。すぐそこ」
そう言いながらリリが木々の間を縫うように走って行く。
「(相変わらず、森の中だっていうのに、足音が聞こえない……怖い奴だ)」
ジェシカはリリの後を追いながらそんな事を考えていた。
すると、リリが急停止する。
そして森の中の一角を指さす。
「あれ……何だと思う?」
ジェシカがリリに近づき、リリの指さす方向を見る。
「……えっ?」
ジェシカは自分の目が信じられなかった。
「何でこんな物が……此処にあるんだ?」
ジェシカはゆっくりと、その物体に近づいて行く。
それは巨大なおたまじゃくしのような形をしていた。
その背後をリリが警戒しながら付いていく。
「……これは、本物か?」
ジェシカはその物体の周囲を回りながら、確認をしていく。
「錆とかは確認できない……今まで動いていたって言われても信じるくらいに綺麗だ……」
ジェシカが物体に手を触れながら、その感触を確認する。
「これ、動く?」
リリが背後からジェシカに尋ねる。
「見てくれのままだったら、動く可能性が高い……」
「じゃあ、動かして」
「いやいや、それは駄目だろう? まずはアレクシア隊長に報告してからだ」
「えー、アレックスなら文句言わない」
「駄目だ。公私混同するな」
「むうっ」
リリは頬を膨らませて不服をアピールする。
ジェシカはやれやれと言った感じで両手を広げてリリに話しかける。
「まずはアレクシア隊長に報告だ……許可が下りたら……一番最初に乗せてやる」
「本当? 約束破ったら針を千本飲むんだよ?」
「何だよ、その怖い罰ゲームは?」
「ユーリが言ってた。約束して、約束を破ったら針を千本飲ませるって」
ジェシカは顔を顰めてリリを見つめる。
「(こいつ……ユーリに相当影響されてるな……)」
「しかし……」
ジェシカは思う。
「ユーリのおかげで、リリも随分と人間らしくなったな」
「むうっ……ユーリは妹。世話が焼けるから、リリが面倒を見ている」
「はいはい。そういう事にしておこう」
「むうっ」
再び頬を膨らませているリリを横目に、ジェシカは肩のポシェットからトランシーバーを取り出す。
「こちらジェシカ。本隊聞こえますか?」
短いノイズが聞こえた後、本隊側のフロムが応答してきた。
「こちら本隊、フロムです。何かありましたか?」
「ああ、リリが面白いものを見つけた……至急、回収したい。人手が必要だ」
「……分かりました……隊長に報告してから、折り返し連絡します」
「ああ、頼む……」
通信が終わり、ジェシカは再びその物体を見る……UH-1という、過去の遺物を。
「(退屈できないぜ……この世界は……)」




