第28話 戦闘終結
ユーリは女性を抱きかかえたまま、右手にM9を握っている。
「ユーリっ!!」
コリンがユーリの名前を呼ぶ。
「コリン班長、無事ですか?」
「わたしは無事だ……それは誰だ? いや、それは後回しだ、こっちに来い。こいつらを拘束する」
コリンはそう言いながらも、視線と銃口をクリスとアデレードから外さない。
「ユーリ、こいつらに降伏するように伝えろ」
「イエス、マム」
ユーリはその場にエレナの身体を横たわらせる。
『戦闘は此処までです……降伏してください』
ユーリの言葉に、クリスとアデレードの顔が苦渋に歪むのだった。
◆
「おいおい、これはどんな状況なんだ?」
其処にヴァスケスとソフィアが姿を現した。
「ヴァスケス先輩っ!?」
『ソフィアッ』
『クリスッ、アデレードッ!! グレンが……グレンがっ!!』
「お、おい、勝手に動くなっ!!」
ソフィアがクリスとアデレードの元に走り出そうとするが、すぐにその腕が掴まれる。
『離してっ!! あたし達の負けです……だから離して……』
ソフィアが叫ぶが、ヴァスケスはその手を離さない。
「ユーリ、状況を説明しろっ!」
「は、はい。まずはこっちに来てください」
ユーリは銃を構えたまま、コリンに話し掛ける。
『もう一度言います。降伏してください……この場で命を奪うような真似はしません』
ユーリの言葉にクリスとアデレードが顔を見合わせる。
クリスは考える。
『(ダロスとエレナは生死不明だし、グレンも動けないようね……ソフィアは敵に捕まっていて、あたしは魔力切れ……)』
そしてアデレードを見る。
『(アデレード一人でこの状況をひっくり返せるとは思えない……悔しいけど……)』
視線を動かすと、エレナを連れてきたユーリと視線が交差する。
『……わかったわ……降伏する。だから、仲間の治療をさせて……』
クリスの言葉にユーリが頷く。
「コリン班長。降伏するそうです。負傷者の治療をさせて欲しいと言っています」
コリンはユーリの報告を聞き、小さくため息を吐く。
「治療を許可する……但し不穏な行動を行った場合は、全員の命が無いものと思え」
「イエス、マム」
そしてユーリがその事を伝えると、ソフィアが大声を上げる。
「まだ治癒魔法が使えますっ!! わたしをダロスとエレナの元へ行かせてくださいっ!!」
困惑しているヴァスケスにユーリが話しかける。
「その人、治癒魔法が使えるらしくて、負傷者の治療をしたいそうです」
「……わかった……ちょっと待て」
そう言ってヴァスケスは腰に下げたナイフケースからナイフを取り出す。
そしてソフィアを拘束していた結束バンドを切断する。
「行ってやれよ……」
ヴァスケスがそう言ってソフィアの背中を叩く。
ソフィアは大急ぎでダロスとエレナの元に駆け寄る。
「ユーリ、こっちへ来い。降伏の条件に付いて話す。通訳しろ」
「イエス、マム」
「そしてヴァスケス。この方向にアグネスがいる。連れて来てくれ……負傷している」
「ちっ、わかった……歩けるのか?」
コリンは黙って首を振る。
「……イエス、マム」
ヴァスケスはそう答えると、コリンの指し示した方向へ歩いていく。
「さーて、聞きたい事が山ほどできた……質問に答えてもらうぞ」
コリンはそう言って、目を細めるのだった。
◆
「何故、我々を狙う? 我々がどれだけ危険か、分からせた筈だが?」
『……ギルドに手配書が出ているからな……今のお前たちは、討伐命令が出ている魔物と同じだ……』
クリスは悪びれた風も無く答える。
「手配書を出したのは此処の領主か?」
『ああ。此処の領主とギルドマスターは幼馴染だからな。手配書を出す事を断り切れなかったんだろう?』
コリンはその答えを聞いて大きく息を吐く。
「当たり前の質問だが……お前たちは我々に勝てると思ったから来たんだよな?」
するとクリスは苦笑しながら答える。
『勝てるかどうか分からなかったさ……しかし、あたし達はAクラス冒険者パーティなんだ……相手が強いって聞けば、戦いたくなるだろう?』
「死ぬかもしれないのに?」
『……生きてるじゃないか、現にこうして』
「生かされているくせに、大きな口を利く」
『だったら殺せばいい……Aクラスパーティを殲滅したとなれば、相当箔がつくぞ?』
クリスが挑戦的な笑みを浮かべる。
「ちっ……お前たちは戦闘狂か?」
『否定はしないわ……』
「いずれにしろ、お前たちを帰すと碌な事にならない未来が見える……」
そう言ってホルスターからM9を取り出す。
「正直言って、捕虜は獲りたくも無いし、捕虜になるのも嫌なんだよ」
コリンが剣呑な表情を浮かべる。
「コリン班長……」
ユーリが通訳を止めて、コリンに話し掛ける。
「まずは敵の戦力を聞き出しませんか? どの位の人数が来るか……概算でもいいので」
ユーリの言葉にコリンの表情が少しだけ緩む。
「そうだな……少し喋り過ぎた……」
そう言ってコリンはM9をクリスの眉間に向ける。
「我々を討伐するために、何人くらい集めるつもりだ?」
『喋るとでも?』
その答えを聞くとコリンは急に立ち上がる。
そして傍らに寝かされているダロスに近づく。
「最初からこうして見せればよかったんだ」
「コリン班長?」
コリンはダロスの顔に照準を合わせる。
『や、やめろっ!!』
クリスの顔から余裕の色が消え、大声で叫ぶ。
バンッ
『ひいっ!!』
銃弾はダロスの顔のすぐ横に着弾していた。
「勘違いしているようだからな……お前たちの命を握っているのはわたしだ……調子に乗るなよ」
そう言って顎でユーリに通訳を命じる。
ユーリがクリスにその言葉を伝えると、クリスは悔しそうに俯くのだった。




