閑話 安全装置のない爆弾
深い森の中から、高機動偵察車両が一両、草原に飛び出してきた。
「……抜けたっ……森を抜けたぞっ!!」
運転席にいたジェシカは、何度も目を擦り確認する。
今、彼女の前には広大な草原地帯が広がっていた。
「しっかし……見渡す限りの草原じゃん……」
「確かに……せっかく森を抜けたのに……『一難去ってまた一難』ってやつですね」
助手席でフロムが頭の後ろで腕を組みながら呟く。
「なんだよそれ?」
ジェシカが尋ねると、フロムは苦笑しながら答える。
「ユーリですよ。ユーリの国の『ことわざ』らしいです」
「……あいつは本当に変な物や変な事を会社に持ち込むよな……」
「今までにいないタイプですよね」
ジェシカも苦笑しながら話を続ける。
「いつの間にか双子も手懐けてるし……あんなおっかない奴らをガキ扱いしてるし」
「実際、ガキじゃないですか……まだ未成年でしょ?」
「ああ、フロムは知らないのか……だからだよ……あいつらが元少年兵だって知ってるか?」
「……まあ、何となく……実戦の時の雰囲気はベテランみたいですもんね」
するとジェシカが急に真顔になる。
「……違えよ……『ベテランみたい』じゃねえ……『ベテラン』なんだよ」
「えっ?」
「あいつら五歳の時から銃を握ってる……最近はまともになってきたが……最初は酷かった……」
そう言ってジェシカは身体を震わせる。
「……」
「あいつら……心がぶっ壊れているんだ……安全装置の無い爆弾みたいな感じか……」
「それは……怖いっすね」
するとジェシカがフロムをじっと見つめる。
「本当に怖いのは、そんな爆弾を平気で手懐けてる……ユーリなんだよ」
「……」
車内に嫌な沈黙の時間が流れる。
其処でトランシーバーの着信が入る。
『ジェシカ……問題でもあったか?』
『ヒルダ副隊長……いえ、問題はありません。無事、森を抜けました。オーバー』
『そうか……それは朗報だ。もう一台の高機動偵察車をやる。ジェシカ達はそのまま、その場で待機……可能な限り現場の情報収集を行え』
『イエス、マム』
『ジェシカ、良くやった』
ヒルダとの短い通話が終わる。
「よし、もう少し移動して、周囲の索敵を行うぞ」
「はい」
ジェシカは前方に視線を移すと、そのまま高機動偵察車を発進させるのだった。




