第51話 打通作戦
この日、三度目のドローンによる偵察を行っている時だった。
モニターの片隅に人影らしきものが映り込んだ。
「……これは……」
モニターを見ていたユーリが思わず息をのむ。
慎重に十字キーを操作して、人影らしきものが見えた辺りにドローンの方向を移動させる。
「……やっぱり……人だ……しかも結構な人数……」
モニターの中には、数十人の冒険者たちが草原を進んでくる姿が映し出されていた。
「(距離にして五百メートル……あと、五分から十分以内に接敵の可能性……)」
ユーリは奥歯を噛みしめる。
そしてすぐにコリンを呼ぶ。
「班長。敵影を捉えました……二時方向、五百メートル先。数十人規模で、こちらに向かってきます」
コリンはすぐにユーリのもとに駆け寄ると、モニターを覗き込む。
「概算で良い。敵の人数を数えろ」
「はい」
ユーリは見える人数を数える。
「確認できた人数は五十。隠れている者がいる可能性も含めれば、七十かと考えます」
「了解。ヴァスケス、アグネスを連れて前方に展開しろ。各人の判断で発砲して良しっ!!」
「「イエス、マム」」
「ユーリ。ドローンを回収したら、我々はヴァスケスの後を追う。打通作戦開始だ」
「イエス、マム」
◆
先頭をヴァスケスが進んで行く。
その後ろをアグネスが追従している。
「アグネス。例のチリチリする違和感を感じたらすぐに知らせろ」
ヴァスケスは顔だけを振り向かせてアグネスに話しかける。
「魔法はもうコリゴリなんですけど……」
アグネスが軽口を叩く。
「オレ達が嫌がる事を敵は選択するもんさ……覚悟を決めろ」
「イエス、マム」
風に乗って、微かに人の話し声が聞こえ始める。
同時に草を掻き分ける音や、踏みしめる音が混ざり始める。
「(距離にして百メートルといった感じか……引き付けるか? いや、囲まれると厄介か……ならば)」
ヴァスケスはアグネスにハンドサインを出す。
アグネスは伏せの姿勢から、音のする方向に射撃を開始する。
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ
射撃が終わった瞬間、ヴァスケスとアグネスは左右に分かれて移動する。
今まで、アグネス達が伏せていた場所目がけて、無数の炎や石礫が飛んできた。
ボンッ、ボボンッ!!
バツッ、バツッ、バツッ、バツッ、バツッ、バツッ、
ボンッ、ボンッ、ボボンッ!!
炎の弾が着弾して、大きな炎を巻き上げる。
石礫は草むらの草を引き裂き、地面に大きな穴を穿つ。
ヴァスケスはその光景を見ながら、口角を上げる。
「(随分と正確な反撃だな……敵には相当耳のいい奴がいるな……そうとなれば……)」
ヴァスケスは肩口のトランシーバーを取り出す。
「全員、聞こえるか? 敵には耳の良い奴がいる……魔法使いと、耳の良い奴を優先して排除しろっ!!」
ヴァスケスは応答を聞かずに、トランシーバーを仕舞う。
「アドレナリンの味がするぜ……」
ヴァスケスはそう呟いて、銃を構えるのだった。
◆
冒険者連合。
先発組四十名に、後から援軍で来た冒険者三十名。
総勢七十名の冒険者が、日の出とともに行動を開始した。
各パーティーから選抜された斥候職や狩人たちが先頭を進む。
その後ろから、近接戦闘が出来る者たちが集まり、最後尾には魔法使いや兵站を務める者達が進んで行く。
ビクターは集団のほぼ中央に居て、逐次入ってくる報告をもとに、移動の方針を決めていた。
「(グノーシアス達は無事に救助できたみたいだが……戦闘に復帰できる状態じゃねえしな……ジュディスも使い物にならねえ……)」
先程もたらされたグノーシアス達の情報に思わず歯噛みする。
「(グノーシアスが勝てなかった連中に、俺達だけで勝てるのか?)」
ビクターは自問自答する。
「(いや、弱気になるな……敵はどんなに強くても、たった四人だ……数で押し込めば勝機はある筈……)」
そして周囲を見回すと、緊張感のない冒険者たちが大きな声で雑談をしている。
「(こいつら……でかい声で話しやがって……)」
ビクターが思わず注意しようとした時だった。
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ
何かが破裂するような乾いた音が響く。
「ぎゃああっ!!」
「痛ええええっ!!」
数人の冒険者が、悲鳴を上げてその場に崩れ落ちる。
「(これが例の礫攻撃かっ!?)」
ビクターは大声を上げる。
「何処から撃ってきたっ!?」
すると先頭を進んでいた斥候職の男が、手を上げて方向を示す。
「よし、魔法職っ!! 撃ち返せっ!!」
魔法使いたちの詠唱が始まる。
「ファイヤーボールっ!!」
「ストーンバレットっ!!」
複数の魔法が、斥候職の指し示した方向に向かって行く。
ボンッ、ボボンッ!!
バツッ、バツッ、バツッ、バツッ、バツッ、バツッ、
ボンッ、ボンッ、ボボンッ!!
遠くから魔法攻撃が着弾する音が聞こえてくる。
「油断するなっ!! 敵はたった四人だっ!! 数で圧し潰すんだっ!!」
ビクターの鼓舞に冒険者たちが雄たけびを上げる。
「いくぞっ!!」
そして近接戦闘の得意な者たちが着弾地点に向かって駆けだして行くのだった。




