第42話 跳弾
ユーリ達の元へグノーシアス達のパーティが追撃していた時だった。
突然、泉の反対側から突風が吹き始めた。
突風は渦を巻くように湿地の水や草を巻き上げ、上空に巻き上っていく。
上空には真っ黒な雲が湧き上がり、雲の中では雷光がいくつも光り始めていた。
「ジュディスかっ!? あいつ、高位階魔法を発動しやがったなっ!!」
グノーシアスの言葉に、メンバーたちの動きが止まる。
「おい、避難するぞっ!! 巻き込まれたらたまらん」
グノーシアス達は、そこで泉から離れるように方向転換する。
「ジュディスの奴……そんな魔法まで使うほど追い詰められているのかっ!?」
グノーシアスは避難しながらそんな事を考える。
「ジュディスがブチ切れるなんて……何をしやがったんだ、あいつらっ!?」
そして後方から激しい閃光と轟音が地響きと共に襲い掛かってきた。
ドガーンッ、バリバリバチッ!!
ドガガーンッ、バリバリバチッ、バリバリッ!!
上空から舞い上がった水や土砂が降り注いでくる。
「くそっ、前が見えんっ!!」
グノーシアスが頭を守りながら叫ぶ。
「これで振り出しに戻っちまうっ!!」
そう言いながら降り注ぐ水と土砂に耐えるのだった。
◆
「めっちゃくちゃですよっ!! 何ですか、アレ!?」
ユーリ達も降り注ぐ水と土砂に耐えながら、グノーシアス達の様子を伺う。
「ユーリ、今のうちに作戦を説明する」
「あ、はい」
「プローンの姿勢で最初は上半身を狙え」
「え? でも防がれちゃいますよ?」
「良いんだ。派手に撃ち込んでやれ。わたしが合図したら、奴の足元を狙え。当てる必要はない……いいか、足元……出来れば手前を狙うんだぞ」
「は、はい。わかりました」
「よし、そろそろ視界がはれる……やるぞ」
「イエス、マム」
ユーリは返事をすると、グノーシアスが見える位置に俯せになり、低い姿勢でM4を構えるのだった。
◆
風が止み、上空の雲が消えると、周囲の視界が戻って来る。
「うぬっ?」
グノーシアスの前方に、ユーリが伏せてこちらに銃を向けている事に気付く。
「あの小娘……逃げたのではなかったのかっ!?」
グノーシアスが大剣を構えなおす。
「ふん。何度その魔法杖で狙おうと、俺には当たらんっ!!」
そう言って一歩踏み出す。
ビシャッ
「んっ?」
その時、先程の魔法攻撃で溢れた泉の水が、大きな水たまりとなっている事に気付く。
「派手な魔法の所為か……水が溢れたか……」
グノーシアスが一瞬躊躇していると、ユーリからの銃撃が始まった。
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ!!
グノーシアスが大剣を盾のように構える。
ガキンッ、ガンッ、ガキンッ、ガンッ!!
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、
ガキンッ、ガンッ、ガキンッ、ガンッ!!
「そんな物は効かんわっ!!」
グノーシアスは咆哮を上げた。
その瞬間、グノーシアスの視線が、ユーリの銃口の先が下がるのを捉える。
「(ふん……あの角度で撃っても、儂には当たらんっ!!)」
グノーシアスはそう判断すると、水たまりの中を進んで行く。
「(今度は逃れられない距離で、スラッシュをお見舞いしてやるわっ!!)」
◆
グノーシアスは大剣を盾のように使用しなかった。
その代わりに上段に振り上げようとしている。
「今だっ、足元を打て!! 手前だぞっ!!」
「イエス、マム」
ユーリは銃口をほんのわずか下げて、グノーシアスの足元を狙う。
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ!!
銃弾はグノーシアスの手前に着弾した……そして撥ねた。
「な、なにっ!?」
撥ねた銃弾が、グノーシアスの脛に命中する。
「ぐあああっ!!」
グノーシアスが体勢を崩す。
「今だ、フルオートで構わんっ!! 撃ち込めっ!!」
そう言ってコリンも援護射撃を始める。
ユーリも、残弾の全てを倒れたグノーシアスに撃ち込む。
グノーシアスは大剣で弾丸を防ぐが、全てを防ぐ事が出来ない。
腕や肩、そして足にと銃弾が襲い掛かる。
「グノーシアスッ!!」
仲間がグノーシアスの名前を呼ぶが、グノーシアスは声を上げられない。
そして射撃が中断する。
ユーリはすぐさま空になったマガジンを外すと、胸のポーチからフル装填されたマガジンを取り出して銃に装填する。
勿論空になったマガジンをポーチに仕舞う事を忘れない。
この世界では、マガジン一つも貴重品なのだ。
「……あのでかい男の動きが止まったな……移動するぞ」
「あ、はいっ!!」
コリンとユーリは戦果を確認する前に移動を開始するのだった。
◆
森の中。
背の高い大木の根元に、ヴァスケスとアグネスが身を隠していた。
「あー、酷い目にあった……何なんですかね、あの魔法っていうのっ!?」
アグネスがヴァスケスに八つ当たりをするように話しかける。
「知らねえよ。しかし、良く気付いたな……もう少し遅かったらお陀仏だったぜ」
そう言ってヴァスケスはアグネスの頭を叩く。
「二回目ですからね……まあ、たまたま地面を見たら、あの時と同じような光が地面を這っていたんで……思い出すだけでも鳥肌モノですよ」
「あれな……オレも見た……で、だ」
ヴァスケスの目つきが剣呑になる。
「このままやられっぱなし……っていうのも気に食わねえ……」
「ヴァスケス先輩……悪い顔してますよ?」
「うるせ。お前だってやり返したいだろ?」
「……へへっ」
アグネスも悪い笑みを浮かべる。
「おまえ、その顔をユーリには見せるなよ……」
「分かってますって」
ヴァスケスはアグネスの耳元に顔を寄せる。
「オレが先行して、魔法使い以外を何とかしてくる……お前は、この辺りから魔法使いを狙撃しろ」
ヴァスケスの言葉を聞いたアグネスの顔から表情が抜ける。
「各個撃破に拘り過ぎてこのざまだ……遠慮はいらねえ。オレが責任を持つ」
「……」
「お前は、かっちり仕留めろ……良いな」
「イエス、マム」
そう言って二人は拳をぶつけ合う。
「「ペイバックッ!!」」




