第40話 射線
「ジニーっ!!」
ジュディスはジニーの悲鳴を聞いて、思わず立ち上がろうとする。
それをグノーシアスの太い手が強引に押さえつける。
「やめろっ!! アレは罠だっ!! 俺達をおびき出そうとしているんだっ!!」
「でもっ!! ジニーがっ!!」
ジュディスの視線の先で、ジニーが地面に倒れ込んでいる。
「ジニーを助けに行くわっ!!」
ジュディスはグノーシアスの手を払いのけると、後方のメンバー達に声を掛ける。
「みんな。用意はいい!?」
「「「おうっ!!」」」
そしてジュディスはグノーシアスに話し掛ける。
「あたし達はジニーの救出に向かう。アンタ達はその間にあいつ等を探し出してっ!!」
「ふん。言われなくても……おい、収納袋を持ってこい」
グノーシアスは仲間に声を掛けると、剣士の男が使い古された革製の袋を持ってくる。
「これはどうあっても、近接戦に持ち込まなくてはな」
そう言って革製の袋の中に手を突っ込む。
すると、袋の大きさよりはるかに大きな大剣が姿を現した。
頑丈を優先に作られたとしか言いようのない、武骨で巨大な大剣。
斬ると言うより、叩き潰すため……と言った感じの大剣を、グノーシアスは軽々と振り回して見せる。
そしてその大剣を地面に突き刺す。
「みんな聞けっ!! 俺達のパーティは隠れて高みの見物をしている奴らを炙り出すっ!!」
「礫の魔道杖か何か知らんが、そんなものは全て俺が打ち払ってやるっ!! 者ども、俺に続けっ!!」
「「「「おおおっ!!」」」」
グノーシアスの咆哮が泉に響く。
「何処に隠れているか分からん。気を抜かずに付いてこいっ!!」
グノーシアスはそう叫ぶと、見えない敵に向かって一気に走り出すのだった。
◆
迂回して側面からの攻撃のタイミングを伺っていたコリンとユーリの元にも、銃声と悲鳴が聞こえてきた。
「ヴァスケス達が行動を起こしたな……我々も行動開始だ」
「はい。でも何をすれば……」
ユーリが不安そうにコリンに尋ねる。
「ヴァスケス達が挟撃されるのを防ぐ……こっちに向かってくる奴の足止めを優先する」
「イエス、マム」
コリンはユーリの頭を軽く叩く。
「訓練通りにやれ……わたしも支援する」
「イエス、マム」
その時、前方から野太い男の咆哮が聞こえてきた。
「……迎えに行く手間が省けたな……向こうから近づいてくる」
コリンはそう言って嗤う。
「ユーリ。まずは一当てして来い。どの位の実力か……見せてもらう」
「……イエス、マム」
ユーリはM4のグリップを握り直すと、咆哮の聞こえてきた方向に向かってゆっくり進み始めるのだった。
◆
ユーリが中腰で草むらから前方の様子を伺うと、身長二メートルを超えるグノーシアスが大剣を振り回している姿が見えた。
「(ひえっ……ちょっと、怖いんですけどっ!!)」
ユーリが息をのんだ瞬間、グノーシアスと目が合ってしまう。
「其処かっ!!」
グノーシアスはすぐさま剣を構えると、一気にユーリに向かって駆けだしてくる。
「ひいっ!!」
ユーリは思わず引き金を引く。
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ
乾いた破裂音が響く。
しかし、慌てていたのと、ろくに狙いも付けていなかったため、一発も当たらない。
「落ち着いて狙えっ!!」
背後からコリンの指示が飛ぶ。
「イ、イエス、マム」
ユーリは狙いを定める。
すると、グノーシアスは距離が数十メートルもあると言うのに、その場で大剣を思い切り振り下ろす。
「どっしゃああああ!!」
大剣が地面に接触すると、衝撃波が地面を引き裂きながらユーリに向かって行く。
「ひえええええっ!!」
思わずユーリは横っ飛びして草むらに逃げ戻る。
すると、今までユーリがいた場所の地面が引き裂かれ、後方の森の樹々をまでも引き裂いた。
「……何だ……あれも魔法なのか?」
コリンは冷静に事態を分析する。
「は、班長……あんなの無理ですぅ……」
「泣き言言うなっ!! 今度はちゃんと狙え」
「はうっ」
ユーリは渋々草むらからグノーシアスを狙う。
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ
弾が命中すると思った瞬間、グノーシアスは持っていた大剣を盾のように持って身構えた。
ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ
大剣の腹の部分に当たった弾が、次々と弾かれる。
「確かに、威力はあるが……大剣で防げない訳では無いなっ!!」
グノーシアスは右手を振りながら独り言ちる。
どうやら大剣に角度を持たせて受け止める事で、弾を逸らせているようだ。
「……あんなの、人間じゃねえっ!!」
思わずユーリが叫ぶ。
「ユーリ、落ち着け。もう一度やってみろ」
「イエス、マム」
ユーリは再び射撃を行う。
パンッ、パンッ、パンッ
ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ
やはりグノーシアスの大剣に阻まれる。
「駄目ですっ!!」
「今度は、狙いを外して撃ってみろっ!!」
「ええっ?」
「良いからやれっ!!」
「イエス、マムッ!!」
ユーリはわざと狙いを外して射撃する。
パンッ、パンッ、パンッ
すると、グノーシアスは反応せずに、こちらの様子を伺っている。
「……受け止めませんでした……」
「……ひょっとすると……奴はお前の射線を読んでいるのかもしれん……」
コリンはそう言って唇を噛むのだった。




