↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/76

第44話 降伏


 暴れるスージーをどうにかしようとしていると、アグネスがこちらに向かって走ってきた。



「ヴァスケス先輩!!」


「アグネス。よくやった……が、こいつが暴れて」



 ヴァスケスはスージーを押さえつける。



「ヴァスケス先輩……その人、さっき『降参する』って言ってましたよ?」


「あんっ?」



 アグネスはスージーの前に移動すると、片言でスージーに話し掛ける。



『お前』、『降参』、『する?』



 その言葉を聞いた途端、スージーはアグネスの顔を見つめる。



『言葉が分かるの……そうよ、降参する。だから、ジュディスの治療をさせて……今なら、まだ間に合うかもしれないのっ!!』



 スージーが一気に捲し立てるが、早口での喋りは理解できない。


 しかし、断片的には分かる言葉があった。



「ヴァスケス先輩。彼女は、あの魔法使いの治療をしたいみたいです……降参するって何度も言ってましたし」



 アグネスはそう言ってスージーの目を見る。


 スージーはアグネスに縋るような視線で、何度も『降参するから……』と言っていた。



 ヴァスケスは少しの間思案してから、スージーの拘束を解く。


 すると、スージーは一目散にジュディスの元に掛けていく。



「アグネス。目を離すな」


「イエス、マム」



 アグネスは右手で敬礼すると、すぐにスージーの後を追いかける。



「……何だか興が削がれたぜ……」



 ヴァスケスはそう呟いて、ナイフをナイフケースに仕舞う。


 代わりに太腿のポケットから長い結束バンドを取り出す。



「結局、これを使う羽目になるのかよ……」



 そう言って大きくため息を吐く。



「まあ、コリンの判断かな……面倒くせえな」



 そう言いながら、倒れているジュディスのメンバー達の元へと向かうのだった。


 ◆


 スージーは倒れているジュディスの元に駆け寄ると、何かを必死に探し始める。


 それはすぐに見つかる……ジュディスの飛ばされた腕だった。



 スージーはその腕を拾い上げると、ポケットから取り出したポーション瓶から、液体を腕に振りかける。


 そして、倒れているジュディスの元に戻ると、拾った腕を傷口の所へ押し付ける。



 スージーは祈りを捧げるように、長い詠唱を始める。


 どの位の時間、詠唱していたのだろう。



 やがて詠唱が終わり、スージーが傷口に手を翳しながら治癒魔法を発現させる。



「エクストラ・ヒール」



 その瞬間、ジュディスの身体が金色に輝く。


 すると不思議な事に、引き飛ばされた腕と傷口がジワリジワリと繋がり始める。



「えっ……マジ?」



 その様子を見ていたアグネスは、思わず驚嘆の声を上げる。


 スージーの額には玉のような汗が浮かび、その顔色は徐々に蒼くなっていく。



 そしてそれに比例するようにジュディスの腕が元の状態に戻っていく。



「凄いな……魔法って……」



 アグネスが思わず呟く。


 やがて、ジュディスの身体から金色の輝きが消え、スージーがジュディスの身体の上に倒れ込む。



「お、おいっ!?」



 アグネスは慌ててスージーに駆け寄る。


 スージーは荒い息をしながら、そのまま意識を失う。



 アグネスは目の前に倒れている二人の女性を前に、首を傾げて思案するのだった。


 ◆


 湿地の中に倒れ込むグノーシアスを見たパーティメンバー達は、一目散にグノーシアスの元に駆け寄る。


 魔法使いが魔道障壁を何重にも展開する。



 其処にユーリが銃弾を浴びせる。



 パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ


 ガシャッ、ガシャッ、ガシャンッ!!


 ガシャッ、ガシャッ、ガシャンッ!!



 展開した魔道障壁が次々と破壊されていく。



『この早さで壊されたら、障壁が追いつかないっ!! グノーシアスの身体を下げろっ!!』



 魔法使いの悲痛な叫びに、僧侶の男と剣士の男が倒れているグノーシアスの身体を掴む。



『しっかりしろっ!! ここは撤退するぞっ!!』



 剣士の男がグノーシアスに声を掛けるが、グノーシアスの反応は鈍い。



 その間にも、魔道障壁が破壊される音だけが不気味に響いている。



『早くしろっ!!』



 その時、彼らは今までに聞いたことの無い音を耳にした。



 バシュッ



『なっ!?』



 グノーシアスの元に集まっていたが故の隙。



 その隙をコリンが見逃す訳が無かった。



 彼らの正面からユーリが牽制射撃を行っている間に、コリンが彼らの横手に回り込む。


 そして其処からグレネードを打ち込んだのだ。



 彼らが意識できたのは、白い閃光と、自分たちが吹き飛ばされているという現実だった。


 ◆


 ユーリの前方に、突如として爆炎と爆音が響く。



 灰色とも茶色ともつかない煙が激しく立ち上り、やがて静寂のみが訪れる。


 ユーリはプローンの姿勢のまま、油断なく前方を監視する。



 やがて、煙がはれ、見通しが利くようになってくる。


 其処には数人の男達が、横たわっている光景が見えてきた。



 ユーリの距離からでは、彼らが生きているのかどうか判断がつかない。



「……」



 ユーリはゆっくりと中腰の姿勢になると、銃を構えたまま彼らの元の近づいて行くのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。